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平成からの増援

-平成 箱根-


「こっちよ。」


子供達が箱根の山の中で遊んでいる。そして、その最中に不思議な洞窟を見けるのだった。


「入ってみる?」


「うん。」


そう言って子供達はその洞窟に入った。すると、体が歪むような感覚が襲い、歩くのもやっとで洞窟を抜けるのだった。そして、抜けた世界が


「ここって、何処?」


目の前に広がる世界は子供達にとっては歴史で習うような街並みだった。木造の家が立ち並び、東京の高層ビルも見えなかった。


「ねえ、一体ここは何処なの?」


子供達は答えの無いまま質問し合う。


「も、戻ろうよ。こんな所って、見たこと無いよ。」


子供たちは不安がって元の洞窟に戻るのだった。数時間後、その子供たちが親に洞窟の事を話し、親が警察に通報して調査を行われる。しかし、警察レベルでの判断は難しいと警察上層部は判断し、自衛隊と合同にて調査が開始されて判明したのは、洞窟の出口が昭和17年であることだった。



-平成 防衛省-


「それで、今回発見された洞窟が昭和17年に繋がっていることは分かった。しかし、何故突然このような事が起こったのかが問題だ。」


北里は防衛省にて行われた会議にて言う。この会議には、自衛隊の各幕僚長のみならず、総理大臣の西澤にしざわ大作だいさくや近代史に詳しい歴史学者や物理学者が等が参加した。


「その原因は分かりません。物理的な力を加えられて出現したのか、超常現象によって出現したのか全く検討も付きません。」


「それと、これと似たような現象が硫黄島沖でも観測されたとの事です。海保が不審な雲状の物体に吸い込まれ、戻ってきた時には乗組員が昔の日本を見たというんです。恐らく、洋上のこれも恐らくはタイムゲートかと。」


幕僚等は伝えた。そして、北里は西澤総理の方を見て


「総理、至急我々は昭和期に援軍を送るべきです。この間もお話したとおり、海自の空母打撃群が昭和17年にタイムスリップしたのです。ここは、昭和の時代に援軍を送り込みましょう。」


「そうしたいのはいいが、昭和17年の正確な日付が分からんのだ。もし、日付が分かれば適切な援軍を送って旧軍を支援できるのだが。」


西澤は現在の様な弱気な総理大臣とは一線を超し、強気な態度と人心を掌握する話術でかつて無いほどの絶大な支持を受けて総理大臣へと就任し、現在、日本には300万人もの失業者が出ていた。しかし、失業者対策の公共事業者や娯楽などの事業を開始し、失業者を吸収。最近続いていた不況も完璧とも言える政策で好況へと変え、さらなる支持率を上げている戦後始まって以来の正に総理になる為だけに生まれてきたと世論は評価するほどであった。


「浜内博士、この記録映像から昭和17年の何時頃かは分かりますか?」


日本歴史学の権威、浜内はまうち吉次郎よしじろうは自衛隊が撮影した記録映像を見る。そして、


「恐らくは、ミッドウェー海戦が終わった辺りだと思います。ここを航行しているのは艦影から那智だと思われます。その後ろは高雄か、愛宕かと。何れにせよ、これは本土防衛を主任務とする第五艦隊かと思われます。」


「第五艦隊。では、やはり昭和17年に間違いないと。」


「ええ、間違いなく昭和17年です。そして、ミッドウェー海戦終了と言う事は、連合軍が狙うのはソロモン諸島最南端の」


「ガダルカナルですね。」


「そうです。」


北里は浜内を見て


「しかし、東郷が送ってきた情報では失われる筈の空母4隻は健在ですよ。島こそ占領しませんでしたが、これでは史実と違います。」


「確かにそれもそうです。しかし、歴史を変えたら先を予測するなど不可能。ここは、史実どおりに進むの前提で話をしようではないか。」


西澤は北里に言った。


「総理、ここはやはり我々が増援を送って旧軍を支援すべきです。もし、歴史どおりにガダルカナルを獲られたら餓死者は史実同様に1万を越します。どうか、ご決断を。」


西澤は考えた。歴史はそう簡単に変わるものなのか?変わったら今の日本はどうなるのか?そんな考えが西澤の脳裏に過ぎる。


「総理、この決断は今現在の我々の存在を否定するかもしれません。ここは、慎重に審議すべきです。」


各幕僚長は言う。しかし、北里は


「総理、我々はアメリカと戦争をする話をしているのです。80年前のアメリカと、戦争をする話をしているのですよ。」


北里は強く言った。無論、西澤もそんな事は百も承知だった。


「しかし総理、平成のアメリカが黙っている筈もありません。ここは、本当に慎重に討議すべきです。」


「まだそんな事を貫かしているのかお前達は!?そんないい加減な気持ちで自衛隊に入ったのなら、今すぐにでも辞表を出せ!!」


北里は幕僚長らに言った。彼自身も弱気な態度はあまり好きではなかった。それに、彼の家系は先祖代々軍務に服し、常に最前線にて戦っていた一族だ。平成だろうとそれは変わっていない。日本の防衛の最前線で、彼は今戦っている。


西澤は別室で北里と話し合った。



「総理、自分が消えることが怖いのもよく分かりますし、現在のアメリカとの戦争の可能性だってあります。しかし、貴方は総理になる為に生まれてきた人間。いつもの強気は何処に行ってしまったか?」


