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世界最強の航空機動部隊  作者: 橘花
昭和 7
70/90

それぞれの決定

-ハワイ 海軍鎮守府-


太平洋艦隊司令部であった場所は、今では日の丸が翻っており、海軍鎮守府が置かれている。この場所で、今後の対米戦暫定作戦会議が開かれていた。


「まずは、軍令部から参りました神重徳です。今回の作戦会議で決まったことを軍令部に報告、最終的な計画を練る予定です。」


飛行艇で来た、軍令部代表の神が挨拶をする。


「はい。では、率直に言いますと。我々は現在ハワイを手中に収めました。なので、太平洋ハワイ以西には基本的に敵はおりません。まあ、潜水艦とか、無謀な突破を行った艦が居るかもしれませんけど。」


「それはありません。各島に水上機若しくは飛行場に航空機を配備しており、連日の哨戒が行われておりますので。潜水艦も、ここから西側に侵入できる筈が無いです。」


「例の対潜哨戒機ですか。それに、非常に耳の良い駆逐艦も救援海軍が持っているので、潜水艦の侵入並びに攻撃はまず出来ないでしょう。」


救援海軍の対潜技術は非常に優れていた。ヘリとの連携で敵を索敵し、発見しだい直ぐに攻撃できる体制が整っている。


「議題が少しずれ始めたぞ。」


会議を取り仕切っている山本は、議題が少しずれ始めたので仕切り直しをかける。


「すみません。では、話を戻します。主に、これからの戦場はここからアメリカ西海岸までが戦場になるでしょう。また、この海域は我々にとって未知の海域と言っても過言ではない。この海域での演習は、経験が無いからだ。」


「敵の正確な位置も分からない。連中の庭だからな、ここから東は。」


アメリカ海軍にとって、ハワイ以東は自分達の庭当然であった。ハワイとサンディエゴの往復に必ず航行しなければならないし、自分達の内海も当然である。


「捕虜と、情報部の情報を掛け合わせて考えるに、サンディエゴには相当数の戦力が集結しつつあり、また同泊地には艤装中の空母が最低4隻停泊していることも確認できております。」


サンディエゴに集結し始めた数少ない歴戦空母と最新鋭のエセックス級やインディペンデンス級など、主力空母と数少ない戦艦をはじめとする空母護衛艦隊。それらがほぼ全てサンディエゴに集結している。


「敵は、総力を太平洋に投入している。どんどん、パナマ運河を渡って艦艇が来ている。」


そう言って、パナマ運河をマークする。


「陸軍の方は、米本土の工業地帯を爆撃すると言っている。だから、まずは本土爆撃を陸軍に譲り、我々海軍はパナマ運河を叩くべきだと私は考えます。」


「陸軍に手柄を譲るのは遺憾だが、これ以上戦力が太平洋に現れるのはもっと遺憾だな。」


海軍の方は、まずはパナマ運河破壊を最初の目標に挙げた。



‐東郷-


「全員、集まったな。」


東郷の作戦会議室には、各艦隊司令官と重要艦の艦長が集まった。


「我々は、基本的にはこちらの命令で行動をしているが、忘れてはならないのは指揮系統だ。我々は、あくまでも平成の日本政府の意思を持ってここに居る。我々は、この時代に侵略しに来たのではなく、あくまでも大東亜共栄圏。そして、この大戦の犠牲を出来る限り減らすことが目的である。そこを間違えぬようにな。」


各員が頷く。影鎖はそれを見て、話を続ける。


「犠牲を減らす上で重要なのが、核だ。」


影鎖はそう言い、江田原を見る。江田原は影鎖に見られていると感じ、立ち上がって説明を始める。


「えー、核爆弾。ここでは、原爆と言ったほうがいいでしょう。この原爆は、アメリカのロスアラモスにある研究所で研究されています。マンハッタン計画と呼ばれているこの原爆開発は、後に広島と長崎に甚大な被害を被らせた原爆を完成させ、後の核の世界を作り上げました。」


そこで、ロスアラモス原爆研究所の写真を映し出す。


「ここの所長、ロバート・オッペンハイマー率いる研究チームが主導で開発を行っており、およそ20億ドルの予算を掛けて完成しました。そして、これだけの予算をつぎ込んだアメリカだけが、開発に成功しています。」


当時、未知の技術であった核兵器は莫大な開発費と広い施設を必要とした。それを兼ね備えたアメリカだけが核時代の先駆者となったのである。


「この完成を妨害することが出来れば、被害を抑えられると考えます。確かに戦後世界情勢を決定したのが核兵器であることは誰の目が見ても疑う余地がありませんが、核によって抑えられた世界は同時に、危険でもあるのです。」


疑心暗鬼に陥った核保有国の暴走が、核戦争への引き金に成りかねないのだ。それが、現代が最も恐れる事態であり、そして回避不可能な末路でもあった。


「核は、平和利用以外で使用してはならないんです。」


江田原はそう言い切ったが、同時に核を打つと言う事がどういう事なのかを知りたいという願望にも襲われた。結局、人類は核とは切っても切れない状況にまで来てしまっているのだ。


「いずれにせよ、ロスアラモス研究所を破壊したい。研究資料も含め、全てを灰に変える。」


影鎖は、そう会議を締めくくった。



‐アメリカ ホワイトハウス-


「さて、諸君。私は不愉快を通り越して呆れている。我々の領土であるハワイに、日本軍を進駐させたのだからな。」


キングとマーシャルを呼び寄せて、ルーズベルトは言った。


「先週からずっと、新聞は私を叩きまくっている。世論は対日講和。」


「大統領閣下、わが国は世論どおりに対日講和をすべきです。」


マーシャルは、そう大統領に言う。


「日本と講和するぐらいなら、ヒトラーと講和する。っと、言いたいが。現状そうもいかん。まだ、海軍は戦える戦力を残している。今講和をするべきではない。」


「お言葉ですが大統領。艦艇があるとは言え、兵達も講和を望んでいるのが現状です。奇跡的に生還したノースカロライナ艦長も、日本と講和すべきと言っており、他の艦の艦長共々、出撃を拒否する始末です。」


「君はどうしたいのだ?」


「戦えないなら、降伏か講和でしょう。大統領、もはや我々は日本と戦争をしている場合ではないのです。もはや、アジア再植民地化は不可能な状況になりました。日本と戦う理由がなくなったのです。」


キングもマーシャルも、もう日本と戦う必要が無い事を感じていた。彼らも遺憾だが、兵達も戦いを拒否したのだから自分達だけ戦いたくても無駄である。


「日本と講和でもして、全兵力をヨーロッパに注ぎ込むべきです。イギリスはドイツに上陸され、北部にて必死の防戦を行っているのが現状です。」


「チャーチルから、再三の要求が来ている。あるだけの兵を送れと。」


「なら、それに従うべきです。」


マーシャルもルーズベルトを説得する。


「最後に、海軍は日本と決戦を挑んで貰いたい。これが、対日戦最後の戦いになるだろう。」


「大統領、もうその必要はありません。直ぐに講和会議の打診を。」


「兵力がまだ健在ならば、チャーチルも流石に納得してくれんだろう。最後に決戦を行うよう、サンディエゴ基地に指示するんだ。」


ルーズベルトは、キングにそう伝えた。


「分かりました、大統領。これが、最後ですよ。」


そう言ってキングは部屋から出て行く。部屋は、異様な静けさを持ったのであった。

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