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世界最強の航空機動部隊  作者: 橘花
昭和 7
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未来は暗雲在りし

-皇居-


総理を辞任したが、陸軍大臣の立場で未だに内閣に所属する東条英機は皇居の謁見の間から出る。


「大臣、お伝えしたい事が御座います。」


一礼した東條の元に、木戸幸一内大臣が来る。



‐宮廷 事務室-


皇居の一角で、宮廷に務める者たちの集まりの場に東條と木戸の二人は立っている。


「陸軍で、講和の本格的な動きはありませんか?」


木戸は、窓の外を見る東條に言う。


「講和ですか。海軍にはその様な話も出ていると聞きますし、陸軍の極一部の者も唱えていると聞きます。」


「では、それへ向かって大臣自ら率先して行って欲しいのです。」


木戸はお願いする様に東條に言う。


「その様なことを、私が率先して行える筈がありません。皇国未来永劫の繁栄を願って散って行った英霊に申し訳が立たないと言う事もありますが、何よりも陛下の身を案じるこの私が、その様な危険極まりない道を歩むことをできないのです。」


東條は時計を見る。


「木戸さん、今日が恐らく我が皇国にとって最も歴史に残ってはならない一大行事が執り行われます。」



今日は10月21日。1943年10月21日は、日本人。それも特に学生にとって忘れてはならない日となる。



‐明治神宮 外苑競技場-


降りしきる雨の中、全国出陣学徒代表が明治神宮外苑競技場を行進する。陸軍分列行進曲が軍楽隊によって流される中、東條は首相の小磯国昭が立つ台上の横に立っている。


(現状で、講和が成す事が出来るならば、そもそもこの戦争自体ありえなかった。)


東條は、行進する学徒生達を見ながら思う。


(条件付き講和。そんなもの、陸軍は納得する筈がない。完全に屈服させる事が、陸軍が認める唯一の終結手段。)


元々、軍部の暴走、国内世論の沸騰から後押しされてこの大戦に突入した日本。戦争一色に染まり掛けた国に、繁栄など来ない。それは、東條も理解していた。


(だが、そんな物の為に、学業半ばの学生達を戦争に投じる必要があったのだろうか?。私は、この身に変えててでも反対すべきだったのだろうか?。だが、ここで反対をすれば、不満に思う軍閥はその不満の対象を国内に向け、国内は内乱状態に陥る。)


整列した学徒生達。訓示を述べる小磯。それに答えた学徒生。


(そんな事は陛下も望まない。陛下の身を守る事が、私に課せられた最後の使命なのだ。)



(この壮行会があると言う事は、我々に早く戦争を終結させろと言うのだな。)


観客席から見ている林原は、そう受け取った。


(ソ連の行動が不可解を増し、欧州情勢も複雑。予想よりも戦争は、長引きそうだ。)


中国問題を解決した日本に、突如現れたソ連の不可解な行動。満州国境線に軍を小規模ながら展開していると言う情報が入ってきた。


(史実は最早、意味無しか。)


彼らの史実とは、大きく異なった世界が広がっていることは、既に誰の目からでも明らかだった。


(未来は、全く予測できない状況下って訳か。さっさと、対米戦終わらせないと不味い状況になってしまうな。)


そう思って、林原は観客席を後にする。



‐ソ連 ウラル要塞-


「ジダーノフ同志、満州国境線に部隊展開を完了しました。極東戦線司令部では、何時でも侵攻準備はは整っている模様です。」


「分かった。だが、日本はまだアメリカ本土に上陸を行っていない。彼らが上陸後に、直ちに侵攻を開始する。それまでに、足場固めを充実させろ。」


ジダーノフは、軍の最高司令官であるマレンコフ総書記を無視して、極東に極秘裏で部隊を輸送していた。ウラル工業地帯で生産された戦車は、鉄道によって極東に運ばれている。一部は誤魔化す為にモスクワ反攻部隊に配備している。


「揚陸部隊の整備も進めろ。日本北部の諸島占領も行うからな。」


ジダーノフは更に極東兵力増強を命じた。



‐ドイツ ランプハイム空軍基地-


「あれが、新型航空機群か。」


新型機を披露する為、空軍省がヒトラーの視察を要請し、ヒトラーもそれに答えて訪れた。


「はい。我が空軍が総力を挙げて研究した航空機の試作機です。」


空軍大臣のゲーリングはヒトラーに順に説明していく。


「既に総統がご存知のMe262を大幅に改造しました。主に航続距離の長大化に重点を置き、2000kmを越す航続距離を持たせる事に成功しました。」


従来の2倍の航続距離をMe262が持っている。更に、同程度の航続距離を持たせたAr234など、強力な航空機群がそこに並んでいる。


「素晴らしいではないか、ゲーリング君。量産体制はどうなっておる?」


「は、既に各工場に量産命令を出しております。それと、航続距離の問題で泣かされたBf109も、大幅に性能改善を行って既に前線部隊に配備が進められております。」


「では、今や世界の大空を支配するに足る戦力を我が空軍は保有したのだな?」


「はい。現状では、如何なる国も寄せ付けない強力な空軍力を保有するに至りました。また、閣下の育て上げた陸軍でも、近年装備が始まった新型戦車2台が既に前線に配備されているご様子。陸空と最強の名を欲しいままに手に入れております。」


2種類の新型戦車も、既に量産が進められており、イギリス軍をはじめとする連合軍を苦しめていた。


「うむ。海軍も近代化を急いでおる。ビスマルク級を見直して再設計した改ビスマルク級の建造も急ピッチで行っておる。空母艦隊創設も急いでおる。」


海軍の方にも、戦艦や空母などの水上艦艇を増産する計画を実行しており、強力な水中戦力にプラスして強力な水上艦隊も持とうとしていた。


「来年には改ビスマルク級一番艦が就役する。グラーフ・ツェッペリンも既に艤装を済ませて訓練に勤しんでいる。空母艦隊創設の時は近い。」


ヒトラーは、海の向こう。遥かアメリカを見ながら


「アメリカまで勢力を拡大し、そして最終的には世界中を戦争の渦に巻き込んでやるのだ。」


と言った。

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