攻撃成功
-真珠湾-
「ペンシルベニア、大破しました。」
魚雷3本を喰らい、更に急降下爆撃を2回受け、傾いた。
「戦闘能力喪失です。」
「了解。別の目標も狙うぞ。」
天山艦攻は別の目標に攻撃を移した。
-真珠湾 アメリカ太平洋艦隊司令部―
「日本軍の攻撃が止まりません。湾内の艦艇、消耗率50%を越えました。」
「こちらに向かっている空母は?」
「サンディエゴ基地を出撃した空母艦隊が今日到着する予定ですが。」
ニミッツは司令部に到着するなり、状況を聞く。
「ホーネットやエンタープライズ、レンジャーか。」
「はい。」
参謀が頷く。
「勝てると思うか?」
「敵の規模は不明ですが、艦載機の数を見る限りはかなりの数と思われます。北太平洋艦隊から、ノースカロライナなどの戦艦が出撃したようですが、こちらを加えても、勝てる見込みはないでしょう。」
参謀たちは、冷静に彼我の戦力差を分析した。
「軍人たるもの、ただ戦うだけでは駄目だ。損害を考え、後を考える。今重要なのは、ハワイよりも空母だろう。キングはハワイを死守しろと言ったが、ここで空母を失えば、後の戦いも厳しい。」
「提督。」
「ノースカロライナはともかく、空母艦隊は直ちに引き返させろ。本土にも電報を打て。一分一秒でも長く持たせ、合衆国の反撃準備を整えるための時間を稼ぐと。」
ニミッツは直ぐに電報を打たせた。軍人としては抗命罪だが、戦力を見誤っての戦いで損害を出したら、それこそアメリカを負けさせてしまう。ニミッツはそれだけは避けたかった。
「優れた人間だよ。ニミッツ元帥は。」
上空を旋回するE2は既に電子妨害をやめている。既に攻撃している為、電子妨害をする必要が無かった。
「本土の戦いの用意が出来るまで時間を稼ぐそうだ。」
そして、先ほど発信された電報をキャッチしたE2は、それを味方に発信していた。
「目標、燃料タンク。」
天山水平爆撃隊が燃料タンクへの攻撃を開始した。既に港湾の艦艇は戦闘能力が殆ど喪失している。
「敵は予想外ですね。もっと、湾内に艦艇が居ると思って、4段構えの作戦を立案したのに。」
「敵は狡猾だよ。恐らく、ここだけが決戦場じゃないと睨んでの事だろう。」
-紀伊-
「先ほどの電報通りだと、空母は引き返したそうですが。」
紀伊でも、E2の発信した電報を受け取っていた。
「そうだな。戦艦が向かっているそうじゃないか。」
山本は落ち着いて言う。
「どうしましょうか?」
「どうするもこうするも。戦うしかないだろう。どうせだ。本艦一隻だけでやらんか?」
山本突然、とんでもない事を言い出す。
「長官、護衛も連れて行かないのですか?それでは、潜水艦からの攻撃に対処できませんよ。」
「私が言ったのは、連合艦隊は本艦一隻だと言う意味だ。」
「では、救援海軍を?」
「こんごうって言ったっけ?それに、護衛を頼めばいいだろう。」
-こんごう―
「浜西司令、連合艦隊旗艦より入電。本艦に、紀伊の護衛を依頼してきていますが。」
「恐らく、ノースカロライナを叩くのだろう。」
浜西も状況を読み取っている。
「艦隊指揮をひえいに移譲し、本艦は紀伊の護衛に着く。」
紀伊と共に、こんごうは進路を北西へとった。
-大和-
「攻撃隊より、真珠湾攻撃成功。湾内艦艇は予想以上に少ないも、目標を全て破壊。」
第一航空戦隊旗艦の大和では、山口が報告を受ける。
「中将、追撃すべきです。」
参謀らは追撃を具申する。
「戦闘機を中心とする第二次攻撃隊を飛ばす。今度は飛行場だ。先ほどの攻撃を受け、飛行場では戦闘機が次々昇っているだろう。」
「E2からの報告では、湾内上空にも戦闘機が出現し始めたそうです。また、陸軍基地からも戦車やトラックなどの移動が活発になっており、上陸してくる兵の迎撃態勢が整えられているとの事。」
山口は、発艦していく戦闘機隊を中心とする第二次攻撃隊を見守りながら
「上陸戦は近いと、伝えておけ。」
「了解しました。」
-上陸艦隊 旗艦『安宅丸』-
輸送船『安宅丸』では、上陸部隊指揮官の山下奉文大将が居た。
「今回は空からの掩護もある。大本営は出来る限り早く落とせとしか言わなかったから、特に急がず、損害を抑え、そして確実に勝利する事だけを考えていい。」
マレー作戦と違い、今回は特に期限を決められていない。その為、山下大将もやりやすかった。
「気楽に行ってくれればいい。損害は抑えながら、気楽にな。」
輸送船は平成を含め、至る所から掻き集めた外洋航海能力を持つ1000t以上の艦艇計120隻以上。日本海軍史の中で、これほど大規模な作戦展開は無い。
「戦車、火砲、自動車、それに兵力に物資。この作戦が、如何に重要かを物語っている量を揃えている。」
戦車は最新の5式戦車を改造した2式戦車、それに平成からの技術提供を受けて生産されている2式重戦車(61式戦車の事)。その他、自動車は平成の中型トラックなども含まれている。
「上陸する兵らは1週間で落とせる言う者も居るらしいが、私は一か月は確実に掛かると予想している。」
「恐らく、予想は的中するでしょう。下手をすれば、ゲリラ戦で半年は持ち堪えるかもしれませんよ。」
「ありえるが、取りあえず基地を全て潰せば継戦能力は削ぐ事が出来る。」
その時、上陸作戦開始の放送が流れた。
「では始めよう。上陸戦を。」