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世界最強の航空機動部隊  作者: 橘花
昭和 6
58/90

ノースカロライナ

-紀伊-


「敵艦隊を捉えました。」


紀伊のレーダーがようやく、ノースカロライナを旗艦とする北太平洋艦隊を捉えた。


「こんごうより打電。ミサイルによる、先制攻撃を実地許可求めております。」


通信士官が報告に来る。


「必要なしだ。」


山本はその通信仕官に伝えた。



「長官、どうして突然艦隊決戦なんか?あれほど、嫌っていたのに。」


隣に立つ宇垣纏中将は、山本に聞く。


「これが、私が艦隊を指揮して戦う最後の戦いになると思ったからだろうな。最後に、軍令部をはじめとする、多くの人間が待ち望んだ艦隊決戦を挑む。それが、私の最後の幕引きだろう。」


「長官は、対米戦終結まで指揮を執ってもらいますよ。」


宇垣はただ、山本にそれしか言えなかった。




-ノースカロライナー


「艦長、僚艦のノーサンプトンが敵艦を捉えた模様です。」


レーダーを使って、捉えれたノーサンプトンが、発光信号を使って旗艦に知らせる。


「数は?」


艦長は、直ぐに自艦のレーダーを確認させる。


「えっ・・・と。数は1隻だけなのですが。」


「1隻?輸送船か何かか?」


「いえ。大きさ的には戦艦なのですが。護衛も連れていないのは妙なんです。」


実は、こんごうを捉えれていない。ステルス性能が高いこんごうを、この時代のレーダーで捉えることは少し難しかった。


「潜水艦を連れていないのを不幸中の幸いだと思うのだな、日本軍ジャップ。」


艦長はそう言い、戦闘体勢を採らせる。


「各艦艇は、連絡を密にして砲戦だ。敵は1隻、恐れるに足らん。」




ー紀伊ー


「敵を捉えたら直ぐに向かってくる。いい構えですね。」


有賀艦長も、そう言って戦闘体勢を採らせる。


「面舵一杯。電探連動砲、撃ち方用意。」


艦を右に向け、主砲を左に旋回させて狙いを付ける。


「撃ち方始め!!」


紀伊の初撃は、北太平洋艦隊への砲撃で幕を開けた。


「水柱多数。爆発も確認。」


報告が届けられた。


「戦果は?」


「2隻に命中。被害は不明なれど、大打撃の可能性大。」




「ノーサンプトン、沈黙。シカゴも、通信途絶です。」


ノースカロライナ艦内では、初撃の命中が応えている者がいる。


「一瞬にして、戦闘能力の3割を失いました。唯でさえ、護衛している艦艇は少ないのに、相手は我々の射程外から狙い打つことができます。」


「北へ逃れ、北周りで本土を目指すべきです。」


「それは・・・・出来ん。」


「何故です?」


「本艦は整備を確りと行われていない。速力は、最大で24ノット程度しか出せない。そんな速度では、追いつかれて一方的に遣られる。」


艦底にこびり付いている貝などで、速力が低下している。その上、寒いところでの待機が続いたため、機関の劣化も起こしている。


「とても、逃げられる現状ではない。」


艦長は、状況を直ぐに悟る。


「本艦は逃げられんが、他は逃げられるかもしれん。今は1隻でも欲しい。逃げられる艦は全て逃がせ。本艦はここで、時間を稼ぐ。」


命令を受け、ノースカロライナ以外の艦艇が全て離脱する。




-紀伊ー


「敵が、戦艦を残して撤退した模様。」


停船し、ずっと狙い続けていた紀伊は、少しずつ航行を再開する。


「逃げた艦艇を追う必要はありませんが、この戦艦を沈めないと不味いですよ。ここは、例の部隊の通過道。打電される恐れがあります。」


「分かっている。」


山本は頷く。彼自身も百も承知である。


「一発で沈めましょうか?」


砲術長が聞いてくる。


「そうしてくれ。長引かせたく無い。急がねば、結果は悪くなるかもしれん。」


自動装填装置で、既に対艦砲弾を装填し終えている。


「了解しました。撃て!!」


放たれた砲弾は、射程距離ギリギリのノースカロライナへ命中する。


「爆発炎上。火災が起こっている模様。」


しかし、こちらにも主砲弾の雨が降り、1発が左舷連射砲に命中してしまう。


「左舷連射砲に命中。1基破壊、1基使用不能。火災が起こっております。」


「・・・・どうやった?。」


「え?」


