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世界最強の航空機動部隊  作者: 橘花
平成 5
52/90

諸国会議へ

―首相官邸―


「総理、明日はインド国際会議場にて中国へ宣戦布告した国同士の会議があります。」


外務大臣が首相官邸に呼びに来る。


「分かっている。今車を用意させた。残念だが、今回は私の信頼できる人間だけで会議に臨む。君は終戦への道筋を考えていまえ。」


西澤は、やはいあの一件以来外務大臣をはじめとする外務省を完全に信頼しなくなった。


「軍の指揮に関しては私は素人だ。あまり軍務に口出しして、戦局を混乱させても不味いからね。軍の指揮は完全に北里等、軍人肌の人間に任せる事にするよ。」


日本の国防の弱点の一つである、素人が防衛大臣に就任するのを、内閣を組織する時に西澤は拒んだのだ。その為、根からの軍人を防衛大臣に無理やり就任させた。


「これからは、あまり軍務には口出ししない様に気を付けないといけないな。」


溜め息を付きながら、西澤は言う。



―海上国際空港―


「総理、今回の会議の議題はやはり、中国ですか?」


「総理、何か一言お願いします。」


空港に記者等が案の定押し掛けていた。


「一言か。君らが軍に志願する事を望むよ。」


そう言い、西澤はMRJに乗り込んだ。




「総理、不味いですよ。あの様な発言は。」


官房長官に指摘される。


「良いんだ。官房長官、私は全てを片付けたら。辞職するつもりなのだ。」


西澤は、既に覚悟を決めていた。全ての問題を片付けたら、自分は政界から離れて静かに暮らそうと。彼は、不本意ながらもこの一連の騒ぎを大きくしてしまった張本人でもある。勝手な言い分を言って宣戦布告してきた中国、高い金を払って維持してきた日米安保をあっさり破棄したアメリカ。この二つを叩き潰した時、西澤の政治生命も終わりを告げる。


「後の事は、党の人間に任せるよ。党の人間の事は、君も良く知っているだろう。」


「ええ。総理の党ほど、今の日本に明確な世界観とそれを実行できる力を持った党は存在しませんから。」


「売国政権もようやく終わったのだ。日本を未だに戦後だと考えている政治家の、のらりくらりで話をややこしくする天才たちの集まりだと、私は政治に対して思っていた。私は、総理になる為に生まれてきた党の人間に言われたが、乗り気ではなかったんだよ。」


「でも、既に歯車は動いています。総理が総理でなかったら、今頃金を払って、更に高額の金額も請求されていたかもしれませんよ。」


「それ以前に、北里のような人間がいなければ、この日本の空は中国やロシアの空になっただろう。」


西澤は飛行機の窓から、外を見ながら言う。


「私も、北里に説得されなければ、旧自衛隊を昭和に送って支援しようなどと考えなかったかもしれん。もう、昭和には戻りたくないと、心のどこかで思っていたのかもしれんな。」


「総理、総理は、日本をどうしたいと思っているんですか?」


「東洋の島国。かつては、西洋の旅人が夢見た黄金の国。マルコポーロの東方見聞録にはジパングと呼称されていたらしいが。そんな、古き良き時代を、夢見たのかもしれんな。」


「総理?」


「世界観は持っている。しかし、私の思い描いた世界で、日本が何をすべきなのか。それが、私には分からないんだ。北里の言うように、我々日本人が何故、歴史に存在するのか考えなくなってしまったは、事実だな。」


「総理、大丈夫ですか?」


官房長官は西澤の様子が可笑しいと感じる。


「あ、ああ。すまない。疲れているのかな?最近。日本をどうしたいと思っているんですか?だったっけ?。うん。」


「総理、本当に大丈夫ですか?」


「心配ない。暫く仮眠を取らせてくれないか?」


「ええ。構いません。」


そう言って官房長官は部屋を出る。




「最近、嫌な夢を見る。」


西澤は独り言のように呟く。


(昭和で平成で戦っている軍人たちの、喜びと悲鳴。そして、それを白昼夢(はくちゅうむ)としても見る事がある。)


顔に手を当てて、ゆっくりと手を顔から降ろしていく。


(それを見ている最中は、何か自分でも意識していないのに言葉が出ているらしいな。)


