表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/90

軍事戦略

―首相官邸―


「では、アメリカは信用してはならないと。」


「はい。」


首相官邸に戻った西澤の下に未来人の水戸が現れ、アメリカの現状を伝えた。


「そうか。これで、本当に信用すべき国を失ったな。」


「我々としては、やはり貴方方に一番理解を示してくれているドイツを頼りにすべきかと思います。」


「ドイツを、ですか?」


「はい。国連での貴方方の訴えに一番理解を示してくれた唯一の欧州国家はドイツだけです。」


「確かにそうですが、我々にアメリカ離れをしろと?」


「先ほども話した通り、アメリカは戦勝国からすべての利権を横取りしようと考えています。アメリカに対抗できるようにするには、貴方方がかつて、手を結び、共に世界を相手にし、今回で一番理解を示してくれた欧州国家ドイツがあなた方の一番の理解者なのです。」


水戸の言う事も筋は通っている。力に物を言わせて無理やり条約に調印させ、都合が悪くなると勝手に破棄して日本から撤退したアメリカよりも、理解を示してくれた欧州最大の友好国、ドイツが新たな条約相手に相応しい。


「それと、講和への件ですが、中国にはワンサイドゲーム以外の講和手段はありません。」


「ワンサイドゲームか。しかし、現実に中国との兵力差は歴然です。質は上でも、数で押されれば敗北します。」


「私が政府にて協議した結果、あと一つ。提供できる事が決定しました。」


「あと、一つ?。」


「本職は、戦車が宜しいと考えております。陸の主力にして花形の戦車で、中国陸軍を完膚なきまでに壊滅させるのです。」


「戦車ですか。」


「我々世界では、貴方方を上回る科学力を持っている事ぐらいは既に分かっていますでしょう。レールガンはご存知ですか?」


「あ、ああ。磁力を利用して物体を超高速で撃ち出す物だろう。確か、アメリカが実験的意味合いで軍艦に搭載したとか。」


「我々の世界では勿論軍艦にも搭載しておりますが、それが歩兵携行用に小型化もされており、戦車砲としても存在しています。貴方方は、あと30年ほどは掛かる技術です。」


レールガンの戦車搭載は検討されているが、問題は発射の時の電力をどのように供給するかが問題でもあり、なによりも小型化せねば話にならなかった。


「その戦車を200台、何とか提供できるようにしましょう。」


「200台も」


「性能についてご説明します。」


そう言って、スイッチを押す。すると、壁にあるスクリーンが降りてきて、画面に戦車の3DCG映像が投影された。


「これは、我々の世界で第6世代戦車に当るためMBT6と呼ぶレールガン搭載戦車です。装甲は我々の世界で発見されたゼネラルミックと呼ばれる特殊な材質で出来ており、こちらの世界での戦車砲なら後部ですら貫く事は出来ません。」


簡単に言うと、通常の陸上兵器では破壊する事は出来ないと言う事だ。


「そして、主砲はこちらの世界で言う日本製鋼所に当る国営鉄鋼工業が開発・製造している34式レールガン砲です。初速は秒速8000mと言う恐るべきスピードであり、こちらの世界でこの戦車砲に貫けない物体は存在しません。中の装備は10式戦車と共有できるようになっており、コンピューター制御も可能なため、訓練の必要はありません。」


「そんなにか。」


「そして、一番心配しておられる重量と速力なのですが、ご心配なく。35tと言うこちらの世界では考えられない重量なので。」


「3、35t。」


35トン戦車は、可能性的にはイラクのズルフィクァが考えられるが、性能がほとんど謎の為、詳細は不明である。現代の戦車は主砲が強力になり、装甲なども厚くなっている為、重量が増え続けている。だから、何か革新的な発明が無い限りは今後も戦車の重量は増え続けていく。


「ははは。35tで驚かないで下さいよ。フランスのメラバルなんか22tですよ。」


「め、目眩がしてきた。」


「次に速力ですが、履帯を外したら整地で120㎞、不整地で106km。履帯在りで整地は90㎞、不整地は72㎞って所です。この戦車から逃げられる戦車はこちらの世界には存在しません。」


つまりは、この戦車と遭遇したら破壊されるぐらいしか選択肢が無いと言う事だ。中国兵、ご愁傷様。


「発射時に使われる電力は、車体に小型自動化された原子力発電があります。1基当たりの発電量があなた方の建造した東郷の総発電量と同じです。ちなみに、破壊された時には自動的に原子炉が閉鎖される様になっていますので放射能漏れはありません。」


