上陸開始
-安宅丸-
「上陸用意良し。」
陸軍第一陣上陸部隊が南方作戦で鹵獲したアメリカ軍の上陸用舟艇LCVPなどを国産化した特上陸用舟艇を始め、国産小発や大発など、多数の上陸用舟艇に移乗した。
-伊勢-
「各艦艇、海岸砲戦用意。」
上陸部隊の上陸支援を担当する伊勢・日向・扶桑・山城をはじめとする艦艇は、ワイキキビーチへの砲撃を開始する。
「零観の砲撃観測を使って正確に狙い撃て、敵の海岸トーチカを吹き飛ばしてやるんだ。」
-真珠湾上空-
「敵機が居ますよ。」
烈風改が真珠湾上空の敵機を追い払いに来た。
「敵機の中に、P51は居るか?」
烈風改を操るパイロットの中には高木も居る。
「居ますよ。大勢。P51です。」
アメリカ軍が迎撃に上げた航空機はP51、P40、P38、F4F、F4U、F6Fと大量の航空機を上げている。
「数では不利、練度は上。勝負と行きますか。」
烈風改は編隊を組み、まずは相手の上をとる事に成功する。
「各機、急降下開始。」
操縦桿を倒し、敵機の頭から一撃離脱を狙っていく。
「上だ!!」
米軍のパイロットも気づき、急いで回避する。
「ちっ!!喰われたか。」
狙われた何機かは逃れられたが、あとは殆ど撃墜されてしまう。
「怯むな。数ではこっちが勝っている。落ち着いて仕留めろ。」
米軍も数の優位を利用して反撃にかかった。
「やってるな。」
P51Bに搭乗するジェームズ少佐は遅れて戦闘空域に到達する。
「整備連中が手間取って遅れたが、こりゃ命拾いしたかな。」
乱戦になっている為、P51Bが近づいてきているのに気付いていない。
「後で、珈琲を・・・そうもいかんな。」
突然上から烈風改の一撃離脱攻撃を掛けてきたため、回避する。
「俺と互角に遣り合えるパイロット。恐らくは南方で戦ったゼロ・ファイターだろう。」
操縦桿を倒し、後ろをとる。
「だが、甘いな。」
機銃を発射するが、弾は全て外す。
「腕が良い。横滑りを掛け、弾を逸らすとは。」
「野郎。やっぱり、ここに居たのか。」
高木も、このP51のパイロットが誰なのか分かった。
「B17で脱出したパイロットの中には、こいつも居たんだな。」
烈風改を急降下させた高木は、相手がついてきている事を確認する。
「喰らえ。」
フットペダルを踏み込み、操縦桿を勢いよく押し込む。
「逆宙返り。」
「逆宙返りをやるとはな。」
通常の宙返りは、空に向かって上昇しながら一回転する。しかし、逆宙返りは
「地面に向かって、頭を下にする機動。」
この為、血が頭に集まる。レッドアウトが起こる。
「低速とは言え、やはり起こるか。」
ジェームズも目の前が少しずつ赤くなってくる。
「勝った。」
二度目の逆宙返りで背後をとった。
「止め。」
引き金を引くが、弾が出ない。
「詰まったか。逆宙返りで、負担がかかったか。」
翼が振動を起こしている。流石に、2度目の逆宙返りは耐えられない様だ。
「帰還する。」
母艦目指して飛行を開始する。
「こいつは駄目だな。」
冷却液が漏れ出ている。こちらも、逆宙返りに耐えられなかった。
「基地に戻りたいが、戻ってもどうせ死ぬだけだ。アメリカ本土目指して飛ぶか。」
操縦桿を倒し、機首をアメリカに向けた。
「撃て!!撃て!!」
ワイキキビーチでは、上陸した日本陸軍が、トーチカなどから集中攻撃を受けている。
「戦車の上陸はまだか?」
「もうすぐです。」
「早く上陸させてくれ。砲撃したってのに、敵は全く怯んでいない。」
エア・クッション型揚陸艦を使って、90式戦車や2式中戦車、2式重戦車が揚陸する。
「攻撃開始!!。」
戦車の攻撃で、トーチカを吹き飛ばすことが出来た。
「くそ。」
2式中戦車と2式重戦車の前面装甲は複合装甲となっている為、90式戦車ほど厚くは無いが、それでも十分な防御力を誇っている。
「あの野砲、よくもやってくれたな。」
75mm野砲の攻撃を受けた2式中戦車は、お返しに75mm砲を撃って、破壊する。
「急げ。橋頭堡を確保しなくてはならん。早く占領するぞ。」
機銃で薙ぎ払われながらも、橋頭堡確保を目指して、陸軍は奮戦するのであった。
「限界か。」
燃料タンクが空になり、滑空を続けていたが、それも限界が来てしまった。
「ジェームズ・ハロルド。異国アメリカとハワイの間の海域に没せる・・・か。」
潜水艦が近くに居る事を願うしか無かった。
「え?気泡?」
すると、目の前の海面に気泡が現れる。そして、潜水艦が浮上する。
「あれは?ガトー級だな。助かった。」
浮上したのは、ガトー級潜水艦の一隻『グロウラー』だった。その近くにP51を着水させ、潜水艦に救助されるのだった。
もう少し、ジェームズ少佐にも活躍して頂きたいので、生かします。
ちなみに、彼は実在のある人物(有名と言う訳ではない)をモデルにしています。