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世界最強の航空機動部隊  作者: 橘花
昭和 7
74/90

それぞれの思惑

-紀伊-


「各艦隊の出港用意が整いました。」


連合艦隊旗艦の紀伊に、報告が届いた。


「分かった。出港を命じたまえ。」


山本はそれを聞き、出港を命じる。敵に残された、最後の艦隊を撃滅する。それが、最後の仕事だった。




‐ウラル要塞-


「ジダーノフ同志、ハワイに潜入させているコミンテルンより日本艦隊出撃の知らせが入りました。」


「輸送船の有無は?」


ジダーノフはそれを聞くなり、直ぐに聞き返す。


「いえ、戦闘艦のみ。輸送船は伴っていないそうです。」


「なら、良い。放っておけ。今は、東に兵力を気付かれずに送ることだけを優先しろ。」


「了解しました。」


そう言い、報告に来た兵は帰っていった。


「戦局は動いていくか。次にこの世界を支配できるのは、米帝か我々共産主義か。いずれにせよ、この戦争が決める。我々は、遅れを取るわけにはいかないのだ。」




‐ベルヒテスガーデン-


「総統閣下、イギリスは降伏交渉を行いたいと言って来ております。」


外務大臣、リッベントロップが報告に来る。


「そうか。イギリスは、落ちたか。」


「はい。しかし、チャーチルなどの政府要人はカナダへ逃亡した模様です。」


「そうか。ゲッベルスを呼べ。」


呼ばれたゲッベルスは、急いで山荘のベランダに行った。


「総統閣下、如何為さいました?」


「イギリスの降伏交渉、世界中に放送しろ。世界に冠たる、大英帝国終焉を飾ってな。宣伝手法等は君に任せる。」


「わ、分かりました。では、早速用意を。」


そう言って、ゲッベルスは走って出て行く。


「総統、宜しいのですか?。あまり、彼らの神経を高ぶらせるような真似を。統治に、支障が出るのではありませんか?」


リッベントロップが、ヒトラーに向かって言う。


「私は、急いでいるのだ。天才的な野蛮人、スターリンは死んだ。これで次の世界を支配する、共産主義とナチスの戦いは決したも当然。次の敵は、アメリカなのだ。」


(総統は何も分かっていない。敵はアメリカではなく、世界ですよ。)


リッベントロップはそう思いながら、ベランダを後にする。



‐アメリカ合衆国議会議事堂-


「ウォレス副大統領、貴方は日本と戦い続けることをお望みですか?。」


ホワイトが、ヘンリー・ウォレス副大統領に聞く。


「日本と戦い続けることが、必要とあれば続けます。大統領は望んでいませんが。」


「大統領は、あまりの犠牲に参ったんでしょう。それに、スターリンは死に、チャーチルはカナダに亡命してイギリスは陥落。もう、日本に構っている状況ではないんでしょうね。」


「必要とあれば戦うと言った筈だ。」


ウォレスはホワイトの方を見て言う。


「国民は、まだ忘れていませんよ。2年前のパールハーバーを。リメンバー・パールハーバーと叫んで、対日戦を戦っている。」


「だが、五大湖が爆撃されて自動車産業だけでなく、戦車などの軍車両の生産ラインまで甚大なダメージを負っている。その上、本土決戦まで持ち込むこともまた、危険だな。」


「そう言うと思いました。」



明日の朝刊に、『ヘンリー・A・ウォレス副大統領病死』と、一面を大々的に飾ることとなった。



‐関東軍総司令部-


「満州国境線に、ここの所ソ連軍が集結しておるそうじゃないか。」


関東軍参謀として復帰している石原は、地図に記されている満州とソ連国境線を見る。


「現在のところ、敵は動いておりません。戦車などの地上車両は巧妙に擬装されております。」


「臭うな。写真はあるか?」


「これです。」


ソ連国境線をギリギリに飛行して撮影された写真を机の上に並べる。


「どうみても、主力戦車だな。T34だけじゃない。スターリン2、T44まで配備している。こいつは警戒部隊じゃない、侵攻部隊だ。」


「警戒に来た戦闘機も、La5にyak9、どれも一線級の戦闘機だ。って事は、爆撃機も一線級が配備されていると考えないといかんな。」


「ええ。」


「至急、内地の参謀本部に報告しろ。それと同時に、増援部隊も送るように伝えろ。」


「了解しました。」



(畜生、もうじき油田にぶち当たるって時に、邪魔が入るか。)


石原は満州に着任しだい、軍務と平行してハルビン油田の採掘に乗り出した。そして、もう直ぐ油田に当たる所まで来ていた。




‐軍令部-


「ハワイから、艦隊が出撃しました。」


「いよいよだな。米海軍、最後の戦闘艦隊が。」


永野軍令部総長は椅子に腰掛けて言う。


「作戦は計画通りに進んでおります。敵も直に我々の出撃を探知して迎撃艦隊を出すでしょう。」


「ここで負けたら、今後一切の作戦行動が取れなくなる。山本にも、そこら辺は厳命しておけ。」


「了解しました。」


(国の命運を、ただ一人の男に任せることになるとは。だが、それでも仕方が無いのか。現場が動かなければならないのだから。)


永野は作戦の成功だけを、今は願っていた。

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