北里は西澤に問う。しかし、西澤はそれには答えず


「防衛大臣、現在の我々の戦力を平成から昭和に送ったとして、気づかれない程度の戦力移動はどの程度なのだろうか?」


「艦艇は1艦種当り15隻前後が良い所でしょう。陸と空は特に問題にはならないかと。」


艦艇は停泊していてもレーダーに映るのだ。しかし、陸上の物は違う。建物や地形が邪魔をし、レーダーに映らない。だから、戦車や航空機を幾ら移動させた所で気づかれる可能性は非常に低い。


「総理、現在の日本が消滅しても良いではありませんか。もう一つの、より良き日本が別の世界、別の歴史で生き延びていけるのならそれで良いではありませんか。」


北里は少し間を置き


「太平洋戦争での徹底的な敗戦で我々はアメリカに毒を抜かれて無害な民族になってしまった。真の日本と言う国家、真の日本国民はあの日に消滅したのです。アメリカの加護の下で繁栄し、世界に名だたる経済大国になった日本。しかし、今では頼みの金も尽きた。いや、使い道が分からなくなった。原因は敗戦によって我々は働くこと以外に生き甲斐を感じられなくなり、日本国家、日本民族が何の為に歴史に存在するのかを考えなくなった。」


「防衛大臣、何が言いたいのだね?」


「日本の敗戦80年のアジアの歴史を思い出してください。冷戦は終結するも朝鮮半島は分断されたままです。中国は近年、巨大化するもその力は対外政策にはあまり生かされておりません。台湾は未だに独立を許されず、その他アジアの諸地域や諸外国では紛争や内戦、テロが横行しております。日本が勝っていれば、この様な歴史にはならなかった筈です。」


「確かにそうだ。アメリカによって指導されているアジアではアメリカ反対派が各地でテロを起こしているのも事実だ。アジアはやはり、アジアの国で指導せねばならないのだ。」


「その為にも、我々自衛隊を昭和期に送り、旧軍支援の下で真の大東亜共栄圏を確立しようではありませんか。歴史では実現できなかった日本人の夢、大東亜共栄圏。」


北里は西澤を説得する。


「私の親は軍を反対しておりました。親は、敗戦を元にアメリカによって育てられ、当時の日本の思想は間違っていると徹底的に教え込まれた人です。果たして、あの時代の思想は本当に間違っていたのか?それは分かりません。しかし、あの戦争で民間人が大勢亡くなったのは事実です。そして、大勢の民間人を殺した国が当時の日本の思想を間違っているなどとどの口で言えたものか。」


「それで?その話は私に何を伝えたいのだ?」


「私は、当時の思想を調べてこの大東亜共栄圏だけは間違っていなかったと感じております。アジアに白人優越主義が蔓延している中、日本だけが白人優越主義を考えず、アジア独立の為に戦っておりました。実際の軍政はともかく、この思想だけは誰が何と言おうと間違っていないと感じております。」


「防衛大臣。」


「先程も言ったとおり、我々自衛隊を昭和に送り、旧軍を支援し、その影で大東亜共栄圏達成を密かに執り行おうではありませんか。我々は連合軍に勝ちたいのではなく、旧軍支援の下、大勢の日本国民を救う事とアジアの独立を行うことが主任務と致しましょう。」


北里は西澤に真剣な面持ちで見る。


「総理、貴方は考えたことがありますか?大東亜共栄圏が、今の欧州連合よりも強い結束力で結びつき、その下で多くのアジア国家が繁栄していく様を。奇跡の様な成長を、総理は考えたことがありますか?。私はあります。日本を盟主として、強い結束力で結びついたアジアを。私は考えたことがあるのです。」


西澤は暫く目を閉じて考えた。そして、暫く考えた後、目を見開いて。


「分かった。やろうではないか防衛大臣。より良き日本を、より良きアジアを目指して。」


「総理。」


「但し、我々が歴史改変で消えてしまっても、文句は無しだぞ。」


「勿論です総理。」




-東郷 資料室-


「それで、本当にネットが出来たのか?」


「はい。間違いありません。それに、メールも出来ました。」


尾上はメールボックスを開いた。すると、丁度防衛省からのメールが届いた。


「何何?」


『第一空母打撃群旗艦 東郷へ。


  日本国政府は旧軍支援の下、海上自衛隊、陸上自衛隊、航空自衛隊を昭和に送ることを決定した。  そして、平成の日本技術を用いて昭和の日本の技術力を向上し、連合軍に負けない兵器等を提供す  る。                                         』


「どういう事だ?」


「さあな?」


「とにかく、内地へ戻れば分かるだろう。」



増援部隊


陸上自衛隊 兵力7万人 


      戦車320台


      榴弾砲300門


      ヘリ200機


      その他、補助車両多数


航空自衛隊 兵力1万1千


     戦闘機120機


     早期警戒機4機

     

     輸送機58機

     

     その他、補助兵器多数


海上自衛隊  2万3千


     ヘリ空母(日向型)2隻


     護衛艦14隻


     ミサイル護衛艦6隻


     ヘリコプター搭載護衛艦4隻


     潜水艦14隻


     揚陸艦4隻


     輸送艦8隻


     タンカー10隻



第一空母打撃群


   空母 東郷


   イージス護衛艦 あたご あしがら たかお はるな(あたご型)


   アメリカ付与イージス護衛艦 ヴィンセンス(日本付与後『しきしま』に改名) トーマス・S・ゲイツ(日本付与後『あさひ』に改名) ヨークタウン(日本付与後『はつせ』に改名) タイコンデロガ(日本付与後『みかさ』に改名)

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