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夜戦の鬼 三川軍一

―ソロモン諸島 ガダルカナルー


「では、行ってまいります。」


ガダルカナルからは偵察の為にP3Cが飛び立った。最大速度600㎞を超すP3Cに追いつける連合軍機は現在存在しない。


「機長、幾ら追いつけないからってこの時代に衛星とかは無いので昔ながらの航法で位置を掴まなきゃいけませんよ。」


一応、初期訓練で航法も習っているが、実際は殆ど試したことが無く、慣れていない。その為、旧軍の航法士も一緒に搭乗している。


「話していないで航法をしっかり頼むぜ。もし迷って海に落ちたら(ふか)の餌になるからな。」


「分かっていますよ。」


ガダルカナルには三川中将指揮の第八艦と浜西海将指揮の第二護衛群が進出しており、敵艦隊発見の報を受けたと同時に出撃できるように待機している。そして、海中には潜水艦が息を潜めて敵艦隊を捜索している。


「艦隊を発見!!北西130㎞地点に敵艦隊発見!!艦影より巡洋艦クラス8、駆逐艦クラス12。」


P3Cのレーダーに敵水上艦艇を捉えた。この報告を受け、直ちに三川艦隊と第二護衛群が泊地を出撃。接敵は、19時になるという見方がなされた。即ち、三川中将(やせんのおに)十八番の夜戦を挑めるということだ。



―第二護衛群 旗艦 こんごう―


「浜西司令。三川さんは支援のみを要求しておりますが。」


「分かっている。早速、支援をしてやらんとな。」


そう言って無線機直結電話を取り、三川艦隊旗艦「鳥海」に繋いだ。傍受されることが無く、艦隊旗艦には他艦隊との連絡が行える大型の艦隊連絡用電話機が搭載され、その他の艦艇にも艦隊の艦艇同士で連絡が取りあえる小型の艦艇連絡用電話機が装備されている。航空機にも無線機が搭載され、連絡密の編隊空戦が行うことが出来、スペースに余裕のある攻撃機や爆撃機には大型の基地連絡用の無線機も搭載されている。


「三川さん、早速敵に有利に事が運ぶ可能性の高いレーダー艦を沈黙させてもらう。」


アメリカ艦艇にはレーダー装備艦が少なく、本格的にレーダーが威力を発揮したのは第三次ソロモン海戦辺りからだ。しかし、イギリスやこの海域に出現するオーストラリア艦艇には既にレーダー装備艦が存在している。だから、このレーダー装備艦を沈黙させて夜戦を有利に運ぼうと浜西は考えたのだ。


「ハープーン、諸言入力完了。撃ち方用意よし!!」


「敵レーダー艦を補足しています。」


「敵、艦隊後方に更に別の艦隊。」


報告が次々と届けられる。


「別の艦隊だと?」


「はい、巡洋艦2隻という少数ですが、離れているので別の艦隊かと思われます。」


「分かった。ハープーン発射!!」


「こんごう」と「はるな」からハープーンが3本ずつ放たれ、敵レーダー艦目指して飛行を開始する。



―巡洋艦 オーストラリア―


「何か、接近してきます。」


見張り員が報告し、司令のクラッチレー中将は


「何かとは一体?」


「ふ、噴進弾です!!」


その瞬間、右舷を航行していたタルボットとブルーに命中し、二隻は海の藻屑と消えた。


「タルボット、ブルー、両艦共に応答なし。撃沈された模様!!」


「一体、何が起こったんだ?」


「わ、分かりません。あ!!。ほ、本艦にも噴進弾が向かってきます!!」


だが、既に遅かった。旗艦のオーストラリアの艦橋に命中。クラッチレー中将は敢え無く戦死した。その他、2隻の駆逐艦が喰われ、レーダー艦は全滅した。



―こんごう―


「敵レーダー艦沈黙。」


「三川艦隊より、我これより突入す。」


「敵、なおも前進中。」


報告から見て、接敵予定時間に狂いは無さそうだった。


「では、見物しようではないか。我々の歴史で夜戦の鬼と評価される彼の実力を。」


こんごうを含む第二護衛群は全速力で三川艦隊の後方を航行した。




―鳥海―


「海上自衛隊より、レーダー艦沈黙。貴艦隊の奮戦を期待す。」


「感謝すると返電せよ。」




敵と相対距離は共に有効射程まで入る。西洋の騎士と、東洋の武士との決戦。これが、太平洋戦争初めての本格的な艦隊決戦だった。


「照明照射!!」


照明で敵を照らし、両艦隊とも敵を捉える。


「撃ち方はじめ!!」


そして、両艦隊が同時に発砲を開始し、至近距離にて殴り合いを行う。しかし、指揮官を損失している連合軍が不利なのは明らかだ。砲撃は統制が取れず、殆どが遠弾だった。


「敵は相当焦っているようですね。」


「だろうな。魚雷戦用意!!」


夜戦の必殺技。日本海軍の酸素魚雷発射管が敵艦隊に向けられる。


「発射!!」


各艦が魚雷を放ち、一斉面舵を取る。だが、


「加古に敵魚雷命中。航行に支障なくも、戦闘不能。」


連合軍側も魚雷を放っていた。しかも、運が悪いことに今夜は新月。魚雷の航跡を視認する事など不可能だ。だが、酸素魚雷は直の事。


「敵巡洋艦3隻に魚雷命中。内、2隻が沈み始めます。残った1隻は速力大幅低下!!」


「集中砲撃!!止めを刺せ。」


加古を除く全艦艇が被雷した巡洋艦を集中攻撃し、沈めた。残った艦艇は撤退を開始したが


「追撃!!」


三川は逃げる敵を追い回し、巡洋艦1隻、駆逐艦4隻をその後に沈めた。そして、我が方の損害は加古が速力を低下するも無事に泊地へとたどり着けた。青葉と天龍は追撃戦にて敵の砲撃を浴び、小破という損害が出たが、沈没艦は一隻も無かった。


そして、この海戦から四日後、米国海兵隊とその護衛船団がソロモン海へと突入を開始した。

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