潜水空母を拿捕せよ 後編
完全復旧は無理だったが、何とか一部を復旧した。
-首相官邸-
「たった今、交渉決裂の電報を発信しました。作戦開始です。」
北里が報告する。総理は、椅子に座って目を瞑った。
「大臣、作戦完了の報告を待っている。」
「了解しました。」
「たった今、日本からの交渉決裂電報です。」
赫居世居西干の通信室には、日本政府からの交渉決裂の電報が届いた。
「交渉決裂とはな。最初から交渉する気など無いくせに。」
艦長はそう言い、マイクを掴む。
「航空機を直ちに収容。直ぐに海峡を出る。機関始動!!。」
「撃て!!。」
橋の上に待機している203mm砲計6門が一斉に火を噴いた。砲弾は測量された通り、東京湾に浮上している赫居世居西干に命中。船体を大きく揺らし、火災も起こさせる。
「全弾命中、敵艦は炎上しています。船殻にも破孔があり、潜行はできません。」
「分かった。・・・後は任せたぞ、空挺部隊とフロッグマン部隊。」
「飛行甲板、炎上中!。砲撃で開いた破孔から浸水も増大し、艦傾斜4°。」
艦内は混乱した。突然の砲撃を受け、潜行も不可能になったのだから当然だ。
「飛行甲板の航空機は生きているか?」
艦長は急いで生きている者に聞く。
「はい。直撃は免れましたので。しかし、収容の為に降りていたパイロットは砲撃を受けて死亡したようです。」
「構わん。カタパルトを遠隔操作しろ。艦、面舵12°。あの橋の、橋桁にカタパルトの先端を向けろ。」
「りょ、了解。」
艦長は既にどこから砲撃を受けたか分かっていた。だから、直ぐに反撃に移行した。
「カタパルトの油圧が足りません。航空機を飛び立たせる出力を得られません。」
「近づけ!!。近くで、打ち出して特攻させろ。」
艦が少ない推進力で航行する。まだ、空挺部隊到着まで少しの時間が掛かる。
「浸水、増大中。現在、艦傾斜10°。」
既に危険な傾斜だった。しかし、そこで浸水している区画は限界のため、それ以上の傾斜は起こらなかった。
「艦長、この傾斜角では、安全装置の関係で航空機を打ち出せません。」
「リミッターを解除しろ。何としても反撃するんだ。」
「戦車を放棄。トレーラーに乗って逃げるぞ。」
橋の上に居る陸軍も、急いで退避を始めた。
「打ち出せ!!。」
カタパルトを一気に打ち出した。飛び立てなくても構わなかった。要は、ぶつければいいのだから。
「打ち出した航空機が激突しました。橋桁が燃えています。」
橋桁が炎上しはじめる。それによって強度を失った橋は一部が崩落した。そして、それによってバランスが崩れた橋は、更に一部、そして更に一部と連鎖的に崩壊が始まる。
「橋の半分が崩落。支えを失った部分が崩落と同時に橋全体のバランスを崩したようです。」
戦車も東京湾に消える。赫居世居西干の飛行甲板にも橋の崩落した破片が乗っている。
「推進力ゼロ。航行不能です。」
重量に耐え切れず、推進器は空回りをしはじめる。
「至急、全乗員に武装させろ。白兵戦だ。」
艦長がそう言った時、空挺部隊を乗せた輸送機が到着した。更に海中にはフロッグマン部隊も展開し始める。
「おいおい、橋の半分以上が崩落してんじゃないかよ。」
輸送機からは橋の崩落した状況を見て取れた。
「さっさと任務を完了して、復興させたいよ。」
次々に降下部隊が輸送機から飛び降りる。ダイブ姿勢を維持しながら降下目標の選定に入った。
「浮上する。」
フロッグマン部隊も浮上し、ワイヤーガンを船の飛行甲板付近に打ち込んで、船体を昇る。
「部隊展開急げ。」
新羅軍は、待ち構えていた様に確認するなり発砲を開始する。
「こっちはサブマシンガンしか持っていないんだぞ。」
流石にバックの中にアサルトライフルを入れる事は出来なかった。それに、艦内での戦いはアサルトライフルよりもサブマシンガンの方が有利のため、フロッグマン部隊はサブマシンガンを選んだ。
「けど、やっぱアサルトライフルに比べたら火力負けするな。」
物陰に隠れながら、少しずつの反撃を行っているフロッグマン部隊の元に、空挺部隊が到着した。
「サブマシンガンの銃弾を残しておいてくれよ。艦内では、俺達よりもそっちの方が利点多いんだから。」
「分かってるよ。なら、さっさと連中を蹴散らしてくれ。」
物陰から小銃を構え、一斉射撃で蹴散らした。
「中に入るぞ。」
中では、案の定サブマシンガンの方が有利に戦えた。迷路のような艦内では、後ろから敵が現れることもある。しかし、サブマシンガンなら後ろの敵を狙うにも少しの取り回しで狙えた。
「投降しかあるまい。死にたい奴は連中に突撃しろ。死にたくない奴は一緒に投降するんだ。」
艦長はそう、生き残っている者達に言う。数人が投降を拒否して突撃。返り討ちにあった。投降したものは、生きて艦外に出ることが出来た。