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世界最強の航空機動部隊  作者: 橘花
昭和 3
32/90

セイロン島空襲作戦 『スリランカの嵐作戦』 

―東郷―


「いいか、通過様にやるぞ。」


セイロン島、トリンコマリ英海軍基地を通過様に空襲する為、飛行甲板に艦載機が並べられた。


「飛行場を含め、攻撃目標は軍事施設のみ。トリンコマリには駆逐艦などの小型艦船しか存在しないから存分に破壊しろ。」


林原は指揮官訓示で搭乗員たちに伝える。


「では、出撃。思う存分、破壊しつくせ。」


もはや、林原は平成の自衛官を捨てた。戦争が、昭和に来た自衛官を変えていったのだ。




―セイロン島 トリンコマリ英海軍基地―


「日本軍が未だに、侵攻してきた陸軍を支援してベンガル湾に留まっている。」


トリンコマリ英海軍基地所属の駆逐艦は、せめて一矢報いれるかもしれないとして駆逐艦の出港準備をしていた。しかし、何分突然の攻撃で弾薬などの積み込みが出来ておらず、作業は手間取っていた。


「突然の攻撃でしたので、全く準備が出来ておりません。兵らも、ここは楽園だと勘違いしていて、士気も低いです。」


「構わん。出せる戦闘艦は全て出す。英印軍も一部で反乱が起き、我々の陸軍は大混乱に陥っているのだ。」


日本軍やビルマ義勇軍、インド国民軍がインドに侵攻したと聞き、英印軍はイギリス軍へ反乱を各地で起こし始め、インド国内が一気に独立へと向かっているのだった。


「か、艦長、あれを!?」


「な!?」


見ると、日の丸を付けた航空機が艦長の目に飛び込む。


「馬鹿な!!今、日本軍は侵攻してきた部隊の支援をしている筈。どうして、こんな所に?」




「こちら、隊長機。目標上空へ到達。爆撃完了後、一気に離脱し、母艦を目指す。」


宮部中佐が、各機へ指示を出す。攻撃は一回きり。この一撃で、英国海軍基地を無力化しなくては、後は無い。


「爆撃開始。」


水平爆撃隊は港湾設備へ、急降下爆撃隊は敵艦船へ一斉に爆弾を投下する。


「沈めなくてもいい。戦闘不能にするんだ。」


駆逐艦など、敵艦船は沈める必要が無かった。ただ、出撃できないような損害を負わせれば十分だった。


「目標へ命中。炎上しています。」


爆撃手の言葉を聞き、操縦桿を握る宮部は安堵する。


「電信員、母艦へ打電。『誘導電波の発信を要請する。』と。」




―東郷―


「誘導電波の発信要請です。」


尾上がCICから艦内マイクで艦橋へ連絡する。


「誘導電波か。少々危険だな。」


誘導電波は味方だけでなく、敵まで引き寄せる事になる。万が一、敵機が離陸していたら、攻撃を受ける事になる。


「艦長、我々の防空能力をお忘れですか?我々はイージス艦を8隻も従え、おまけに本艦自身もイージスシステムを搭載しています。そして、各艦の戦闘情報統合システムや連携システムをフル活用すれば敵機など、恐れる事はありません。」


江田原の言うとおり、独立航空機動部隊に所属する艦は全てイージス艦。その能力をフル活用すれば音速機の撃墜可能な装備を持つ各艦にとって、この時代の航空機の撃墜は蚊を殺すよりも簡単だった。


「分かった。誘導電波を出す。」


航空管制室に誘導電波を出すように指示し、林原は各艦の対空警戒を最大レベルまで引き上げた。




「誘導電波確認、もう少しですね。案外、近くまで来ていた様です。」


航法士が宮部へ言う。


「そうか。」




―東郷―


「不味いな。」


CICに居る尾上の目に、日本の攻撃隊の後方に存在する光点を確認する。


「艦橋へ、日本編隊後方にイギリス空軍機。機種はスピットファイア、ハリケーン、モスキートにランカスターの戦爆連合100。」




「各艦に伝達。スタンダードミサイル改を放つ。」


林原は直ぐに各艦に命令を伝えた。


「一斉対空ミサイル発射。久しぶりに見ますよ。艦長。」


江田原は窓に見えるイージス艦各艦を注視する。


「私もだよ。航海長。」


各艦がロックしたと言う報告が届き。


「発射。」




「各機、日本軍機の後へ付いていけ。」


ランカスターは漸くインドの方にも回ってきたイギリス空軍の最新鋭4発重爆である。ハリフォックスしか装備していなかったインド方面空軍にとって1942年末になってようやく配備されたことに感謝している。


