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過去へ

2021年 日本初であり、世界初のイージス原子力航空母艦『東郷』完成。日露戦争の英雄である東郷平八郎から取られた艦名は日本の再軍備を象徴するかのような名であった。だが、この空母は極秘裏に建造され、洋上にて船体をくっ付け、横須賀に停泊している。ただ、残念なのが現在の日本に艦載機が存在しないという点だった。


「ここに、国民にもアメリカに艦艇だと思われるでしょう。」


先代から話を聞かされていた新防衛大臣は完成した東郷を見る。


「これが、日本初であり、世界初のイージス原子力空母。」


防衛大臣もその船体の巨大さには圧倒される。現在、これを越す軍艦は世界の何処にも存在しない。アメリカが建造したジェネラル・R・フォード級よりも巨大であり、再び世界最強の海軍国の名が日本に戻った感じが防衛大臣はしていた。


「これはこれは防衛大臣殿。今日はどうしたんですか?」


来たのは東郷の艦長である林原はやしばらまこと海将補である。通常、艦長職には一佐が就くものだが、東郷は日本艦隊全ての旗艦と言っても誤りではなく、一佐だけに任せられないため、海将補が艦長に就く事になった。


「今日は君に移動場所を伝えに来た。実は、最近中国が日本海方面にも現れ始めてな。それで、君の艦隊にそちらに移動してほしいんだ。丁度、試験航海も必要なのだろう。」


「分かりました。搭載機がヘリ10機だけでは心許ないですが、やってみましょう。」


正直、林原も艦載機がほしかったのだ。空母は艦載機があって初めてその能力が生かされる。艦載機の無い空母はただの的でしかないのだ。





-日本海-


「ようやく着いたか。」


国民の目を避けてここに移動したため、来るのに1ヶ月近くも掛かってしまった。


「艦長、大陸から台風が接近しているそうですが。」


航海長の江田原えだわら義久よしひさ二佐は林原に報告する。


「分かった。大丈夫だとは思うが、注意するように伝えろ。」


「了解。」



しかし、台風は予想以上のスピードだった。あの会話から5時間後、艦隊は台風の中に突入。


「凄い波です。船体が持つかどうか。」


「大丈夫だ。こんな波、東郷にとって海岸の波程度だ。」


波に乗り上げたりしながら、艦隊は前進する。しかし、不意に一瞬目の前が真っ白になった感じがした。


「艦長、一瞬目の前が真っ白になりませんでした?」


「航海長も感じたかね?」


2時間後、台風から抜けるとそこは。


「か、艦長!!日本が!!日本が消えました!!!。」


「な!?どういう事だ!?日本が沈むはずがないぞ。」


しかし、日本の方角を見るが、その日本が消えている。


「どういう事だ?航海長、現在位置は分かるか?」


「はい。レーダーにある情報から読み取りますと、!!そんな事よりも前方に大艦隊です。」


艦長は急いでレーダーを見る。すると、280km前方に大艦隊の反応があった。


「CIC、この艦隊は何者だ!?」



「分かりません、突然現れまして真っ直ぐ本艦へと向かってきます。」



「艦長、どうします?どうやらここは外洋で日本の領海ではありませんよ。これでは、向こうに撃沈の理由があります。早急にここを離れるべきかと。」


航海長は艦長に言う。


「あたごより発光信号『不明大艦隊の中央に大和と思しき艦あり。その後方に長門や陸奥、日向等と思しき艦も確認。』」


甲板見張り員が艦橋に伝える。


「大和だと!?そんな馬鹿な。我々は過去に戻ったとでも言うのか?」


「大和が出撃した例は殆どありません。それに長門や陸奥等一緒ということは、ミッドウェー海域に向かう主力部隊と見て間違いないでしょう。」


「分かった。航海長、とりあえず不明艦隊の進路から外れ、やり過ごしたら後方からゆっくりとついて行こうではないか。」


「了解しました。」


しかし、艦隊の進路から外れて暫く進んでいると


