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世界最強の航空機動部隊  作者: 橘花
昭和 2
25/90

ギルバート諸島 3

―東郷―


日本の内閣が変わったことは東郷を始めとする艦隊にも届いた。


「どうしましょう?」


尾上が林原に聞く。


「士気の低下がある。報告は控えよう。」


林原は、本土が爆撃されたことによる士気の低下を恐れて海戦中の報告を控える事にした。まあ、逆の意味で士気が上がる者が居るかもしれないが、そうなると血気盛んになりすぎて怖いと言うのも理由に上がっていた。


「では、反撃しようではないか。」


飛行甲板には、出撃用意を整えた艦載機。128機が待機している。


「発艦はじめ!!」



命令を受け、発艦した攻撃隊は龍驤などの艦載機と合流して飛行を続ける。攻撃は、一度しか行わない計画であり、この攻撃で敵を退却させなくてはならない。




「こちら、隊長機。敵艦隊を発見。敵機のお出迎えを受けている。」


攻撃隊を率いる宮部中佐機は、ワイルド・キャットの迎撃を受けていた。零戦が迎撃に出て行き、何とか損害を抑えたが、12機の攻撃隊を失ってしまう。


「敵空母を確認、急降下爆撃隊は空母を狙え。雷撃隊は散開し、攻撃チャンスを待て。」


攻撃隊は散開し始め、照明弾を撃って合図し合う。


「急降下爆撃隊、これより急降下に入る。」


99式艦爆を駆る急降下爆撃隊は、目標上空から一気に急降下する。


「対空砲火に気を付けろ。」


散開して、各個急降下する部隊も居た。単縦陣で急降下する部隊も居た。しかし、ワスプとエンタープライズは次々と回避されてしまい、有効打が無い。


「このままじゃあ、急降下爆撃隊は全弾投下しちまう。」


焦りで、余計に命中率が下がっている。


「き、機長。あの機が体当たりする積りです。」


見ると、火災を起こしている99式艦爆が、引き起こしをやめて、エンタープライズへ更に急降下する。そして、飛行甲板に激突。炎上する。


「チャンスだ。沈められるかもしれん。」


炎上するエンタープライズを見て、これまで周辺の護衛艦に攻撃していた雷撃の雷装残存機はエンタープライズへ攻撃目標を変える。


「目標、エンタープライズ。」


5機が編隊を組んで向かっていく。


「投下!」


投下された魚雷は、海面に突き刺さるように落ち、海中を進む。


「避けられるな。」


エンタープライズは取り舵を切って全弾回避する。今の所、空母の損害は99式艦爆がエンタープライズに体当たりしただけであった。幾つかの至近弾で損害は出ているが、直撃による損害はそれだけである。


「くそ。何って操艦技術だ。」


パイロットは悔しがりながら飛び続ける。しかし、エンタープライズは体当たりによって飛行甲板が破壊され、攻撃隊の着発艦が出来ない。戦力としては洋上に浮かぶ対空艦に成り下がった。



―エンタープライズ―


エンタープライズに座上するのは、マレー少将であった。


「本艦は、既に戦闘能力あらず。」


発光信号で各艦に連絡を続けるエンタープライズは、敵機からの攻撃で応急修理しかされていなかった飛行甲板を完全に破壊されてしまった。


「マレー少将。本艦は撤退させ、ワスプへ移乗して指揮するのが宜しいかと思います。」


「私もそうしたいさ。しかし、今回の目的はあくまでも敵を引き付ける事。全艦撤退をさせてももういいのだが。」


炎上しながら進み続けるエンタープライズは、史実同様のタフさで、体当たりによる損害を物ともせずに航行する。


「それが、一番良い判断だと思われます。しかし、今この場で逃げ帰って宜しいかと言われれば、正直、判断が尽きかねます。」


「分かっている。しかし、戦争は人が行うものだ。撤退も継続も、人の意志が決めるもの。」


マレー少将は艦橋から自分の指揮する艦隊の損害を客観的に集計する。


「駆逐艦は無傷の艦が存在しない。潜水艦が進出できるこの海域で、これ以上の戦闘は危険だ。」


マレー少将は、決心したように言う。


「では。」


「撤退する。今なら、空母は失っていない。この空母が健在な今、反撃は何時でも可能だ。」


マレー少将は、全艦に撤退命令を下命。ハワイ、太平洋艦隊司令部に作戦中止を進言。1時間後、空母の損失を恐れた太平洋艦隊司令部、並びに報告を受けた海軍上層部は撤退を承認。マレー少将指揮下の艦隊はギルバート諸島を離れた。




