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世界最強の航空機動部隊  作者: 橘花
昭和 3
30/90

ソロモン航空戦

―ガダルカナル―


「今日も、出撃ですか。」


ガダルカナルでは、連日の様に陸攻と戦闘機がポートモレスビーなどの飛行場と、オーストラリアへ向かう輸送船や潜水艦を攻撃し、戦果を挙げている。


「軍令部からは、航空隊の一部をビルマ方面へ移動させ始めているし、主戦場は南方から南西へ移ったか。」


川口少将は島崎一佐の方を向いて言った。


「ええ。恐らく今度の作戦の目標はインドでしょう。シンガポールには自由インド仮政府なる新インド政府が設立されました。これは、我々の知る限りではもう少し後に設立される予定なので。」


「では、本土の関心はインドの方へ移ったと?」


「はい。それに、インドが解放されればイギリスはアジアの植民地帝国の放棄を意味する。豪州も、そうなれば独立以外の道が断たれるのだ。」


「では、インドが解放されればこの航空攻撃も終了と。」


「ええ。アメリカを本格的に攻撃する事となります。」




攻撃隊は、一直線にポートモレスビーの飛行場を目指して飛行していた。ポートモレスビーは最近になってイギリス最新鋭機のスピットファイアーが配備され始め、それと同時に双発爆撃機や四発爆撃機が増派され、航空戦力としてはかなりの規模になっている。