「艦長、日本の機動部隊と思しき艦隊を発見しました。私は、こっちに着いて行ったほうがいいかと思います。」


「うむ、史実では全空母を失った艦隊だ。できれば、此方を救いたい。」


そう言い、発光信号で艦隊全てに合図を出して機動部隊の後方についた。




-南雲機動部隊 赤城-


「何!?後方に巨大空母を発見?」


南雲は艦橋にて後方警戒を行っている駆逐艦からの報告を聞く。


「はい。巡洋艦8隻と中央には巨大な空母が1隻いるそうです。」


「司令、それはアメリカの機動部隊の可能性があります。早急に攻撃の必要ありかと。」


航空参謀の源田はこの空母の撃沈の意見具申を行う。


「しかし、何故攻撃してこないんだ?敵ならこの距離で艦載機を飛ばしても不思議ではなかろう。」


「では、せめて偵察機を向かわせて確認を取るべきです。もしこれが敵なら我々の位置を報告している可能性があります。」


南雲は伝声管の所に行き


「通信室、敵の無線を傍受できないか?」


「いえ、今のところ敵の無線は一切傍受できません。」


南雲は源田に向き直り


「偵察機を飛ばす。」


とだけ言った。30分後、準備できた97式艦攻が飛び立つ。


「あれですか。」



-東郷-


「空母より艦載機1機出撃。我が艦隊に接近中です。」


CICから報告が来る。


「1機ということは攻撃が目的では無いな。」


艦長は航海長を見る。そこに、今までCICに居た副長の尾上おがみ靖男やすお一佐が現れる。


「艦長、この偵察機をどうするお積りで?」


「必要なら撃墜するが、一機なら攻撃が目的では無いのだ。放っておこう。」


しかし、そう言う訳にはいかなかった。97式艦攻は発光信号にて


『我、赤城航空隊なり、貴艦隊の所属を知らせよ。』


「日の丸と旭日旗を掲げよ。」


この空母打撃群はバレないように旭日旗や日の丸を揚げておらず、国籍が不明である。その為、早急に味方だと知らせないと攻撃を受ける可能性があった。


『貴艦隊に問う。我が海軍にそのような艦は存在しない。状況を伝えよ。』


しかし、東郷はこれには答えず


『着艦されたし。』


と、発光信号を送った。


『着艦されたしとはどういう事か?』


『艦内にて話し合う。我、日本海軍艦艇なり。』


仕方が無いので、97式艦攻は一旦母艦に戻り、航空参謀の源田と参謀長の草鹿龍之介を連れてきた。



-東郷 会議室-


扉を開けて入ったのは、艦長の林原と副長の尾上であった。そして、尾上は資料庫からミッドウェー海戦の出来る限りの資料をかき集めて持っていた。


「本艦の艦長の林原です、階級は海将補。ここでは少将と考えてくだされば構いません。それと、本艦隊の司令も兼任しております。」


「私は尾上で、階級は一佐。ここでは大佐と考えてくだされば構いません。それと、これは貴方方がこれから行おうとしている作戦の資料です。」


尾上は机の上に資料を置く。源田はその中身を拝見し、草鹿は


「それで、何故この作戦の事を知っておるのですか?そして、貴方方は何者です?この艦は我が帝国海軍には存在しません。」


しかし、先ほどから資料を見ていた源田は


「草鹿さん。彼らは俗に言う未来人のようです。この資料をご覧になれば分かります。」


源田は資料を草鹿に渡す。草鹿はそれを見て。


「そんな馬鹿な。我々の空母が全滅し、この敗北が敗戦へと影響したと言われている!?。」


その資料にはそう書かれていた。


「敵側に情報が完全に漏洩しており、敵の機動部隊がミッドウェーにて待ち伏せしていました。」


「では、それを回避することができれば。」


「ええ、勝てるでしょう。しかし、ミッドウェーを占領したところで我々には何の価値もありません。ハワイはミッドウェーを落としただけでは陥落しません。それよりも撤退してこの戦力を守ることが必要です。」


「しかし。」


「私に良い考えがあります。」


「え?」





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