表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/33

29.マリア嬢

アランとベルが、エルテア国で一番格式の高い教会で結婚式を挙げるという。

帝国からもカイル殿下や弟のクロード殿下、ベルの友人たちが来るらしい。

その準備もあってか、王宮はいつもより少し騒がしかった。


(気にくわないわ!)

エリアーナ王女は扇を握り締める。

お茶会では、ベル嬢に言い負かされてしまった。

(外見に騙されて油断していたけど、今度はちゃんと言ってやるんだから!)


イライラしながら歩いていると、庭園から声が聞こえてきた。

第二王子で兄のギルバートが、女性と楽しそうに会話している。

(女性に不愛想なお兄様にしては珍しいわね。一体、誰とお話しているのかしら?)

興味をそそられたエリアーナは、正体を確かめるべく、兄の元へと向かった。


「ギルバートお兄様、ごきげんよう」

「エリアーナか。ちょうどいい、紹介しよう。帝国からのお客様で、ローデン伯爵家のご令嬢、マリアベル嬢だ。マリア嬢、妹のエリアーナだ」


兄の言葉に思わず「え?」と相手を凝視した。

噂のマリアベル嬢が今、目の前にいる。


「傾国の美女」とはまさに彼女のことを指すのだろう。

彼女がいるだけでその場が華やかになり、王女である自分が、彼女の存在に圧倒されて目を奪われる。

しかもただ美しいだけでなく、少し潤んだ瞳や、口元のほくろ、女性なら誰もがうらやむ見事な体のラインが、何とも言えない色っぽさを醸し出している。

妖艶な雰囲気なのに、彼女の場合、上品で気品すら感じるのだから不思議だ。

これは確かに、魔性の女と呼ばれるだけのことはある。


「王女殿下にご挨拶申し上げます。マリアベル・ローデンと申します」

声もカテーシーも美しく、何もかも完璧。


エリアーナはそれらすべてが気に入らない。

「マリアベル? あぁ、あなたの噂はいろいろと…」


エリアーナの含んだ物言いに、マリア嬢はコテンと首をかしげる。

「まあ、どちらの噂かしら。おとなしい外見の才女マリアベル、それとも派手で我儘なマリアベルかしら? ギルバート殿下はどちらだと思われます?」

そう言って兄を見上げる。


すると兄はマリア嬢の手を包み込み、優しく微笑んだ。

「貴女は派手でも我儘でもありませんよ。美しく聡明で、地上に舞い降りた女神のようだ」


歯が浮くようなセリフを口にする兄の姿に、エリアーナ方がいたたまれない。

咳払いをして話を戻す。


「お兄様とはどのような関係なのかしら? 随分と馴れ馴れしいですが」

「あらあら。王女殿下はギルバート殿下のことが大好きなのですね。でも、やきもちを焼かれるような間柄ではありませんのよ」


兄がプッと笑うので、すぐさま訂正する。

「やきもちなんかではありません! 距離が近いので、ふしだらでないかと。たかが帝国の侯爵家が、王族に対して不敬ですわ。そう言えば、ブライス卿と結婚する方も帝国の侯爵家でしたわね。失礼な方が多いのも納得ですわ」

そう息巻くも、うふふと軽く流された。


「エリアーナ、失礼なのはお前だ。ごめんね、マリア嬢」

「ふふ。久しぶりに叱られましたわ。帝国では私やベルを、ただの思い込みで悪く言う人はいなくなったので、新鮮ですわね」

「ちなみに、なぜ悪口を言う人が減ったんだい?」

ギルバートの問いに、マリア嬢は人差し指をそっと彼の唇の上に置く。

「私はね、こうやって直接相手の口をふさぐの。そうすれば何故か皆さん、私のファンになってしまうの。不思議よね」

「羨ましいな」


(はぁ?何それ。直接ふさぐって、それってキ、キス? それとも手で窒息させる? お兄様も、羨ましがっている場合ではありませんわ!)

エリアーナの動揺に構うことなく、マリア嬢は話を続ける。


「でもベルの場合は、社会的に抹殺するか、精神的ダメージを与えるかどちらかね。おとなしそうな彼女を侮って、好き勝手言う人か多いのよ」

「そういう輩は、どこの国でも一定数いるからな」

「ええ。そのような方々は皆、ベルに返り討ちにされて、おとなしくなりますわ。だから帝国では、彼女を正当な理由なく誹謗中傷する人は、よほどの馬鹿か、命知らずって言われているの。どうぞお気を付けくださいね」

そう言うと、エリアーナの方を見てにっこりと微笑んだ。


エリアーナはグッと唇を噛みしめた。

ベル嬢に意地悪した私を「馬鹿」と当てこすっているのだ。

ほんと、腹が立つ! 王族に対して失礼過ぎるわ。

結婚式なんか出てやるものですか!

帝国の女なんか大嫌いよ‼


扇を力いっぱい握りしめると、ピシリと音がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