官房長官の話から、西澤が独り言のように何かを呟いていると言う事が分かった。



『お困りなようですね。』


突然、黒い煙が現れ、そして人間の形に成る。


「真清さん。飛行機の中にでも現れるのは意外ですね。」


『白昼夢は無視してください。少なくとも、貴方の意思を全員に聞いてもらうためにやっていますから。』


西澤は驚く。


「じゃ、じゃあ。この白昼夢は、貴方方が?」


『はい。特殊な催眠ガスを使って白昼夢を見させております。そうした方が、胸の内の本心を言えますから。』


「ははは。じゃあ、さっきのあれは本心なのか。」


西澤は苦笑いを浮かべながら言う。


『そうなりますね。理想としては良いと思います。』


MRJは現在、ベトナム上空を飛行していた。インドまで、あと数時間と迫ったのだった。



―東京某所―


「フンフンフン♪。」


鼻歌交じりに、背広の男が公衆電話ボックス内に入る。


「タバコ、タバコ。」


タバコと財布、ライターなどを取り出す。そして、小銭を入れた後、番号を押し、相手が出る間にタバコに火をつけようとした。しかし、火がつかない。


「くそッ。安物のライターだな。」


すると、扉を開けて大男が無理に入ってくる。電話を持っている方は驚き、ライターを床に落とす。


「どうした?火をつけるんじゃないのか?」


電話を離し、カバンからスタームルガー・セキュリティシックスを出して、構えようとする。


「ずいぶんと年代物を使っているじゃないか。」


しかし、大男に腕を捻られ、落としてしまう。大男はそのまま受話器を取り、耳を付ける。


「残念だな。相手は留守なようだ。」


ライターを取り、拳銃を電話ボックス外に蹴り出す。


「100円ライターが死体を送ってくれるそうだ。電話ボックスの棺桶なんて、贅沢品をプレゼントするんだ。めでたく思え。そして、余計な情報を掴んだことを後悔するんだな、内閣情報調査室の人間さんよ。」


ライターをボックスの扉の所に挟み、開けられないようにする。諜報員はボックスのガラスをガンガン叩くが、戒厳令下。22時以降は軍が都内の警備を担当している。



「やれ。」


電話ボックス前に停めている、黒塗りのメルセデス・ベンツ・W204の所に移動した大男は、車の中に居る仲間にそう伝える。すると、その車からM224、60mm迫撃砲が窓に固定される形で現れる。


「撃っていいぞ。」


大男はそう命じる。そして、放たれた迫撃砲弾は電話ボックスを木端微塵に吹き飛ばす。大男はそれを確認し、ベンツ・W204に乗って、そこから走り去った。




―警視庁―


「使われたのは迫撃砲、若しくはロケットランチャーの一種と思われます。」


警視庁の、トップの中でも更に一部の人間と、内閣情報調査室のエージェントが集まっていた。


「アジアで、いや、世界一治安がいいと自負できる日本。それも首都のど真ん中で迫撃砲をぶっ放して、おまけに見失うとは。」


警視総監もあきれ返る。


「近くのガソリンスタンドの監視カメラが、一部始終を捉えていました。」


そう言って、テレビで再生する。


「車種はベンツと思われますが、夜間な事と、戒厳令下による灯火管制の為に正確な人数なども把握できておりません。」


「それにしても、堂々と首都で迫撃砲を使うなんて。しかも、連絡員諸共電話ボックスを木端微塵にするなんて。」


「別に撃っちゃいけないって訳じゃない。ベトナム戦争じゃあ、子供がトイレからアメリカ軍戦車に向けて迫撃砲をぶっ放した話だってある。それに、湾岸戦争やイラク戦争でも砂漠に作られた塹壕から多国籍軍に対して迫撃砲を撃ったと言う記録だってあるしな。」


「だからって、それを首都で。」


「確かに、普通の人間ならそれで口を封じれるな。しかし、我々は内閣情報調査室のエージェントだ。仕事柄、暗殺等の危険にも晒されている。だから、これが支給されている。」


エージェントはカプセルのような物を警察に見せる。


「レントゲンなどにも映らず、また胃でも溶けることが無いように特殊加工されたカプセルだ。これを使えば、頭で憶えることが無いから、自白剤による自白強要でも出来ない。これは、死体から回収できている。」


カプセルをもう一つ見せる。そして、そこから何やら、超小型のチップを取り出す。


「これが、奴の死んだ原因。何らかの事情で携帯は使えず、仕方がないから公衆電話にて知らせようとした所を吹っ飛ばされたと考えるのが妥当だろう。」


「では、早速見てみましょう。」


パソコンに繋ぎ、チップからデータを読み込んだのだった。




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