「いいか!、先導隊の目標は滑走路だ。それを破壊次第、敵航空機を攻撃しろ。戦闘機隊は敵機が上がれば迎撃、上がらなければ機銃掃射で掩護だ。」


先導する一式陸攻4機の内の隊長機から命令が出る。


「各機、これより電探探知を避けて低空で侵入する。遅れるな。」


隊長機が降下を始め、次々に後続機が続く。今回は完全な奇襲によって敵航空戦力を壊滅させたかった為、ばら撒き爆撃よりも低空での精密爆撃を選んだ。


「新型エンジンの調子も良好。」


各機には、平成から齎された技術をフルに活用してエンジンをチューンし、しかも平成の高性能ガソリンも満載している。性能的には2割ほど増しているのだ。


「こちら隊長機。後続機、聞こえるか?」


『はい。聞こえます。』


「もうじき見えてくる。無線の傍受を受けない為、これ以上の連絡は敵地上空で行う。上手く追いかけてこいよ。」


そう言って各機が無線封鎖を行う。後は、隊長機が感知している敵のレーダー波と無線波を頼りに誘導されるだけとなった。





―ポートモレスビー 英国空軍飛行場―


「ジャップの奴、最近はオーストラリアへ向かう輸送船や潜水艦を沈めているらしいぜ。」


「ああ。お陰で、今月は食料不足に悩まされているらしい。」


飛行場内でも、輸送船や潜水艦の被害は聞いていた。


「このままじゃあ、オーストラリアが物資不足になっちまうよ。」


「そうだな。お!、あれは新しい増派か?」


一人が編隊を組んで低空を飛ぶ航空隊を見つける。


「おかしいな。そんな予定、聞いてないぞ。」


すると、上空から一機が急降下してくる。


「あれは、増派じゃない!!敵だ!!」


しかし、急降下したゼロ戦43型の機銃掃射を受け、死亡する。




「高木、到着早々整備兵数人を殺ったぞ。」


「黒田、整備兵なんか殺ってどうする積りだよ。」


「うるせえ。敵は敵だ。」


日本軍としては珍しい2機編隊を組んで飛ぶパイロットは互いに入れ替わって後ろの機は後方を警戒し、前方の機は地上を機銃掃射を繰り返している。


「ラバウルから転進した甲斐があったな。」


「だな。」


2人は次々と地上の機を破壊し、攻撃隊のルートを瞬く間に確保してしまった。


「だが、ラバウルからここまで。そして攻撃終了後はガダルカナルまで行かんといかん。燃料に気を配らんと。」




「あれは?今日来る予定のパイロットか。」


爆装した一式陸攻が到着し、敵地上空で対地攻撃を行うゼロ戦2機を見つける。それを掩護するために数機のゼロ戦が編隊から外れ、掩護に向かう。


「お陰で、滑走路に余裕で投下できるぞ。」


爆撃照準儀を覗き、滑走路を捉える。


「投下!!」


爆弾は滑走路に上手く命中し、穴を開ける。


「後続機、地上機を破壊しろ。戦闘機隊はそれを掩護。」


命令を実行に移し、攻撃した。





「作戦成功だな。」


ソロモン海上空を飛ぶ攻撃隊は数機が対空砲火で撃墜されたが、損害はほぼ皆無に等しい。敵機を100機近く葬り、殆どを損傷させることが出来た。


「高木、俺はこの戦争が終わったら郷里で結婚するんだ。」


「黒田、逸る気持ちは分かるが、未来から来た日本人って奴の話ではそれは死亡フラグって奴だぞ。」


「大丈夫だ。この青空の何処に、敵機が居るって言うんだ?」


すると、黒田機が機銃を受けて火を噴き、墜落していく。


「黒田!!」


黒田機は空中で四散。胴体は海面に突っ込んだ。他は粉々になって海へ落ちて行った。


「何処だ?。」


高木は周囲を探す。すると、下から一機が急上昇して過ぎ去った。


「あれか。あれが、黒田を」


高木は愛機を上昇させ、追撃する。



「ほう、追ってくるか。」


黒田を撃墜した英国人パイロット『ジェームズ・ハロルド』少佐は愛機のP51Bを反転させ、反航戦を挑む。


「この機に上昇戦を挑む勇気だけは誉めてやろう。」


相対するP51Bとゼロ戦43型。



「よくも、黒田を。黒田を。よくも!!」


装備するマウザー20mm機関砲を発射する。しかし、P51もブローニングM2を発射した。


「ぎゃああ!!」


有効射程が僅かに長いブロー二ングM2がゼロ戦に先に命中。高木は銃弾を受け、血を流す。



「私の愛機に、当たったのか。」


P51も、20mmを5発だが受けた。致命傷にはならなかったが、燃料を噴き、戦闘続行は不可能な為、離脱した。





―ガダルカナル―


「おい、被弾してるぞ!!。」


高木の機が煙を吐きながらふらついて接近しているのを見張り兵が見つけ、警報を出す。


「急げ急げ!!」


即席の救護車や消防車が滑走路脇に待機する。滑走路脇に駐機されている航空機も、出来る限り奥にしまい込んで、滑走路を広げる。


「滑走路の先に防護ネットを張れ!!急げ!!」


本来は空母の緊急着艦時に使用される防護ネットを滑走路先両端にある木に括り付け、固定する。




「黒田。必ず、仇を取るからな。それまでは、俺は死ねん。」


血で目の前が真っ赤になっている。視界が出血でボヤける。手が震える。それでも、執念で車輪を地面に接地させた。


「止まってくれ。」


ブレーキをかけ、減速していく。しかし、滑走路内で止まる様子は無い。


「うわ!?」


突然、滑走路先端でガクンっと、機体が静止する。高木はベルトを締めていなかったら衝撃で前方へ投げ出され、運が悪ければ未だに回転中のプロペラでひき肉になっていただろう。


機体は、前がプロペラの為に防護ネットを突き破ったが、主翼などが包り、上手く静止させた。防護ネットを張らなければ、機体はオーバーランして茂みに突っ込み、パイロット諸共炎上していた。


「黒田。俺は、帰った。お前の仇を取るまで、俺は生きる。それまで、靖国へ行くのは待っててくれ。」


高木はすぐに救急治療室へ入った。ガダルカナルは現地入りした陸自隊員の尽力によって最前線ながらも医療設備などが整えられており、内地程では無いが十分な治療を受けられるようになっている。





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