降伏勧告!?
-首相官邸-
「か、会議中に失礼します!!。」
会議の最中に、別室で待たせている連絡官が大慌てで入ってきた。
「どうした?そんなに慌てて?」
「はい。外務省から緊急連絡が入りました。新羅軍が、我が国に降伏を勧告。並びに、東京湾に巨大な潜水艦が侵入した模様です。」
「何だと!?」
対潜哨戒機に殆ど任せていた対潜哨戒網を突破された。そして、堂々と東京湾に浮上された屈辱は計り知れない。
「その潜水艦が、降伏を勧告しました。既に軍使旗を掲げております。」
軍使の為、国際法上は攻撃する事が出来ない。別に軍使の言を受けなくてもいいのだが、それでも相手が攻撃せずに去った場合には攻撃することが出来ない。
「その潜水艦は、他に何と?」
「はい。降伏を受け入れぬ場合、航空攻撃を実施するそうです。」
「航空攻撃だと?。その潜水艦がか?」
「はい。そう通告しております。」
-赫居世居西干-
「朴艦長、飛行甲板展開終了。」
タイフーン級を大型化した様な船体に、船体上部が水平に展開した後に艦橋が右に移動する。そして、エレベーターで格納庫内のSU33が上昇して来て、カタパルトに1機が装着された。
「カタパルトで打ち出せる様に改造されたSu33だ。今回が実践初だが、訓練での好成績を収めている。成功するだろう。」
「はい。搭乗員は全員、オホーツク海にて訓練しておりました。皆、精鋭ばかりです。1基しかカタパルトが無いので同時発艦出来ないのが残念ですが、それでも高い金を払って建造しただけの性能はあります。敵を奇襲できるのに十分な性能が。」
「だろうな。それで、日本政府からの返信は?」
朴は副長に聞く。
「先ほど、保留の返信がありましたが、追加返信はありません。我々が来た事が予想外だったのでは?」
「なら、失格だな。戦争は予想など出来ない。我々が訓練していない弱練度だと思っていたから韓国は敗れたのだ。現に我々の精鋭機甲部隊と航空部隊が数日で韓国を占領したのだから。」
「朝鮮戦争を繰り返しましたね。T34の電撃戦で幕を開けた様に。」
「それを、金将軍も狙ったのだろう。」
-首相官邸-
「総理、どうしましょう?」
会議室は騒然としている。朴大佐の予測通り、ほぼ全員が今回の事態を全く予測していなかった。
「国防大臣、あんたん所の軍は何をやっていた?対潜警戒を怠っていただけなら未だしも、そこを突かれて敵を首都まで侵入させるとは。」
大臣の多くから、北里は非難を浴びる。
「それは申し訳ありません。まさか、ここまで大胆な手を打つとは予測できませんでした。」
「だが、これを機に降伏するというのはどうだ?そして、同時に中国にも降伏して今までのことを謝罪するというのは?」
外務大臣はとんでもない事を言い出す。
「外務大臣、アンタは外務大臣だろう!?。なら、中国の実態を理解している筈だ。もし、ここで降伏したならば、我々はチベット人ら同様に暴行を受ける。そして、平等の名の下に日本人の資産を全て持ち出される。そして、党管下の人間が伸し上がり、腐敗するぞ。それに、言論の自由など存在しなくなる。そして、今まで以上に操作された情報が国民に伝えられることになる。」
「それは言い過ぎです。」
「理解してないから言っているのだ!!。何のために総理はインドまで言って会議をしてきた?他の国は殆どが外務大臣が参加しているのに、我が国は首相を行かした訳が分かるか?あんた等外務省は敵に媚びを売る省だからだ。」
北里は外務大臣に強く言う。
「日本は、中国に負けない歴史と伝統がある。それを一瞬で壊す恐れがあるから、外務省に対中包囲網参加国との会議に行かせなかったのだ。」
-新羅政府-
「日本は返信を送らない様です。朴大佐は、攻撃命令を待っている時間です。」
人民武力部長の金斗益は、金正日に報告する。
「もう少し待て。何、日本は国際法を今の所守っている。まさか、今更軍使を攻撃などしないだろう。こちらが攻撃を下せば、もはや軍使では無い。攻撃はまだ待て。」
金正日は攻撃を制止する。
「しかし、総書記。いえ、将軍様。倭奴は返信しません。返信遅延を理由に攻撃することも出来ます。」
「待てと言っている。何、強行に出続けろ。彼らに、強行で出続ければ。いつかは得意の譲歩で頭を下げてくる。回答は、3時間後の14時まで待つのだ。」
「了解しました。」
金斗益は頭を下げ、人民武力部に戻った。
-日本軍総司令部-
「くそっ。予想外だった。」
北里は急いで総司令部に戻り、幕僚たちの待つ部屋に入った。
「大臣、我々も全く予測できませんでした。まさか、。」
「言うな。私も甘かった。新羅がここまでの策を使ってくるとは。案外、向こうも実は余裕が無いのではないか?。」
「確かに、精鋭部隊と思われる勧告侵攻軍は活発に動いておりましたが、他は攻撃部隊と見せかけて後方支援をしている部隊が多々ありましたので、全部が全部精鋭と言うわけでは無いようです。」
地図には、韓国に侵攻した部隊の動きが記録されている。それを見ても、前線で戦っているのは殆ど限られている。幕僚や北里の読みどおり、全部が全部精鋭と言うわけではない事は明白だった。
「では、精鋭だけ叩けば後は楽になりますね。」
「至急、精鋭部隊の結集している地域を割り出せ。そして、その部隊の動きを完璧に追跡しろ。富嶽で、そいつらを叩くからな。」
北里は幕僚たちに命じる。新羅を片付ける事を優先する。それは、日本に課せられた急務であった。
「残るは、この潜水艦をどうするかだな。」
「写真がありますよ。」
そう言ってスクリーンに写真を写す。
「これが、赤外線で撮影した艦内図です。搭載機は25機。機種は不明ですが、甲板に居る機はSu33の様です。」
艦内図と甲板のカタパルトに装着されているSu33の写真に換える。
「機関は原子力機関、2軸推進ですね。8枚のスクリューで動いていることが分かっております。全長は250m前後、幅50m前後。正に、モンスター原潜です。」
「21世紀最大クラスの原潜だな。これが、幾つか同級艦が居るのだろう。本当にモンスター原潜と呼ぶに相応しいな。」
上空から撮影された写真もあった。上から見ると、正に洋上空母そのまま。通常の空母に、潜行能力を持たせた潜水空母。
「構想は世界中にあるが、潜水艦は本来潜航する隠密性こそ威力を発揮する。それを捨て去る勇気は、どんな国も持たないだろうと思っていたが。まさか、本気で建造する国が現れるとは。」
「鹵獲したいです。本気で。」
潜水空母は、要らないと分かっていながらも欲しいという欲望に駆られてしまう。そんな魅力を撒き散らしていた。
「鹵獲も視野に対処を考えよう。鹵獲するなら、夜間に行うのがベストだが。それまで返信を待つとは思えんからな。陸軍と海軍は、鹵獲作戦の作戦を両軍合わせまでを1時間で行え。空軍は、両軍の要求する作戦全てに対応できるように準備を整えろ。」
「了解しました。」
3軍の幕僚は、直ぐに部下たちを集めて作戦会議に入った。
(潜水空母か。私も、欲しいと感じたよ。)
北里は、スクリーンに映る潜水空母を見ながら言う。