―ナウル 北東80海里地点―


「結局、ここまで移動したのは無駄だったな。」


南雲中将指揮下の第一航空艦隊はギルバート諸島からアメリカ軍が撤退したのを聞き、艦隊をトラック諸島目指して航行させていた。


「ええ。ただ、これで改めて彼らの力が分かったので良いではありませんか。」


源田は草鹿参謀に言う。


「そうだな。彼らの力は、やはり我々には大きい。使い方次第では、世界を相手にだってできるほどだ。」


「我々が、その世界を相手に戦っているんですよ。」


彼らの座上する赤城は歴戦空母として初戦から戦っている。史実では、ミッドウェー海戦で損失したが、ここでは未だに健在だった。


「確かにな。だが、聞いたかね?日本本土爆撃を受けて、首相が変わったて話し。」


「はい。」


第一航空艦隊も、通信科と司令部に居る者は電報で分かっていた。しかし、やはり兵には話されていなかった。


「彼らが来たことで、歴史が変わったのも事実だ。そして、彼らが来たことでアジアにおける我が国の地位が高まり、アジア各国は次々と日本に独立承認を伝えに来ている。」


南方のアジアでは、一部を除き、次々と日本へ代表団が訪日して独立承認を訴えている。東条内閣時代から承認を続け、軍事物資や軍事施設等の使用を条件に次々に独立をしていった。少しずつ、北里の目指した大東亜共栄圏の復活が実現し始めている。


「左舷より魚雷接近!!」


しかし、それが突然の報告で司令部は騒然とした。


「か、回避!!」


しかし、間に合わなかった。赤城は、左舷に4本の魚雷が命中。傾斜を始めた。




―東郷―


「救難信号を受信。赤城が、魚雷攻撃を受けた模様。」


東郷の無線機が救難信号を捉えた。


「場所は?」


林原は急いで確認させる。


「ここから、南南西380㎞です。」


トラック諸島目指して帰還最中に、しかも近場だった。


「ヘリを飛ばす。本艦隊も全速にて向かう。」


全艦が南南西目指して全速力で航行する。着いたのは、2時間半後だった。



「本艦も、救助を支援する。」


駆逐艦は魚雷を放った潜水艦狩りに躍起になり、救助が思うように進んでいなかった。


「秋風より、源田航空参謀の姿確認できずとの事。」


「源田中佐が?」


林原は急いで追加の捜索ヘリを飛ばした。その中の一機には、林原に無理言って乗せてもらった江田原が居た。



「源田参謀、一体どこにいるんですか?」


周辺を探しても、見つけられない。既に、日は落ち始めており、発見は困難を極めた。


「中佐、何処に。」


その時、何やら反射光と思しき光を見る。


「あれは?操縦手、北東へ飛んでくれ。」


「りょ、了解しました。」


操縦手は言われたとおりに北東へ針路をとる。


「見つけた。源田参謀だ。」


救助の遅れによって潮に流されてここまで漂流している兵が数名見受けられた。


「東郷に連絡お願いします。」




―東郷―


「江田原から、源田中佐の居場所が送られてきました。それと、潮の流れで周辺に漂流兵が拡散している可能性があるそうです。」


林原は尾上からの報告を聞くなり、更に追加の捜索ヘリを飛ばし、それと同時に自艦を護衛する護衛艦も捜索へ繰り出した。元々、海自は溺者救助訓練と対潜哨戒を重点的に行う傾向があり、この手に関してはお手の物だった。


トラックから、US-2が3機派遣され、更にガダルカナル周辺を警戒していた海軍の艦艇も到着。赤城は沈んだが、その乗員1694名中1520名が救助された。残念なことに、機関室に直撃を受けた為に、魚雷命中直後に機関室に居たものは全員戦死が確認された。



「この損失、どう思う?」


林原は赤城の損失の大きさを尾上に尋ねる。


「そうですね、史実を考えるとかなり大きいです。しかし、現状を考えると大して問題ではありません。パイロットもほぼ全員が助かりましたし、空母に関しては翔鶴級(アングルドデッキなどを装備している為、厳密な翔鶴級とは異なる)が新たに3隻建造中なので問題ありません。それに、戦艦を空母改装中ですから赤城の損害位はどうとでも成ります。」


「そうか。」


林原はただ、頷く事しか出来なかった。確かに、尾上言うとおり今の日本に赤城の損害位はどうとでも成る。しかし、機動部隊の象徴であった赤城の損失はパイロットにどの様な心境を与えるのだろうか危惧していた。

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