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世界最強の航空機動部隊  作者: 橘花
平成 5
51/90

原子力発電所破壊を防げ

―堀株海水浴場―


「集合。」


ここに、新羅海軍所属の潜水艇ヨノ型で送られた武装工作員が現地に先に潜入させていた工作員と合流する。


「今は暗い、急いで森の中に移動する。」


国道229号線を走っている車に見つからない様に、森の中に武装工作員は隠れた。


「隊長、我々は帰還できません。ヨノ型じゃ、本国まで往復が出来ませんので。」


「任務に命を捧げろ。生きて帰る積りなど、毛頭ない。」


RPG7や、SPG9などの無反動砲。それにML20やM46などの重火砲まで、何回かに分けて日本国内に運び入れていた。PkやRPK、ツァスタバM76、98式小銃やⅤz61など、小規模な武装工作員にしては贅沢な装備品ばかりである。


「急いで展開しろ。夜明けと同時に攻撃開始だ。」


武装工作員はML20などの設置式火砲の準備を始めた。




―日本軍総司令部―


「海軍は未来から来た艦艇1隻を向かわせました。」


「たった、1隻だけか?」


東郷平八郎が北里に報告する。


「ええ。レールガンを装備しておりますし、横須賀で同型艦をご覧になられたでしょう。連射砲弾を一発一発確実に迎撃したレールガンの命中精度を。」


北里は、横須賀での演習でレールガンの命中精度に驚いた。連射砲全弾を迎撃され、残存護衛艦は一切手が出なかった。


「マザーと、それを補佐する軍人が居れば、大丈夫です。」


東郷は、堂々と答えた。



―レールガン搭載巡洋艦 笠井―


18000t級巡洋艦として真清が送って来た村雨級巡洋艦の1隻『笠井』が、陸軍支援の為に向かっていた。


『もう直ぐ、目標海域です。』


マザーが乗組員に伝える。


『速力を落とし、充電を開始します。』


レールガンを放つための電力を確保するため、今までは発電量と航行に使用する電力との差で生まれた余剰電力を利用して発電していたが、速力を落として一気に充電に掛かる。


「ズムウォルト級2番艦のマイケル・モンスーアから実験装備されたレールガンを、未来ではこんな多くの艦に搭載しているのか。」


「艦長、未来では軍艦だけではなく戦車にも搭載されているそうですよ。」


「全く、技術の進歩は止まらないのか。」


乗組員は、居ても飾りの様な存在でしか無かった。それほどまでに、未来では兵器の自動化が進められている。


「人間は、機械に仕事を奪われますね。」


「そんな未来は、私は望まんがね。」




「攻撃開始!!」


ML20から、手始めに武装工作員が原子炉目掛けて発砲する。


「当たれ。」


しかし、空中で爆発が起こる。


「くそ。信管が脆いのか?」


「ち、違います!。ちょ、超光速物体に撃ち落とされました。」


砲撃員は砲撃に集中するため、観測などは観測班と言う別の班が行う。その部隊が報告してくる。




『第一目標、全弾迎撃。』


マザーが報告する。


『続き、第二目標出現。・・・・迎撃完了。』


正確に砲弾を迎撃する。


『敵位置確認。位置を現地陸軍に報告しました。』


しかも、戦闘情報リンクシステムまで兼ね備えている。




―陸軍機甲師団―


「歩兵と共に敵殲滅に向かう。」


10式戦車と90式戦車が歩兵と共に進む。


「敵発見。」


陣地を作って攻撃してくる。


「右、無反動砲だ!!。」


しかし、SPG9から放たれた弾頭が90式戦車車体斜め右後方に命中。流石に、500mmの貫通能力を誇るSPG9には現代戦車でも後方装甲が絶えられる筈がない。


「各車散開だ!!。敵にケツを見せるな。」


戦車は散開し、歩兵援護の元に対戦車兵を片っ端から撃破する。


「カノン砲命中しました!!。10式戦車、1台が大破。」


カノン砲の水平発射で、10式戦車を行動不能に陥らせる。


「大破した戦車から戦車兵が降車。積んでいた小銃で応戦中。」


情報が混乱しない様に、戦闘情報リンクシステムをフル活用して戦う。現代戦はIT技術が物を言う戦いだと、新羅軍武装工作員は思い知らされた。


「無反動砲、大破した10式戦車に命中。破壊されました。」


大破していた10式戦車にSPG9を放って完全に破壊した。


「歩兵部隊、RPG7が直撃。9名が戦死しました。」




19式指揮通信車に座上する秋月中将は、


「海上に居る軍艦笠井に、支援砲撃を要請してくれ。」


「了解しました。」


直ぐに笠井に情報を伝え、支援要請を行う。




『支援要請承認。砲撃開始します。』


マザーが艦の全ての指揮権を有している。艦長と言っても、プログラムをチェックする程度の仕事しか、未来の兵器には存在しなかった。


レールガンが、送られてきた情報を元に、敵陣地に狙いを定める。


『砲撃開始。』


艦内には砲撃音が一切響かない静粛艦砲(サイレント・キャノン)と呼ばれている、技術を使用している為、砲音で位置を割り出すことが出来ない。しかも、完全なステルス重視。発見不可能な、軍艦である。



