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世界最強の航空機動部隊  作者: 橘花
昭和 3
29/90

終結させるには

―軍令部―


「第一航空戦隊の旗艦、赤城の損失は予想外だが。これも、君たちの空母が賄ってくれるんだよな?影鎖少将。」


会議にて、嫌味を言われる影鎖は無視する。


「それで、次は何の作戦を立てる積りかね?」


そう言われ、影鎖は立ち上がる。そして、地図で場所を示す。



「印度、か。」


「そうです。ここ、印度に攻め込み大英帝国のアジアにおける植民地支配を完全に崩壊させ、濠太剌利(オーストラリア)を含む残った欧州植民地を完全に独立させます。」


印度を落とせば、アジアにおける欧州の植民地はもはや白人が無敵の神で無い事を再認識させることが出来る。その時こそ、大東亜共栄圏の真の確立の時だった。


「印度は、大英帝国の兵力およそ40%に値する250万人。そして、資源の50%を供給している。これを失った大英帝国の損失は計り知れない。」


上記の通り、大英帝国にとって印度は無くてはならない一大植民地であった。ここを失うと、アジアが孤立し、欧州の植民地帝国は瓦解。新たな秩序がアジアに到来する事は頭の固い旧勢力の軍人でも理解できるだろう。


「その為には、印度人捕虜の志願者、そしてスバス・チャンドラ・ボース。それとビルマ義勇軍を印度に攻め込ませることが必要です。」


影鎖は説明する。そして、大事な事を思い出した。


「印度には、中国国民党を支援する援蒋ルートが存在しています。これを封鎖すれば、国民党は勢力を失い、共産党が台頭するでしょう。」


「では、中国問題の解決にも繋がると。」


「はい。それを機に、中国共産党と単独講和。中国問題を解決させ、満州国から軍を撤退。これらの兵力でハワイを攻め込めるでしょう。」


「しかし、陸軍がそんな事を許可するでしょうか?」


「一人、許可させることが出来る人間が居ます。」


影鎖は自信満々で言う。


「誰かね?」


「日中戦争の引き金となった満州事変を計画し、東条英機を真っ向から批判。それによって予備役に入れられた元支那派遣参謀総長作戦部長、石原莞爾元陸軍中将。」


石原莞爾。軍人と言うより軍事思想家として今では有名な人物。彼の代表作である『世界最終戦論』は内容こそ違うが、今の世に恐ろしく合致する理論である。


「彼を、中国に派遣して共産党と単独講和。それによる関東軍の撤退。それによる中国問題の解決。そして、国民党が倒れれば、アメリカの援助は無駄になり、国内では厭戦気分が湧く。その時にハワイを占領し、本土を攻撃されれば、国民は講和を選ぶでしょうね。」


「その時こそ、日本の戦争が終わるときかね?」


「そうとは言えないですよ。下手をすれば、ドイツに攻め込む必要が出てくるでしょうから。」


「ドイツに?」


「講和の条件でそれが提示されれば、遣らざるを得ないでしょう。」


事実、イタリアの降伏の時、降伏内容の中にドイツへの宣戦布告が存在していることは既に周知だろう。


「それは、已むを得ないでしょう。しかし、気になる事が一つ。何故、共産党なのかね?」


「共産党でないとならない理由は。共産党がソ連にあまり依存せず、自国でやっていけるからです。国民党がもし、生き残れば。中国はアメリカのものになってしまう。それを、貴方方が望むなら、国民党と講和すればいい。」


「望まないねえ。君たちの歴史を見て、日本がアメリカの事実上の傀儡国家である事は分かっているから。」


「なら、共産党と講和以外することは無い。」



―トラック諸島―


南方問題は解決し、今やガダルカナルを不沈空母として日本陸海軍機が進出。豪州へ向かう輸送船や潜水艦を片っ端から撃沈している。


「豪州での裏工作は順調だそうですよ。」


トラック諸島には、今現在の連合艦隊主力艦艇が全て集結している。ラバウルには三川中将指揮する第8艦隊が進出しており、ガダルカナルへの輸送船団護衛を行っている。航空機は、ブ島経由で艦隊の航空支援と対潜哨戒を行っており、史実では見られない日本海軍の対潜哨戒の厳重さを見ることが出来る。


そして、豪州には日本情報部のスパイを始め、多数の工作員が潜入している。そして、現地の情報から現地の革命家らを極秘で支援している。


「そうか。我々は恐らくは印度方面に行くことになるだろう。今のうちに、十分な休息を取っておいてくれ。」


林原は尾上に言う。


「分かっております、艦長。印度ですか。やはり、そこを解放するですね。」


「影鎖海将の事だ。手は考えてあるだろう。」


「海将なら、確かに手は考えてあるでしょうね。」



―京都府 立命館大学―


「石原国防学研究所長にお会いしたい。」


影鎖は軍令部での説明後、少将の階級を使って海軍機を用意してもらい、京都まで飛んだのだった。そして、石原莞爾が講師として職務を行っている立命館大学を訪れた。



「私に、一体何の用かね?」


現れた石原は机を挟んで反対側に腰掛ける。


「石原中将、貴方にお願いがあって参りました。」


「軍なら、もう私は戻らん。」


「そこを曲げて、どうか関東軍に戻ってもらいたい。そして、共産党と講和を指導して貰いたいんです。」


影鎖は頭を下げてお願いする。


「共産党と講和?馬鹿を言ってはいかんよ。今の共産党に、日本と講和して何の利点がある?。」


「中国に、莫大な石油が眠っている事をご存知ですか?」


それを聞き、石原は驚く。


「中国に、石油?」


「今現在、日本が石油の目を向けているのは南方。しかし、中国黒竜江省、ハルビン北西約150㎞に埋蔵量およそ60億バレルの油田が存在します。南北100㎞、東西14㎞、深さ1㎞のこの莫大の石油は今現在の日本が抱える石油問題を一気に解決してくれます。」


「それを、誰かに話したか?」


「いえ。閣下が初です。この情報を貴方がどう生かすもよし。これを手土産に共産党と講和するもよし。大陸に渡ってこの油田を見つけるもよし。どちらにせよ、貴方が関東軍に戻らない限り、実現できませんが。」


「それを、私が現場復帰する交渉の切り札に使うとはな。君は、外交官の方が向いているよ。」


「でしょうか?」


「それを聞くと、確かに関東軍に戻る以外に石油の採掘をする事が出来んな。」


「ええ。そのついでに共産党と講和。兵を、満州国から少しずつで構わないので撤退して頂きたい。」


「なら、完全撤退する前に石油を可能な限り採掘せんとな。」


「そうなりますね。まあ、その辺は中国大陸でご自由に。我々海軍は、今は印度方面に目を向けていますので。」


影鎖は立ち上がり、窓から外を見る。


「京都は歴史ある街です。そして、ここもアメリカの空襲の標的になる。」


京都は20回以上の空襲を受け、約300人が死亡している。


「そうならない為にも、一刻も早く中国問題を解決し、アメリカとも講和を結びに行かなくてはなりません。」


影鎖は、窓から見える五重塔を背景に言った。

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