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世界最強の航空機動部隊  作者: 橘花
昭和 5
47/90

そうりゅうVSバッファロー 後編

―そうりゅう―


「敵の我慢比べで3時間か。」


海底に鎮座して3時間。じっとしていられるのも、そろそろ限界になる頃だった。


「ソナー、注意して聞けよ。」


「分かっております。」




―バッファロー―


「前に潜望鏡で確認できましたが、この時代にはえらく旧式の輸送船が存在しています。」


「分かっている。衛星が使えないんだ。つまり、ソ連が1957年に打ち上げたスプートニク1号すら宇宙に行っていない時代かもしれん。」


冷戦時代の宇宙開発では、ソ連とアメリカが対決していた。だが、宇宙開発ではソ連が一歩リードしていた。ドイツ人科学者をソ連は多く獲得していた為、リードすることが出来たのだ。


「太平洋戦争の最中だって言うんですか?」


「言い切れんが、船の国籍は日本だったのだろう?なら、可能性は高いよ。戦後の日本にそんな余裕は無い筈だし、戦前にしては少しおかしいからな。」


「とにかく、核の処理は艦長にお任せします。早急に考えてください。さっきから、嫌な予感がするので。」




―そうりゅう―


「中々、ボロを出しませんね。」


「ああ。有線通信できないか?上の対潜哨戒機に?。」


「分かりました。」


通信したいと言う意味の、艦内の重油を出す。重油は潜水艦の燃料に直接応用できないから、脱出時に使うように積んでいる。




「了解。ソナーを投下してもう一回、探知する。」


しかし、対潜哨戒機のパイロットは勘違いをしてソナーを射出してしまう。




「馬鹿野郎が。それじゃあ、捕捉できるが、こっちも見つかっちまう。」


そうりゅうの乗組員がそういった時、ソナーが探信音を放ってしまった。


「敵潜探!!。ほ、本艦の真横です!!。」


「何!?」



―バッファロー―


「!!。艦長、この海域に敵潜が!!。っと、言うか。本艦の真横に敵潜が!!」


「何だと!?」


両者が同時に相手の潜水艦を見つけた。


「音紋分析、そうりゅう型です。」


「海自の潜水艦がこの海域に用も無く居る筈がない。戦闘態勢に入れ!!」


バッファロー艦内は戦闘態勢に入る。


「魚雷を装填しろ!!全速前進。」



―そうりゅう―


「敵、魚雷発射管内に注水。」


「敵もやるきだ。後進急げ!!」


「敵は前に航行しています。」


勝った!!と艦長は思った。


「敵の推進音を魚雷に入力しろ。発射!!」


2本の魚雷が敵潜目掛けて発射された。



―バッファロー―


「そうりゅう、魚雷を発射!!」


「やはりか。こっちも魚雷発射だ!!」


バッファローも魚雷を発射する。




―そうりゅう―


「更に2本発射用意。言っておいた座標に魚雷を撃ち込め。」


「了解。」


更に2本。座標入力で魚雷を発射した。



「魚雷接近中。ロス級からの魚雷2本が、本艦に向けて来ます。」


発射後に、ソナー員が伝える。


「急速回頭。面舵一杯!!」


直ぐに移動を開始する。




―バッファロー―


「敵潜、魚雷を発射。」


「機関停止、タンク注水。」


バッファローの艦長は機関を停止させ、タンクに注水して潜航で回避を決断する。


「感2、いえ4。本艦に向けて来ます。」


「大丈夫だ。全て推進音を入力している筈だ。」




―そうりゅう―


「敵魚雷、真っ直ぐこちらに向かってきます!!。」


「き、機関停止!!急げ!!」


「だ、駄目です!!。敵魚雷、迷走せずに真っ直ぐこちらに向かってきます!!」


「対潜哨戒機に入電。『我、任務全ウセリ。最後マデ影鎖長官ニオ供出来無カッタ事ヲ悔ム。先ニ靖国ヘ行ッテオリマス。』と。」


直ぐさま、対潜哨戒機がこの入電を受け取る。そして、暗号化して軍令部などの関係各所に転電された。


「さようなら、日本。影鎖長官。来世で、またお会いできる事を願っております。」


艦長は覚悟を決める。乗組員も、全員同意した。


数秒後、魚雷はそうりゅうに直撃。艦首を破壊され、そのまま沈降。暫く沈み、圧潰した。



―バッファロー―


「敵潜が沈みました。」


「魚雷は?」


「2本、迷走して通過しました。残り2本はもう直ぐ通過。」


バッファローは安心しきっていた。


「あ!!。艦長、ぎょ、魚雷が魚雷が進路を変えて本艦に!!」


「何だと!!」


「残りの2本は音紋じゃない。座標による、無線誘導です。」


