明らかになっていく、過去と未来
―首相官邸―
「沖縄戦は何とか終結させられました。」
北里は沖縄戦の終結を伝えに来た。
「そうか。」
「しかし、どうしてそんなに終結を急いだのですか?確かに、私としても早く終結させたかったのは事実ですが、あまりにも突発過ぎます。」
西澤はそれを聞き、コンピューターを操作する。すると、パネルに一枚の写真が映し出された。
「これが、誰だか分かるかね?」
「え、ええ。中国共産党の実務官であり、現在の中国軍事作戦総参謀の賈詡文和。」
「一緒に映っているのも分かるな?」
「は、はい。朝鮮労働党中央委員会総書記であり、国家最高指導者の金正日。そして、人民武力部長の金斗益」
「そうだ。今朝方、送られてきた。北に潜入させている内閣情報部から、直通でな。」
「しかし、こんな時期に何で?」
「これを見ればわかる。」
再び西澤はコンピューターを操作する。すると、もう一枚写真が写される。
「これも今朝だが、北にある、ある施設を映した物だ。」
「ある施設と言うと。」
「そうだ。ミサイル基地だ。舞水端里にあるテポドン発射基地を映した衛星画像だ。神風は、高性能だよ。本当に。これを見て、直ぐにミサイルが発射可能だと判断できた。」
西澤は、ロケット用燃料部を指し棒で指しながら言う。
「北が、攻撃を掛ける可能性が出てきた。こいつは、私も少々予想外である。」
「では、どうしろと言うんですか?」
『貴方方は、もう少し攻撃精神が必要ですね。』
「な!?」
『尤も、こちらの世界では、これで通っているようですがね。』
水戸が現れる。
『今日には残りの兵器も到着します。ついでに、サービスもしておきました。』
「サービス?」
西澤も、最後の言葉には疑問を示した。
『こちらの世界で言うニミッツ改原子力空母を6隻と護衛艦。また、シーウルフ改原子力潜水艦も100隻。例によって、全て無人ロボット艦艇です。』
「また、そんな大量に。」
最近、西澤も彼らの世界の日本はどんなに軍拡が進んでいるのか疑問に思い始めた。
『どれも、オリジナルよりも格段に性能が上です。シーウルフと比べ物にならない程の静粛も発揮します。それに、他の性能も向上しております。ニミッツも、原子炉は我々の世界のを使っており、速力も40ノットを越えております。それに付いて来るため、護衛艦も40ノット越え。また、格納庫も居住区を減らしている為、格納庫を拡大。搭載機も3~5割増しです。』
「性能が良い事で。」
北里は茶化すように言う。
『これは、私どもの世界の陛下が承認して下さりました。しかし、この掩護はあくまでも犠牲を少なくするためです。決して、戦争拡大の為に行っているのではありません。陛下も、平和をお望みです。』
「分かっております水戸さん。しかし、お聞きしたい。どうして、我々を助けるのです?貴方方が同じ日本人で、そしてそちらの陛下の言う通りに助けているだけとは思えません。何か、貴方の独自の考えでも行っているように見えます。」
『私の、いえ。私たちの世界は。貴方方の助けている、昭和の世界と繋がっているんです。』
「え?」
『元々、貴方方の助けている昭和と我々の、貴方方にとって未来に値する我々の世界が繋がっている事は、私たちの世界ではほぼ周知なのです。しかし、どう言う訳か、最近になって別の次元が存在し始めている事を知ったのです。それが、この世界です。』
「どういう事かね?」
『原因は未だ不明です。しかし、突然アメリカとの戦争で負けた、別の日本。即ち、この世界が出現したんです。』
「では、貴方方の世界。つまり、昭和のアメリカとの戦争は一応、勝利、若しくは講和できたんですね?」
『はい。その後、日本は独逸に宣戦を布告。終結間際に、ドイツでは軍事クーデターが発生してヒトラーは死亡。それにより、ドイツの優れた科学技術は世界に解き放たれた。これが、我々の世界で科学が進んでいる理由です。』
「では、この世界はそちらの世界から見ると異常だと?」
『空間的に見れば、異常だと言えます。しかし、生まれた以上は尽くして頂きたい。そして、同じ日本が他国からの侵略を受けているのに、何もしなかった政府を見て、我々はこの世界を見捨てようとしていた。』
一旦、水戸は間を置いた。
『しかし、貴方と、先代の人たちが国の立て直しを図った。だから、期待した。そして、その最中に他国からの侵略を受けた。だから、私は陛下に直訴した。この世界の日本を救うべきだと。』
「では、あのタイムホールは?」
『別に、どの時代でも良かった。実戦を積ませ、士気も高めてから中国と対峙させる予定だった。しかし、開戦が予想よりも早かったから、増援を提供する事にした。これが、貴方方に兵器を提供する訳です。』
「なるほど。それで、貴方は本当は何者かね?時空管理省調査員と言うのは事実だろうが、水戸と言うのは本名ではないのだろう?」
『はい。そろそろ、教えてもいいでしょう。私の本当の名は、真清。日の本軍需省大臣です。』
「真清大臣。我々、日本に救いの手を差し伸べて頂き、感謝します。ぜひ、そちらの世界の日本の陛下に会い、陛下ご自身にも直接お礼を述べたい。」
『それは、残念ながら。しかし、私が代理で伝えておきましょう。それと、くれぐれも忘れないで下さいよ。我々の援助は、あくまでも犠牲を少なくさせる為だと言う事を。』
「分かっております。真清さん。」
真清は元の世界に戻った。
「さて、聞いた通りだ国防大臣。これから、忙しくなるぞ。」
「はい。西澤総理。」
「まずは、外務省を通じて中華民国と連絡を取らなくては。君は、西沙諸島と南沙諸島を攻撃する計画を練りたまえ。」
「分かりました。」
北里は、日本軍総司令部へ戻って行った。
昼、真清の言葉通りに空中空母『伊弉諾尊』と『伊弉冉尊』。空中戦艦『天照大神』、『月讀尊』、『素戔嗚尊』が十勝基地に降り立った。また、横浜海軍基地にはニミッツ改級が出現。艦名を『赤城』、『加賀』、『蒼龍』、『飛龍』、『翔鶴』、『瑞鶴』と命名。また、各海軍基地には潜水艦が出現し、『伊〇〇』と名付けられ、〇は1~100番まで付けられることになった。