「ノースカロライナではここまで、届くはずが無い。それでも届いた。一体どうやって?」


山本が疑問がる。しかし、ノースカロライナは既に居なかった。




ーノースカロライナー


「ハア、ハア。」


ノースカロライナは、緑の空間は進んでいた。


「ここは、一体?」


艦長しか乗っていない。他の乗員は、服だけがある。ジョージ・ワシントンと同じ状況であった。


「どうなっている?誰も、乗っていないのか?」


すると、羅針盤の横に、人影が現れる。


『初めまして。突然、この様な事をして申し訳ない。』


男は一礼をしながら言う。


『これから言うことを信じようと信じまいと自由ですが、聞いてもらいます。この戦争は近いうちに日本とアメリカは講和します。何故なら、アメリカにとって真の敵は日本では無いからです。』


真清とは別の人間。でも、似たような状態で目の前に現れている。


『貴方は、その重要な橋渡しを担います。アメリカの政界すらも動かし、日本と講和を結ぶための人となります。』


「わ、私は一介の海軍大佐だ。政界を動かすだけの力は、私には無い。」


『いいえ。貴方は政界すらも動かせる人間になっています。日本との講和への橋渡しを担う重要な人間に。』


「私は、どうすれば?」


『この艦は、異次元を通ってアメリカ西海岸のサンディエゴに到着します。恐らく、負けた責任を取って艦を降ろされるでしょうから、そのままワシントンD.C.へ行きなさい。そして、そこで大統領すらも動かす存在に会いなさい。』


「一体、誰なんだ?大統領すらも動かす人間とは?」


『人間ではない。存在です。人間が作り、人間が見て、そしてそれが世論にすらなる。そんな存在。』


「新聞ですか?」


『そうです。新聞を使って、アメリカを動かし、日本との講和を実現させるのです。それが、我々の願いでもあります。』


「あ、貴方は一体?」


『お答えすることは出来ません。ただ、私の言うとおりにして下さい。でないと、もっと大勢の人が死ぬことになります。人の犠牲を最小限に抑えたいのなら、どうぞ宜しくお願いします。』


そう言って、人影は消える。


「一体、何だったんだ?」


ノースカロライナは、ゆっくりと緑の空間を出口目指して航行していった。




-日の本 時空管理省-


「何者かが、アメリカのノースカロライナ艦長に接触した形跡があります。」


日の本、時空管理省では忙しく職員が動き回っていた。


「一体、誰が?まだ、時空間移動は国家レベルでしか使用できないはず。」


「何処かの国の人間が接触したと言う事になる。」



「全員、揃っているな。」


真清が会議室に入り、会議が始まる。


「まず、一体何処の国が接触したかだ。アメリカはありえない。アメリカは過去を変えないと言っている。現に、時空間移動を可能にする装置を全て破棄している。」


「可能性としては欧州です。それも、技術の進むドイツ、イギリス、スイス、スウェーデン。この4カ国が怪しいです。」


「可能性を言えば、4か国中、ドイツが一番高いです。当時、クーデターを起こすにはアメリカの全ての戦力が欧州方面に集結していなければならないので。」


「誰かが、歴史の事を早めている?」


「恐らくは。」


会議は纏まらなかった。憶測で動けないのが、政治の世界である。


「とにかく、この事は陛下へ上奏したほうが良いかと思われます。」


「当然だ。陛下のご聖断無くして動けません。陛下は、この国その物でも在らせられます故、この国の重要方針は全て陛下のご聖断が必要なのだからな。」


「私が上奏します。」


真清は立ち上がって言う。勿論、彼がこの中で一番陛下の信頼を得ている。彼が上奏するのが一番だろう。


「ドイツとの国際会談の場を設けられないか、聞かなくては。」


「しかし、何故ドイツが?」


「まだ、ドイツと決まった訳では無いよ。」


真清はそう言い、会議室を出て行く。

過去・現在・未来。複雑に混ざり合っていく世界を描くのは難しい。でも、ロマンはあると思う。これは、多次元世界を舞台に、人が今まで行ってきた戦争の世紀を完全に終結させる事をテーマにしています(絶対に、こんな事はありえないが。)。

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