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世界最強の航空機動部隊  作者: 橘花
平成 4
43/90

両諸島奪還作戦 後編

―南沙諸島―


「西沙諸島から連絡が途絶しましました。」


フィリピン軍の上陸を受け、反撃を開始した中国軍に西沙諸島からの通信途絶。


「落ちた模様です。」


南沙諸島守備隊総司令官の()衛明(ウェイミン)中将は部下からの報告を聞く。


「流石に、ここも危ないか。」


冷静に判断をする。




―空中空母 伊弉諾尊―


「本土から、フィリピン経由で輸送機が向かっております。降下体制も完了し、フィリピン軍の掩護可能との事です。」


西沙諸島から一部の部隊を引き上げ、フィリピン軍の掩護に向かう日本空中艦隊は、増援部隊を乗せた輸送機からの連絡を受け取る。


「分かりました。それでは、攻撃を開始しなさい。」


乃木は静かにそう命じた。それと同時に、空中戦艦群から砲音が轟く。


「フィリピン軍から、支援に感謝すると言う連絡です。」


「そうですか。降下部隊も降下させなさい。」


乃木はそう命じた。




―クイーン・エリザベス―


「艦載機、発艦用意完了。」


何と、インド海軍が南シナ海まで出っ張って来たのだ。


「改装を間に合わせて正解だったな。イギリス海軍から、大金叩いて買ったんだ。戦力化するってのが、普通だろう。」


イギリスは日本がFⅩでタイフーンを採用してくれた為、財政難から脱出できた。しかし、F35の戦力化も終了し、ヘリしか搭載できなかったクイーン・エリザベスの必要性が薄れ、プリンス・オブ・ウェールズの就役に伴ってインド海軍に売却したのだ。それを、インド海軍が徹底改装。空母としての戦力化に成功した。


「よし、日本を含めた中国包囲網各国に対し打電。『我、これより中国包囲網作戦を開始す。各国政府も順次計画の始動を要請する。』と。」


「了解。」


中国包囲網は中国が日本に宣戦布告した時にアメリカが抜けた。しかし、代わりに日本や台湾などが参加。これで、参加国はインド・東南アジア諸国連合(ASEAN)・台湾・日本・バングラデシュ・ブータン・中東連合(MEC)・カザフスタン・モンゴルとなった。


カザフスタンとバングラデシュは親中であったが、最近の中国の覇権主義に危機感を持ち、対中包囲網に参加したのだ。


「日本も、これで楽になるだろう。それに、この作戦は本艦が『クイーン・エリザベス』でいる最後の作戦だ。」


飛び立っていくハリアーⅡやミグ29kを艦橋で見ながら言う。この作戦が終了後、クイーン・エリザベスはアクバル1世に改名予定だった。


アクバル1世。ムガル帝国第3君主で、ムガル帝国を真の帝国と呼ぶに相応しい国家に発展させた人物。



―日本軍司令部―


降下地点に司令部を敷設した時に、インドから連絡が入った。


「そうか。インドもやったか。」


司令部では、歓喜に満ちている。唯一、乃木だけが落ち着いている。


「乃木司令、インドが空母3隻で掩護してくれます。我々の空中艦隊と合わせると、かなりの戦力になります。」


インドは、空母『クイーン・エリザベス』の他に、『ヴィクラマーディティヤ』、新鋭空母『ヴィクラント』がこの作戦に投入された。


「分かりました。進撃させなさい。」


乃木は、そう落ち着いて命令を発した。




「インドが中国に宣戦布告したそうだ。」


歩兵と共に進撃する陸鳳乗員は進撃を止めずに無線で各隊員に呼びかける。


「そうか。遂に対中包囲網が始動したのか。」


「ああ。続々と各国が中国に対して宣戦布告をしているそうだ。」


「そりゃ、盛大な事で。」


超高熱爆発レーザーで96式戦車を撃破した。話しながらでも、コンピューター制御で補助してくれるため、乗員は余裕である。


「WZ12が来ます。」


「砲塔上部の拡散レーザーライフルで迎撃しろ。」


コンピューターに入力し、レーザーライフルを発射する。こちらも、火を噴いて墜落してきた。


「上空、インド海軍航空部隊通過。」


上空をハリアーⅡやミグ29Kが通過し、司令部を攻撃している。


「掩護するぞ。」


陸鳳も横隊になって攻撃を開始する。歩兵も、内部に突入しようと門正面で防戦を張る中国軍と銃撃戦になる。




「突入できん。」


弾幕を張る中国軍が日本陸軍の侵入を許さなかった。


「くそ。こっちにゃ戦車が無い。向こうも戦車が無いが、突破する火力が足りない。」


そう思っていると、ハリアーⅡが門で防戦をしている歩兵に対してロケット弾を撃ち込んでくれた。


「あ、ありがてえ。」


それを見逃さず、一気に内部に突入。




「攻撃、やめ。」


内部に突入したのを確認し、陸鳳は攻撃をやめる。


「周辺を確保する。」


各車散開し、周辺の安全確保に移った。



―南沙諸島 中国軍司令部―


「内部もか。」


内部でも激しい銃撃戦が起こる。


「内部じゃあ、掩護は期待できん。」


そう言った時、敵の反対側にフィリピン海兵隊のコマンドウが突入。敵に対して車体上部の20mm機関砲をお見舞いする。


「ははは。そうか、フィリピンは装甲車なども一緒に揚陸してたのか。」




「もう、ここは持ちません。」


中国軍は負けを認める。


「そうだな。元々、本土から補給が望めないんだよ。ここは。空は封鎖され、海上はベトナム軍の水雷艇やフィリピン軍の魚雷艇に襲撃されて輸送船は到着しない。」


黎中将は状況が全て、自分たちに不利な事を悟る。


「お前らは降伏しろ。」


「司令は?」


「俺か?俺は、まだまだ降伏できんよ。今も。そして、これからも。」


銃を取り出しながら、黎中将はそう言う。


「でしたら、私も。」


「ならん。お前らは降伏しろ。」


こめかみに銃を突きつけながらそう言う。


「司令!。」


そして、引き金を引き、黎中将は戦闘中の死亡となった。この後、中国軍は黎中将の言うとおりに降伏。両諸島はベトナムとフィリピンに返還された。



―空中空母 伊弉諾尊―


「中々、南沙諸島の司令官は人望のある司令官だったそうじゃないか。」


帰路に着く日本空中艦隊。その旗艦の艦橋に居る乃木は部下等にそう言う。


「はい。部下には降伏を促し、自分は自決。ここで、部下は司令を失ったことでより一層戦う決心をするのが軍ですが、彼らは司令の命令を汚名を着てでも実行したそうです。」


「軍人は、負けを認めるのが難しい商売でな。戦うのは簡単だが、負けを認めるのはそうそう司令官のできるもんでもない。そして、負けを決断した司令官に最後まで従う部下も稀だ。」


「はい。そう言う意味では守っていた黎中将は人望があったと言えます。」


「惜しい人を、中国は失いましたね。」


乃木はそう、静かに言った。


「閣下。閣下が明治天皇陛下の崩御なさった時に自刃した時、どういう気持ちでしたか?」


「もう忘れました。ただ、明治の終幕と共に、私の明治で殺した大勢の部下への償いのつもりで自刃しました。」


乃木大将は、特に203高地での大勢の部下の戦死を、自分が殺してしまったかのように振る舞い、それを後年まで後悔の念に駆られていた。


「また、この世に生を貰ったので、今度は部下を出来る限り失わない戦略を立てたいですよ。」


この時、部下等にはまるで乃木が、本当に生きているかのように感じたと言う。

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