全員が慌てる。


「き、機関緊急始動!!回避!!。」


「だ、駄目です。間に合いません!!。」


バッファローにも、そうりゅうの遺産。2本の魚雷が艦首に命中。そのまま、そうりゅうと同じく圧潰した。




―東郷―


「そうりゅうが沈没。乗組員、全員戦死・・・・か。」


林原は東郷にて報告を聞く。


「惜しい連中を失った。艦は金があれば作れるが、乗組員はそうそう用意できない。」


「ええ。特に、そうりゅうの乗組員は最高の練度を誇っていた。彼らの様な人間はそうそう育つものじゃありません。」


尾上も、そうりゅうの損失以上の損失を感じ取る。


「家族には、どう説明したらいいだろうか?」


「中国との交戦で、最後まで任務を全うした。っとしか言えませんね。」


「だな。」


昭和にも、平成の中国が宣戦布告した報告が届いていた。


「5月、17日。そうりゅう、パラオ沖にて沈没・・・か。」


「ええ。我々としては初の大きな損失です。みかさは元々、アメリカから購入したので問題ありませんが。」


「許してくれよ。我々が無理してでも留まっておけば、沈まずに済んだかもしれないのに。」


「艦長。」


「尾上君。暫く、一人にさせてくれ。」


「はい。では、失礼します。」


尾上は、そう言って東郷の艦橋を後にする。




―ワスプ―


「いよいよ、空母として初の4発機発艦だ。」


ワスプの艦上には、片翼を海に出したB17が待機している。武装なども全て取っ払い、爆弾倉を開放する装置なども取っ払われている。勿論、爆撃照準儀も。その他、レーダーなども取っ払い、無線も受信しか出来ない軽量の物を積んだ。


「急げ急げ!!。グズグズしている暇はないぞ。」


甲板では、作業員らが慌てて作業をしている。試作されたばかりのロケット・ブースター。っと言うよりもジェット・ブースターだが。それを取り付ける。


「予備の燃料タンクも積んでおきました。ハワイまでは、ギリギリです。風向きによってはたどり着けない可能性もありますよ。」


「ハワイ周辺に潜水艦などを待機させたまえ。」


マッカーサーは甲板で作業をしている兵らを見ながら言う。


「ようマッカーサー。お前さんは元気そうで何よりだよ。王国を追い出されたのに王様。」


ハルゼーは会うなり、嫌味を言う。


「ハルゼー、お前こそ自分の城をみすみす敵に明け渡したそうじゃないか。え?城主さんよ。」


「言ってくれるじゃないか王様。」


「ふっ、城主さん。」


二人の間で火花が散る。


「は、ハルゼー提督。そ、その辺に。」


「マッカーサー大将も、その辺で。」


二人の副官は間に入って止める。


「そうだな。今日は仲良く脱出するんだ。しかし、皮肉だな。フィリピンから逃げる時も、こうしてB-17に乗ったんだな。」


「っへ。今度はオーストラリアから脱出か。だが、この脱出はある意味では歴史に残るぜ。4発機、世界で唯一発艦に成功ってな。」


B-17のエンジンが暖まった所で搭乗する。機長は、経験豊富なドゥーリトル准将が務める。


「それじゃあ、行きますよ。」


ドゥーリトルは各部をチェックし、推力を上げる。


「ロケットブースター点火!!」


一瞬で推進力が増大し、機体は勢いよく滑走する。


「速度・・170・・・180。今だ!!」


操縦桿を引く。甲板先で多少沈み込んだが、無事に大空へ羽ばたいた。


「よ~し、上がりました。」


B17にはハルゼーやマッカーサー、各参謀。それに優秀なパイロットが搭乗している。


「ワスプとも、お別れだな。」


その時、ワスプの左舷から水柱が何本も上がる。



―ワスプ―


「魚雷攻撃を受けました。」


「くそ。護衛艦が居ないからって、いい気になりやがって。」


単艦で空母が行動する事は、まずあり得ないが、殆ど艦艇をハワイに移動させたため、護衛できる艦が居なかったのだ。


「だが、どうせ本艦は既に失ってもいい艦。総員、退艦!!」



―ずいりゅう―


「逃がしましたね。」


B-17の空母からの発艦を潜望鏡と、それに繋いだビデオ録画機が捉えていた。


「ワスプは長くは持たんが、まさかB-17を発艦させるとは。史実でも、あったか?」


「いえ。私たちの知る限りではありません。」


「じゃあ、この映像はもの凄く貴重だぞ。」


「分かっておりますよ。」


ワスプを沈めたずいりゅうは急いで海域を離脱した。

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