奇襲
-赤城-
「あれが、未来から来たという機動部隊のオートジャイロか。」
南雲は草鹿や源田に言われただけでは納得できなかったが、実際に本物を見ると嫌でも納得せざるを得なかった。
「長官、オートジャイロの爆装完了です。」
「分かった、直ちに出撃許可を出せ。」
6機のシーホーク(3機爆装、3機雷装)と陸上自衛隊から導入されたコブラが4機(全機ロケットポッドや機関砲を装備。)飛び立った。
「60年後の左翼さんが聞いたら怒りだすだろうぜ。」
シーホークのパイロットはそんな事を言う。
「気にするな。どうせ口先だけの平和を語る奴だ。」
機長は先ほど言ったパイロットに答える。
-エンタープライズ-
「日本の機動部隊が予想位置にいないだと?」
スプルーアンスは偵察隊の報告を聞いて疑問に思った。既に暗号解読で日本機動部隊の大よその位置は把握している。あとは発見して攻撃隊を飛ばせばいいのだが、その発見が出来なかったのだ。
「ミッドウェーの偵察隊は?」
「それが、彼らも同じような事を返してきております。」
「そうか。」
スプルーアンスは艦橋から外の海を見る。
(日本の機動部隊は一体何処にいるんだ?)
-東郷-
「アメリカは我々の接近に気づいておりません。攻撃は成功です。」
江田原は林原に報告する。
「分かった。巡航ミサイルの発射準備をしておけ。」
「了解。」
江田原は艦内マイクの所に行き、CICに巡航ミサイルの発射準備をしておくよう伝える。
-エンタープライズ-
「不明機接近!!」
前方の駆逐艦から不明機接近中という報告が届けられる。
「対空戦闘!!命令あるまでは発砲を禁ずる。」
エンタープライズとホーネットは取り舵を切り、ヨークタウンは面舵を切る。
「見えましたね。」
「ああ。全機へ!!敵空母の弱点は舷側にある解放式格納庫だ。」
ヨークタウン級は解放式格納庫を採用しており、それは火災が発生したときなどにそこ解放されている部分から魚雷や爆弾を投棄することで被害を最小限に押さえ込もうというものである。
「ロケット弾発射!!」
コブラがまずロケット弾を各空母の飛行甲板に待機している艦載機に攻撃を加え、破壊する。
「魚雷投下!!」
続いて3機のシーホークから魚雷を3本投下し、黒煙によって左舷側が見えず、全弾魚雷命中を負ってしまった。
「しまった!!」
だが、遅かった。火災によって魚雷等を投棄しようと投棄口に運んでいた所を
「喰らえ!!」
止めの爆装したシーホークがそれぞれの空母に250kg爆弾2個を解放されている場所から艦内部へとうまい具合に投げ入れる。それにより、空母の内部にて爆発。次々と魚雷や爆弾に誘爆を起こし、艦は火に包まれた。
「総員退艦!!」
史実と逆転現象が発生。突然の奇襲でアメリカ空母は一瞬のうちに継戦能力を失い、浸水も発生する。
「やりましたね。」
完全な奇襲と、ヘリの不規則な機動に慣れないアメリカ軍は満足な反撃を行うことができず、多少の被弾はあるが撃墜された機体はいなかった。
「敵の空母はあれで使い物にならないでしょう。」
だが、沈んだのはなんと史実でも沈没したヨークタウンただ一隻であり、他は何とか護衛の巡洋艦に曳航されて真珠湾へと帰還することが出来た。
-赤城-
「空母東郷より、敵機動部隊戦闘不能の電報が入りました。」
「そうか。」
南雲は安堵の溜め息をついた。これで、自分は心置きなくミッドウェーを攻撃することができる。
「よし!!ミッドウェーに向けて攻撃隊を出撃させろ。」
命令を受け、第一次攻撃隊が機動部隊を離れた。
-ミッドウェー諸島-
「敵機襲来!!」
味方の機動部隊が撤退してしまったことから、守備隊の士気は完全に下がっていた。命中率は訓練よりも悪かった。
「撃て!!」
対空機銃や対空砲を撃ち続けるが、なかなか有効弾が与えられないでいる。
「投下!!」
他の機体に目を捉われていた対空砲は別の方角から接近する急降下爆撃機に気がつかず、爆弾を受けて戦死する。
「ワイルドキャットだな。」
護衛の零戦隊も練度でも性能でも勝るワイルドキャット相手に次々と戦果を残していった。
-東郷-
「攻撃隊が帰還します。」
CICに居る尾上から連絡が入る。
「よし、巡航ミサイル発射!!」
左舷に装備されている巡航ミサイル発射機から2本の巡航ミサイルが放たれる。それは、飛行場を破壊するためにデータを入力され、飛行している。
「赤城より発光信号『本作戦の中止命令を受信。貴艦隊は我に続き、トラック諸島へ寄港せよ』。」
甲板見張り員が赤城からの発光信号の内容を林原に伝える。
「中止だって?巡航ミサイルは?」
「着弾まで30秒です。」
「このままにしておけ。」
30秒後、ミッドウェーの二つの飛行場に巡航ミサイルが一発ずつ命中。暫くは使用不能になるほどの大穴が開いた。