武装工作員は、何が何だか分からなかった。音速の2.3倍程の速度で飛来する見えない砲弾で、次々と陣地を破壊され、重砲も破壊される。



「降伏しましょう。」


「したいならしろ!!。どうせ、嬲り殺されるだけだ。」


新羅側は、降伏しようにも出来なかった。国よりも命を優先したとして、家族にも迷惑が掛かる。それが、新羅の国情であった。


「何としても目的を達成する。」


「しかし、重砲も破壊されました。」


「手榴弾を抱いてでも突撃する。その覚悟があって来たのだ。」


工作員らにとって不運なのが、その中に韓国軍だった人間も居る事だった。彼らは工作員としての訓練をまとも受けておらず、自分で自分の命を絶つ事がどうしても考えられなかった。





「敵は降伏しません。」


19式指揮通信車に情報が届く。


「已むをえんか。笠井に、T爆弾投下を命じてくれ。」


秋月中将はそう命じた。


「了解。」


これも、直ぐに伝わった。


(許してくれ。こんな、非人道兵器を使用する事を、許してくれ。)


後悔の念に駆られるが、命じた以上は仕方がない事だった。それに、これ以上の戦いは犠牲を到底許容できない範囲にまで引き延ばす可能性があったから、使用に踏み切った。


「部隊も、一時後退させろ。」



―笠井―


「F19戦闘機、発艦準備完了。」


ヘリ甲板に出されたF19戦闘機には燃料気化爆弾が搭載されている。


「発艦しました。」


ディーンドライブエンジン改を使って上昇し、その後に電磁力推進エンジンを使って飛行を開始する。


「無人戦闘機が発艦。目標に向かって飛行しています。」


戦闘指揮所に後部飛行甲板作業員が連絡を入れる。




「離れろ離れろ。」


日本陸軍が後退をする。そして数秒後、辺りは一瞬で2700℃に達した。あらゆる物が燃え、溶け、蒸発する。新羅軍も、一瞬で蒸発してしまった。


「すげー。」


有効範囲内の物は全て燃え、灰も殆ど残っていない。




「これが、非人道兵器を使用した人間が感じる、後悔と罪悪感か。」


秋月中将は灰になった一面を見渡して言う。


「中将、新羅軍の物と思しき遺品が。」


土に被って、運よく焼けるのを免れた、一枚の写真と帽子。写真は家族写真だった。帽子は、焼けて顔などが分からないが、父親が被っている。


「相手も、人間なのに。人間なのに、こんな事を。」


秋月中将は非人道的兵器の使用を決断した。そして、その責任を全て自分に当てる。その為に、際限のない罪悪感に蝕まれている。




5日後


―日本軍総司令部―


「秋月中将は、除隊願いを提出したそうですが。」


「そうか。彼は燃料気化爆弾の使用を決断してしまった人間なのだ。その後悔の念に陥っているのだろう。」


北里は秋月の事を思った。


「この戦争が終わるまで、謹慎程度がいいと思います。彼を除隊させるには惜しい人間です。」


「私もそう思います。」


両島奪還作戦で活躍した乃木が、ようやく帰還した。そして、北里に意見する。


「乃木大将。任務ご苦労様です。」


「いえいえ。私より、兵たちを労ってやってください。」


「分かりました。・・・確かに、秋月中将を除隊させるには惜しい話だったな。」


「はい。」


北里は話を元に戻す。


「乃木は、秋月中将を謹慎処分とまではいかず、訓練部隊の教官が良いかと思います。秋月中将は実戦指揮よりも用兵訓練の方が向いていると思います。」


「まあ、乃木大将がそう言うなら、教官に任命いましょう。」


秋月中将はその後、富士学校の特別顧問として着任した。彼は前線から離れたかった為、別に除隊したかったと言う訳では無かった。そして、彼は二度とあのような兵器の使用をしない様に、用兵訓練の徹底化を促していった。

燃料気化爆弾のアイデアをくださった方には申し訳ないのだが、一般的に燃料気化爆弾が非人道的兵器と言われている事だけは知っておいて貰いたいと思い、書きました。


それを使うと、常人には耐えられない後悔と罪悪感が襲ってきます。使えるのは、戦争相手を人間と思っていない某侵略国家の軍人ぐらいだろうね。日本人じゃあ、まず扱えないよ。


アイデアを下さった大事な読者ですので、何とかこの方面の話は避けたかったのですが、申し訳ありません。

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