中国空母打撃群VS日本空母打撃群 前編
―硫黄島沖―
「楊海皇司令、艦載機の出撃準備は整っております。」
艦隊司令官を務める楊中将は、参謀から報告を聞く。
「分かった。出撃を許可する。」
「了解しました。」
攻撃隊がジャンプ台から飛び立っていく。ロシア海軍から購入した瓦良格は購入時の時のスキー式飛行甲板をそのまま残している。
「新鋭の李牧が、何処までの性能なのか。」
試験航海の殆ど完了せずに出撃している新鋭空母『李牧』は、今回の作戦参加が危ぶまれた空母であった。まだ、船体の安定性も低い。
「まあ、この艦隊は使い捨てみたいなもの。我々は生きて返れればラッキーって事だ。」
現在、中国には5隻の中型空母が存在する。原子力空母を損失した今、残った3隻が主力である。その内の2隻がこの作戦に投入されていた。
「まあ、残る1隻はこれらの空母とは比べ物にならないほど性能が上だから、十分だろう。」
出撃した航空隊は、二手に分かれて飛行した。1編隊は浜岡へ、もう1編隊は東京を目指している。目標は、北里の読み通りになった。
「そろそろ、敵の迎撃が来る。気を付けろ。」
隊長機が、各機へ注意を促す。
―飛鳥―
「整理も必要ないとは。」
飛行甲板を移動する無人戦闘機F-19。通常は飛行甲板に居る飛行甲板要員が誘導を行うのだが、それすらも必要が無かった。
「格納庫も自動で上がりますし、兵装なども自動で作動する。操艦も。我々は、機械に仕事を奪われる時代が存在すると、今実感しております。」
艦長と言う役目も存在しないロボット空母、飛鳥と奈良から航空機が次々に出撃するところを、艦橋に居る者は見ていた。
「なんだか、空しいものですね。」
「そう思うかね。」
「敵機だ。」
東京を目指す中国艦載機が、日本の戦闘機を捉える。
「各機、散開して東京を目指せ。」
20機の戦闘機が散開して迎撃態勢を取る。もう20機の爆装戦闘機は東京を目指して飛行する。しかし、相手は50機。散開しても殆ど意味が無い。
「迎撃するぞ。」
機体を旋回させ、F-19の真後ろに着く。
「喰らえ。」
ミサイルを発射しようとする。しかし、F-19が突然目の前から消える。
「なっ!」
レーダーを見ても何処にも見当たらない。パイロットは外を見渡すが、何処にも見えない。
「何処に?」
すると、突然真下から機銃を喰らって撃墜された。
「ば、馬鹿な!何時の間に、真下に。」
燃えながら落下していく隊長機。辛うじて爆発をしなかった隊長機のパイロットは、味方機の追尾するF-19を見る。
「ば、馬鹿な。戦闘機が、いや、飛行機があんな機動をするのか?」
突然目の前から消えた理由は、速度を一瞬にして0にし、ストンと落ちたからだった。これも、反重力エンジンを搭載しているからこそ出来る機動であった。
「に、日本は。何処まで、上を行くんだ。」
隊長がそう言った時、愛機が爆発。隊長諸共四散した。ものの10分足らずの戦闘で戦闘機隊は全滅。爆装した戦闘機は
「護衛機が無いな。」
厚木から離陸したF15に捕まっていた。
「一方的だよ。護衛機が無い以上、我々は的だからな。」
F15の迎撃を受け、一機一機が丁寧に機銃で落とされていく。
「爆弾を捨て、降伏するしかない。空母まで、戻れないからな。」
爆撃隊隊長の命令で、全機が武装を投下。無線で、降伏を宣言した。
「こっちも、降伏する必要があるな。」
浜岡に向かった航空隊も、迎撃を受けている。突破した爆撃機は、03式中距離対空ミサイルに迎撃され、突破が完全に出来なかった。
「爆弾を捨て、こっちも降伏する。」
全飛行隊が武装解除。降伏したのは、出撃から僅か30分であった。
―十勝基地―
「中国空母を飛び立った航空機は、全機降伏したようです。」
その瞬間、基地は盛り上がりを見せた。
「そうか。まずは、第一ラウンドが終えたな。」
北里も、艦載機の迎撃と言う第一ラウンドが終えたことを実感した。
「では、第二ラウンドが。中国空母を、殲滅する。」
「了解しました。」
富嶽は、爆装を再び整えられている。
「攻撃地点は、撤退を開始しているであろうから。」
北里は、地図を見ながら検討する。
「そうだな。紀伊半島の南方の海域が良いだろう。」
地図の一点に、赤丸を書く。
「300機からの爆弾の雨を回避することが出来るだろうか。」
出撃数300機。それらが、十勝基地から離陸していった。