届けられた兵器
―平成 横須賀―
「本当に、ここに現れるのかね?」
「はい。」
西澤は閣僚等を連れて水戸と名乗った時空管理省の人間が示した時間の数分前に横須賀海上自衛隊の基地に居た。
「しかし、何にも変化がありませんが。総理、本当にここで宜しいのですか?」
北里がそういった時、黒い霧が出始め、そこから中型空母2隻とその護衛艦が現れた。
「す、凄い。」
その中型空母はエンタープライズの横に2隻とも停船し、護衛艦はその周囲を取り囲む形で停船した。
『お気に召しましたかな?』
っと、いつの間にか背後に黒い煙で構成された水戸が立っていた。
「あ、貴方は?」
西澤以外は聞いていたが、水戸と会ってはいなかったので驚く。
『これは失礼。私は時空管理省の水戸と言う者です。貴方方に簡単に説明すると、並行世界の未来の日本から来た者です。』
っと、閣僚等に一礼をして改めて名乗った。
「それで、水戸さん。この空母や護衛艦に殆ど乗組員は必要ないと聞いたのですが・・・。」
北里は西澤に言われていた事を改めて問う。
『ええ、乗組員は100人も要りません。この空母を始めとする艦艇はこちらの世界で言うバイオ・コンピューターで、簡単に説明するとロボット艦艇です。制御を始めとする殆どの事をコンピューターが行い、艦載機は全てが無人化されており、機関室などに数名を配置するだけで十分です。』
「む、無人機ですと?」
北里は驚いた。無人偵察機などは既に実用化もされているが、無人戦闘機は初飛行をようやく終えた段階であり、実戦配備にはまだ5年以上かかる代物。そんな物を既に持って来たのだから。
『はい。艦載機はこちらの世界で開発されたF-19戦闘機を45機搭載しております。その他には、電子戦機を8機、対潜ヘリを4機、E8早期警戒機が2機です。』
「F19か。消えた戦闘機ナンバーとして有名な数字だな。」
F19戦闘機は実在しない戦闘機ナンバーで、架空戦記などには案外有名な戦闘機ナンバーである。
『ええ、こちらの世界ではそうなっているそうですね。この戦闘機は電磁力推進と、垂直離着陸用の反重力エンジンを搭載しております。』
「反重力エンジンって、あの。」
反重力エンジンは二個の円盤が回転することで空気の質量よりも軽くなり、上昇や下降が自由自在に行える画期的なエンジンである。しかも、通常の垂直離着陸と違い、高熱のジェット噴射を地表に向けて排出しないから、地表を痛める事も無い。
『ええ。こちらの世界では確か・・・・サンディー・キッド氏が発明した、っと記されています。』
また、本みたいなものを開いて言う。
『こちらの世界では、既に1830年代から存在していました。』
改めて、水戸の世界の科学力が進んでいることを実感した。
「では、直ぐにでも実戦が可能なのだな?」
『はい。マザーコンピューター、この艦の中枢コンピューターには我々の世界で起こった全ての空母戦闘のプログラムが入っており、何よりも学習機能を持っております。そして、自艦の安全を最優先に考えます。』
「それは素晴らしい。では、この空母は絶対に沈むことは無いのかね?」
『はっきりとお答えすることは出来ませんが、正直に言うとまず考えられません。』
「絶対に沈まぬ不沈艦。人類の夢だな。」
『では、私はこれで。そうそう、富嶽も一週間後にお送りします。』
そう言い、水戸は姿を消した。
1週間後、
―十勝基地―
北海道の十勝に突貫滑走路を造り終えたその時、失明すると思えるほどの光が現れ、ハンガーなどの空港設備から400機の富嶽やらが送られてきた。
―首相官邸―
「これで、反撃の準備は整った。何時でも、中国と事を構える態勢に自衛隊も入った。航空兵力などの主力も、九州などの中国方面に配置し、防空体制は完璧。」
「海自も、残った兵力の大半を呉や佐世保方面に移動させました。また、退役して解体待ちの艦も再就役をさせて戦闘態勢に入っております。」
「そうか。やはり、解体待ちは正解だったな。」
そこへ、隣の部屋に居た連絡員が入ってきて
「総理、中国政府が我が日本へ、宣戦布告しました。」
「そうか・・・・諸君、我々は二つを相手にせねばならない。昭和の連合軍と、平成の中国。厳しい戦いになるかもしれないが、我々には科学の進んだ並行世界の未来の日本が付いている。挫けてはならん。勝利を治めるのだ。戦後初、大勝利をな。」
2021年9月27日。中国、日本へ宣戦布告。日本は平成の世に似合わぬ、泥沼の戦争に参加する事となった。