「下方に居るボーフォートから、敵艦から発煙があったそうです。」


「発煙?」


「機長、あれを。」


副操縦士が指さした先を見ると。


「あれは?」


スタンダードミサイル改が各機へ向かって飛翔している所だった。


「まずい!!回避だ!!」


直ぐに攻撃だと分かった機長は機体を旋回させようとするが、大型機は直ぐに操縦が効くわけではなく、スタンダードミサイル改で撃墜された。他の機も、同様に攻撃を受けて撃墜された。



「遣られたな。」


レーダーに映らない海面ギリギリを飛行するボーフォートは落下してくる破片を見て、爆撃隊が遣られたと悟った。


「こうなったら、俺達だけでも遣らなければならない。」


低空を侵入するボーフォートは気づかれずに侵入していった。




―はつせ―


「不味いな。敵機が低空で侵入している。」


レーダーに漸く映ったはつせは、ボーフォートの低空侵入に漸く気付く。


「撃墜するぞ。」


はつせは、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦として日本へ貸与された時に改名した艦だった。そして、貸与に当ってイージスシステムの更新などを行った。そして、前方主砲を127mm連射砲に換装している。


「撃ち方、用意。」


ボーフォートを捉えたはつせは、127mm連射砲の発射用意に入る。


「撃ち方はじめ。」


イージスシステムで捉えた敵機を次々に撃墜する。


「残存機、減少中。」


光点が次々に消えていく。


「敵機、死角の腹へ向けて2機が侵入。魚雷を投下できる状態です。」


「何!?」


予想外だった。まさか、敵機がこちらに狙いを変えるなんて。




「よくも、仲間を。」


魚雷を各機1本、計2本がはつせの艦腹へ向かって航行する。




「すれ違いざまにファランクスで撃墜しろ。面舵一杯!!。」


しかし、魚雷2本中1本が艦の中央に命中した。


「不味い!!そこは、ミサイルセルが。」


艦長の予想通り、次の瞬間には残ったミサイルに誘爆。中央で大爆発を起こし、機関も停止する。


「機関、停止しました。火災も発生。電気系統喪失でスプリンクラー作動しません。水圧も低下し、自力での消火は不可能。」


「総員、退艦。」


艦齢40近い為、喪失しても大して損害にはならない。イージス艦と言えど、沈む事がはっきりした事だけでも収穫とした。


「艦長、残るなんて馬鹿な考えだけはやめて下さい。」


「分かっている。私も退艦するよ。」


船乗りとして、本音を言えば艦長は艦に残りたかった。しかし、旧軍の学びから、現在では全員退艦を徹底している。その為、船が沈む様な事があっても、全員退艦を行うのが基本となっている。




―東郷―


「はつせが、爆沈しました。現在、みかさが救助作業中。」


艦載機の収容を終えた東郷の艦橋に衝撃の報告が届く。


「はつせが、爆沈だと?」


「はい。これで、イージス艦も万能でない事がハッキリしました。」


尾上は、林原に報告する。


「皮肉だな。対空能力は世界一のイージス艦が、蚊も当然と侮っていた第二次大戦機に撃沈されるとは。」


「ええ。私も、認識が甘かったと反省しております。」


「いいよ、航海長。指示したのは私だ。副長、みかさ艦長に通信回路を開いてくれ。」


「分かりました。」


通信を繋ぎ、みかさ艦長を出す。



「青木艦長。はつせを、艦容を分からん程度に破壊しろ。」


『え?どうしてです?』


「残したら、我々の未来に無用な誤解を招くかもしれん。しかも、艦名は『はつせ』と書いてしまっている。残したら、色々と政治問題にもなりかねない。」


『りょ、了解しました。』




―みかさ―


「主砲、発射用意。」


主砲をはつせに向ける。


「撃ち方はじめ。」


連射砲を撃ち続け、はつせに残っている弾薬へ上手く引火させ、艦全体図が分からない程度にまで破壊することが出来た。


「総員、はつせに敬礼。」


甲板に並ぶ、助けられたはつせ乗員を含め、全員が沈み行くはつせに敬礼を送る。




―東郷―


「もうじき、アラビア海に入る。それでは、本作戦最大の要、ボンベイ空襲を完了させようではないか。」


林原はアラビア海へ進攻したことを実感するのだった。日本海軍にとって、未知の領域へ入った事を感じるのだった。

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