「貴方方の世界には戦争での戦死者が少なさそうだ。」


西澤は冗談めかしに言うが


「そうでもありません。貴方方の世界で最強と思われている核兵器は、我々の世界では過去の遺物となりました。核を超す新兵器、粒子兵器が発明されたのです。」


「粒子兵器?」


「超粒子を、超光速で飛ばし、人体や建物を貫通して死に至らしめ、破壊する大量殺戮兵器です。これが、中国に投下されて、一瞬にして11億5000万人と言う人命を奪い、中国西側の都市は50年間は復旧に掛かると言われるほどの損害を被りました。今では、国際条約でこの兵器の製造と使用を一切禁止されましたが、裏では製造している国があるのではないかと言われているのが現状です。」


現在の核兵器でも、せいぜい殺せるのは100万人前後。その100発分の威力を粒子兵器は1発で示したのだ。


「では、戦車は明日には納品できると思います。では、私はこれで。」


もはや、武器の輸送だなっと、西澤は思った。それと同時、科学の進歩が人間を豊かにし、また、不幸にすると言う現実を辛く、心にとめる事となった。




―昭和 軍令部―


「ガダルカナルの早期戦力化は成功だったそうじゃないかね。」


軍令部総長の永野修身は会議の場で言う。


「恐れ入ります。」


「貴君の情報提供通り、米軍はガダルカナルに上陸。大損害を被って降伏させ、艦艇や航空機も相当数の損害を与えたと報告が入っておる。」


「影鎖中将、海自の戦力は相当当てになると言う事が分かった。これを機に、一気にアメリカに進攻しようではないか。」


海自総司令の影鎖は資料を取り出して報告した。


「現在、新型航空機が続々と生産されており定数を揃えるまでは本職としては進攻を控え、守りに徹するべきかと。」


「平成の軍は、そんなにも弱気なのかね?」


「本職としては準備無しに大国のアメリカに攻撃を掛けること自体が無謀だと申しているのです。制空権なしでは、戦いは敗北します。」


「君たちには、大和魂というものが無いのかね?」


「魂と戦場は違います。精神論だけで、近代戦は勝利できないと言う事を。中国で、学んだのではないのですか?」


実際、中国戦線は泥沼の一途を辿っている。


「大和魂無しで、戦争に勝利できないのです。圧倒的な物量も限りがあります。しかし、精神は無限です。」


それを聞いた瞬間、影鎖はそれを言った将校に拳銃を突きつける。


「な!?」


場は騒然となった。警護兵が数人入って来て、拳銃を構える。


「貴方が言う無限の精神で、この拳銃の弾が避けられたら。精神の無限を信じましょう。試して、見ますか?」


引き金に掛けた指に力を入れる。


「待て、落ち着け。」


なお、指に力を入れる。そして、カチッと、撃鉄が打っただけだった。それを見て、拳銃を突きつけられていた将校は床にへたり込む。


「これで、精神論で勝てないと言う事を。お分かりいただけただろうか?」


永野は警備兵に退出を促し、立ち上がっていた将校らに席に着くよう命じる。


「分かった。では、貴様はどうしたいのだ?」


「次に、米軍が来るとしたら、ここです。」


立ち上がり、地図の一か所を指す。


「なるほど。ギルバート諸島か。」


「はい。この周辺がアメリカが進攻する可能性のある地域です。」


「根拠は?」


「海自の潜水艦にハワイを近海に接近させて情報収集を行わせているのですが、その中にガルヴァニック作戦と言う単語がありました。これは、大東亜戦争中にアメリカ軍がギルバート諸島進攻時に名付けた作戦名です。史実と違い、暗号解読で輸送船は付けず、航空攻撃ののみと言う事は分かりました。早急に、空母部隊をここに配置すべきかと。」


「しかし、そんな根拠で艦隊を動かすわけにも。」


「隼鷹と飛鷹を中心に龍驤と空母の護衛部隊を配置させてください。後は、海自も参加して敵を撃滅してご覧に入れましょう。」


「まあ、そのくらいなら出してやるか。」


「それと、万が一の為に第一航空戦隊にはナウルに待機させてください。ここなら、ガダルカナル方面に応援にも行けますし、万が一の時には我々の掩護も出来ます。」








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