舞水端里爆撃
-舞水端里-
「急げ、燃料も急いで補充して発射体制を整えろ。」
弾道ミサイル、テポドンやノドンが発射台にセットされており、燃料が入り次第発射できる態勢である。
「燃料補充まで、あと3時間程度です。」
「急がせろ。」
舞水端里司令の張光大佐は時計を見ながら指示を出す。
「金総書記の、ご期待に沿わねばならない。」
-十勝戦略空軍基地-
「整備は順調です。」
十勝戦略空軍基地では、整備できた機から順次滑走路で待機している。ようやく、最後の機が滑走路に進入した。
「最後の一機が滑走路に進入。管制塔、離陸用意が出来た。」
戦略航空団司令を務める羽島大佐は、中国本土爆撃などを隊長として参加。戦略航空団司令の任を正式に受諾、それと同時に大佐に昇進した。
『了解、羽島大佐。滑走路上に障害物ありません。何時でもどうぞ。』
「了解、管制塔。スロットル全開、少し重いから加速には気を付けろ。」
羽島大佐は、操縦手に指示を出して後続機を見る。
「よしよし、少しずつ付いて来い。高度、5000辺りで編隊を組み、そのまま8000辺りまで上昇する。」
無線で各機に指示を出し、時計を見る。
「離陸時刻を20分過ぎた。作戦自体に響かんだろうが、予定の遅れは不味いな。」
「整備員はフル稼働です。何と言っても、500機富嶽を交代交代整備なんですから、仕方がありませんよ。それに、大型機の整備に慣れている人員は少ないんですから。」
「元々、大型機をそれほど必要としないのが自衛隊だからな。大型機といえば、精々輸送機か管制機程度。それらを全て回す訳にはいかないから、少ない人数を回して訓練。」
「作戦に多少の遅れが出るって訳か。まあ、最初の頃よりは早くなっているからいいが。」
-日本軍総司令部-
「はい、分かりました。」
『舞水端里爆撃後、新羅本土上陸は行えないか?』
「総理、確かに本音を言えば私もさっさと上陸して決着を付けたいですが、まだ新羅国内には不確定要素が多いのです。無論、上陸も考えて作戦スケジュールを組んでおりますが、裏にはアメリカすらも糸を引いています。そう、事を急ぐのは得策ではないかと。」
『やはり、それが軍の考えか。私だって、もう少し様子を見るべきだとは思う。しかし、時間を掛けていてはもっと大勢の犠牲が出る。ここは一つ。スケジュールを早めてはくれんか?』
「考えますが、アメリカとの戦争もあります。もう、我が国に余裕はありません。いつまでも、未来に頼る訳にもいきませんから。」
『それも分かっている。一度、向こうの元首には感謝の意を述べたいがね。向こうは向こうで大変なのだろう。もうじき、我々が昭和に本格的に介入して1年になる。そろそろ、向こうへの支援は補充だけにしようではないか。』
「昭和の政府との話し合いも必要ですね。官房長官に頼んで、スケジュールを組ませるのはどうですか?一応、過去とは言え同じ日本。外務省同士の話し合いと言う訳にはいきませんから。」
『・・・・分かった、北里君。竹島の方は見事だった。』
「ありがとうございます、総理。」
そう言って電話を切る。時計を見ると、爆撃開始時刻まで迫っていた。
「頼むぞ、何としても成功させてくれ。」
「爆撃進路固定。」
富嶽持ち前の高いステルス性を駆使して、レーダーに影すら残さずに侵入できた。しかし、闇とはいえ雲一つ無し。攻撃が始まれば、下の火災で照らし出される。
「エンジン音が全く静かなので、爆撃されるまでは発見される心配はありません。」
「こちら、哨戒機一号。A24地区の異常はありません。引き続き、哨戒を・・・・上空に黒い点を確認。詳細確認の為、接近します。」
低空を飛ぶMIG21は、上昇を開始した。
「レーダーに感あり。1機だけです。哨戒機ですね。」
「2機で哨戒しないとは。機種は?」
「解析中・・・・MIG21です。」
機内のスクリーンに、MIG21の3DCGと性能表が表示される。
「自動制御式防御火器にデータ入力完了。これで、自動的に迎撃します。」
各機からの一斉射撃で、MIG21は一瞬でバラバラになる。
「これで、敵に気付かれました。それに、このレーダーはある一定の高度に達しないと敵機を捕捉出来ないことも分かりました。」
レーダー手はレーダーを操作して、目標への最適侵入コースを割り出しながら言う。最適進入コースは、パイロットのHUDと、正面風防に表示される。
「まるで、ゲーム感覚だな。」
目の前が、ゲームみたいだった。仮想現実空間みたいなものである。
「ゲームと違うのは、人が本当に死ぬと言う事です。」
「・・・・そうだな。」
羽島は頷き、時計を見る。
「作戦開始時刻を少し過ぎた。爆弾倉開放、投下用意。」
爆撃手が、爆弾倉を開けて投下態勢に入る。完全に下のほうは気付いていない様子だった。
「新羅軍の防空網は弱い。やはり、攻撃には強いが守りには弱い軍隊のようだ。」
爆弾倉から、爆弾が次々に落ちていく。無誘導爆弾なので、コスト的には非常に安価な物である。しかし、複数の目標を同時に絨毯爆撃するには十分な威力を発揮する。
「た、大佐。ここは危険です。」
爆撃を受け、発射台は破壊される。装填されているミサイルは、破壊された発射台から転がり落ちる。
「爆発するかもしれん。気をつけろ。」
待機している戦車も破壊される。作業員や警備している者も、何人もが爆発に巻き込まれる。
「人民武力に連絡。舞水端里基地は、基地機能停止と。」
ミサイルの燃料などが爆発し、辺り一面が火の海になる。運が良いことに、核弾頭では通常弾頭だと言う事だった。
-新羅政府-
「で、ですから将軍。舞水端里のミサイルは全滅しました。残すは、東倉里にある核弾頭装備の弾道ミサイルと移動式ランチャーから発射する通常弾頭式弾道ミサイルです。」
人民武力部長の金斗益は新羅国最高指導者の金正日に報告する。
「直ちに、オホーツク海に居る原子力潜水空母『赫居世居西干』を東京湾に潜入。こちらに、降伏交渉の用意があると伝えるのだ。」
「了解しました。従わない場合は?」
「航空攻撃を行うと言え。まだ、同級は我が国で3隻居る。中華人民共和国と合わせて7隻。生き残れば8隻だ。」
金正日は、斗益に命じた。
「流石に、奴らも首都と言う喉元に直接ナイフを突きつけられたら、従うほかあるまい。」
「分かりました。至急、日本に対して降伏条件の草案を纏めます。」
斗益は部屋から出て行く。金正日は、壁に掛けられている金日成の肖像画を見て
「百戦百勝の鋼鉄の霊将様、どうかこの息子を。お守り下さい。」
自分の父であり、建国の父でもある金日成の肖像画を見ながら言った。