トラック諸島
-トラック諸島-
「ここが、旧軍の一大泊地か。」
大和級2隻分の排水量を持つ東郷は艦隊の停泊している所より少し離れた位置に停泊した。
「艦長、通信科より連絡がありました。もうじき、本艦に2機の97式艦攻が着艦されるようです。」
「97式艦攻?」
林原は何故3座の機体が着艦されるのか疑問に思った。そして、暫くすると97式艦攻をレーダーに捉えた。
「着艦用フックを出してやれ。」
艦長の指示で、着艦用のフックが出る。そして、誘導用のシーホークが飛び立った。
「あれは?オートジャイロ?」
97式2機のパイロットは近づいてくる一機のシーホークを見つける。シーホークは旋回して発光信号にて
『我に続け。』
と合図を出した。97式のパイロットは大人しく誘導され、東郷の艦尾から進入した。着艦した97式からは驚くべき人物3人が降りてきた。
「あ、あなたは!!」
降りたのは連合艦隊司令長官の山本五十六と参謀長の宇垣纏、作戦参謀の黒島亀人であった。機体は格納庫へと収容し、パイロットは待機室へ、連合艦隊首脳陣は会議室へと案内した。
-資料室-
「艦長はできる限り太平洋戦争の資料を集めろと言ったけど、多すぎるよ。」
副長の尾上は資料庫から太平洋戦争に関する資料を集めていた。巨艦だけに資料庫も大きく、戦史関係の本は大量にあってどれがどれだか分からない状態であった。
「まさか、ネットが使えたりして。」
そう言って悪ふざけで尾上はパソコンを起動させ、インターネットを開いた。すると
「嘘だろ。」
繋がり、yahooが出来るのだ。
「馬鹿な。じゃあ、メールも。」
そう言ってメールボックスを開き、防衛省へと自分達の置かれている境遇を書いたメールを送った。すると、送ることが出来たのだ。
「冗談だよな。」
そう言って尾上は今まで集めた資料を持ち、会議室へと向かった。
-平成 防衛省-
「それで、行方不明になった東郷を含む第一空母打撃群の行方は分からんのかね?」
防衛大臣は幕僚等を集めて第一空母打撃群の行方不明について話し合っていた。
「はい。それが、日本海方面に行ったのは確かなのですが、台風に呑まれてその後から行方がわからないんです。」
そこへ、
「だ、大臣、大変です!!東郷から、東郷からメールが来ました!!」
「な、何!?」
会議をしていた幕僚を含めて、全員がメールが届いたというパソコンに釘付けになる。
「なになに、第一空母打撃群は原因不明の事態に陥り、太平洋戦争のミッドウェー海域に出現。海戦にて空母4隻を損失せずに終結し、現在はトラック諸島にて停泊中。」
「どういう事でしょう?」
「分からん。しかし、まずい事になった。もしこれが公になれば。」
「はい。国際問題どころではありません。」
「何とか、極秘に事を進めよう。私は総理にこの事を伝える。君は新たなメールが来ないか見ていてくれ。」
「分かりました。」
そう言って、防衛大臣の北里信幸は国会に向かった。
-昭和 トラック諸島-
「それで、我が国はこの戦争にどう抗おうとも勝てないと。」
「はい。山本長官ならご存知の通り、アメリカと日本の国力差は歴然です。」
「確かにそうだ。」
会議は難航していた。そもそも日本が勝つにはアメリカの国力を削ぐ戦略爆撃しかないのだが、日本からアメリカに飛べる航空機は存在しないのだ。
「どうしたものか。」
林原は悩む、そこへ、江田原は
「ハワイを取る。」
と言った。
「確かにハワイを取ることが出来れば勝てるかもしれないが、一体どうやって?」
「方法は富嶽と戦艦部隊の力を使います。」
「富嶽とは?」
「日本が考案した超長距離重爆撃機です。結局、敗戦がほぼ確定したような時期に計画が本格的に始まったので一機も造られませんでしたが、現在では我々の持つ技術を併用すれば可能です。」
「しかし、」
「我々が明日、横須賀に向けて出航します。そして、我々の持つ技術で工業力を発展させ、富嶽を量産します。」
「分かりました。では、宜しくお願いします。」
この後、山本との間で交渉。第一空母打撃群は連合艦隊とは独立して動く独立航空機動部隊として編成され、内地にてパイロットと艦載機の提供を確約した。