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爆撃計画

―自衛隊司令部 会議室―


「21式戦車は期待以上の性能を示したようです。」


沖縄から来た戦果報告を聞き、その報告を分析して如何に21式戦車がこの時代の戦車より卓越した性能を持っているかを思い知った。


「中国軍は上手く海岸線に撤退してくれました。これで、空自の出番がようやく来ます。」


空自の幕僚長はようやく自分たちに仕事が来たと、正直ホッとしている。


「その前に、大連を富嶽で爆撃して頂けないだろうか?」


「大連?ですか。」


「そうです。そこのドック内に中国の原子力空母『関羽』と『張飛』が居ります。それを爆撃によって破壊して頂きたいのです。」


北海道十勝台地に富嶽航空爆撃団が急遽創設され、空自のクルーの訓練を取りあえず突貫で終えることが出来た。元々、コンピューター制御が多くて人間が行う事は操縦ぐらいしかない。データさえ入れれば、寸分違わずに目標をどんな高度でも正確に貫ける為、爆撃訓練も殆ど行わなかった。



「あの富嶽は信じられない事に100%のステルス性です。爆撃の最中でも、機外に爆弾を取り付けても。レーダーに影すら移しません。」


現在でも、ここまでのステルス爆撃機は存在しない。機外に取り付ければ、その取り付けたものがレーダー波を反射してしまい、捉えられる。しかし、この富嶽には特殊な合金が使われており、それが100%のレーダー波を吸収するのだ。


「それを使えば、中国軍に気付かれずに接近、任務を完遂できるでしょう。例え迎撃を受けても、装備している全自動式機銃が迎撃してくれる。」


北里は機体のマニュアルを見ながら言う。そこへ、黒い煙が現れ、それが人間の形に成って、水戸が現れた。



『皆さん、会議中に失礼。』


そう言って一礼する。


「いやいや、水戸さん。貴方から提供された戦車は素晴らしい性能を示してくれましたよ。」


『それは良かった。しかし、一つ問題が発生しました。中国空母は、日本本土への攻撃を行う腹積もりの様です。』


「なに!?。場所は?」


『残念ながら、そこまでは。ただ、日本近海に展開している事は申しておきましょう。』


近海に居ると言う事は、何処へでも攻撃可能だと言う事。日本にとって、最大の危機でしかなかった。


『防空体制の強化をすべきだと、私は申し上げます。結果次第では、我々の政府がより貴方方を信頼し、更なる兵器提供も検討する事を申しております。』


更なる未来技術は日本にとってこれ以上ないほど嬉しい。


「分かりました。防空体制の強化をしましょう。防衛大臣、今より24時間のスクランブル体制をとりたまえ。それから、横須賀から空母艦隊を小笠原方面に派遣、迅速なる行動を取れる様にせよ。」


「了解しました。」


北里は立ち上がり、駆け足で指揮所へと向かった。


「それと、空幕僚長。富嶽の出撃用意をしたまえ。」


「了解しました。」


空幕僚長も部屋を出て行った。



「水戸さん、この戦い。正直、どの様に終わらせるべきなのか迷っております。日本はアジアで完全に孤立しました。」


『そんな事はありません。周辺はそうでも。南方はあなた方に友好的な国が沢山あります。それに、先日も申し上げた通り、ドイツが欧州で最大の理解国であるのです。この国を、何とか仲介役に持ってこれないでしょうか?』


「難しいね。国際連合に常任理事国なっていないから、戦争の仲介役は難しい。アメリカは信用できないし、・・・・イギリスはどうなのだろうか?」


『イギリスの出方次第では仲介役に引き立てる事も可能と?』


「ええ。」


水戸は、暫く考える仕草をする。


『取りあえず、まずは本土の防衛を行うのが先決でしょう。最悪は、中国本土進攻も覚悟してください。』


「中国に進攻!?」


水戸自身もとんでもない事を言っている事は分かる。腐っても人口が世界一の国。その気になれば日本など物量で押し切ってしまう国に直接攻めよと言っているのだ。


『終結にはワンサイド・ゲーム以外ない。中国を屈服させるには、まずは首都の占領、もしくはその恐怖を与える以外にありません。』


「し、しかし。」


『まずは本土防衛をお願いします。この結果次第では、先ほど申し上げた通り、兵器を更に提供します。』


そう言って、水戸は消えた。一人に残された西澤は


「本土防衛か。太平洋戦争下の日本軍部首脳の苦悩が今になって分かるとはな。」


B29迎撃が思うように出来なかった軍部は震天制空隊を結成するも戦果はあまりいい結果ではなく、最終的には正攻法で損害を増やし続けていった。




―平成 三菱重工業 本社 設計部―


「ようやく、設計完了だ。」


ここではほぼ不眠不休で奮闘していた二人の技術者が居た。一人は堀越二郎。零戦や雷電、烈風などの少なきながらも今でも伝えられる名機の主任設計を務めた日本の航空技術者。もう一人は彼の子孫にあたる堀越四朗。他の設計者は後退で仮眠をとって設計にあたっていたが、この二人はほぼ不眠不休で設計図を引き、コンピュータで計算していた。


「これが、日本の新型艦上戦闘機。」


そこには、一機の3DCGで描かれたDo335。それに幾らかの設計変更を加えて艦上戦闘機として再設計した航空機だった。シュミレーションでF6Fに圧勝、F8FやP51Dには互角かそれ以上の結果が出た。


「いやー。こちらの世界では設計がかなり楽ですね。このコンピュータのお陰で設計が早く終りました。」


元々、存在している機体に手を加えて再設計するだけなのだからそれほど手間が掛からない。それでも二人の技術者の発想力には周りの者がついていけなかった。


「機体名は、貴方の設計する次期主力艦戦『烈風』から取って、これを『烈風改』と命名いたしましょう。」


機体名まで迅速に決まった。時を越えた交流は大きなものでもあった。次の日から、三菱の生産体制はほぼ、烈風改の生産で埋め尽くされた。エンジンも、液冷2000馬力のエンジンを搭載するなど、手を加えられた設計の為に生産はいまいち捗らなかったが、それでも旧式し始める零戦の後継が出来たことは大いに喜ばしい事であった。

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