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27.ラブラブの2人

「王女殿下、突然の訪問をお許し下さい。妻がこちらに来ていると聞き、一目でも会えないものかと思い、来てしまいました」

アランはそう言うと、私の手を取って立たせ、腰に手を回し、髪を優しくなでた。

「ごめんね。ベルは来なくていいって言ったけど、我慢できなかったんだ。そのドレスも似合っている。帝国では、国王にも謁見できる正式な服なんだってね。でも次は、私の色をふんだんに取り入れたドレスを着て欲しいな。貴女を私の色で染めたいんだ」

そう言って甘く微笑み、頭にチュッとキスをした。



ちょっと待って!

いや、分かってる。分かっているわ。

アランがこの状況を見て参戦してくれていることは、ちゃ―んと分かっている。

でも、さすがにこれはないんじゃない?

「我慢できなかった」って何?

「私の色をふんだんに」って何の話?

ちょっとゾワゾワするんですけど?! こんなの慣れてないのよ~。

いや、ダメだ。落ち着け、私! 

今は、アランの気遣いを最大限利用しなければ。

どうする? 私はどう返せばいい? 考えろ、考えろ!


私はふと、魔性の女と言われるマリア嬢を思い浮かべた。

(彼女ならきっと、こうするはず…)

私は覚悟を決めた。



私はそっとアランの頬に手を添えて微笑んだ。

「ふふ。かわいい人ね。でも今はまだお茶会中よ。もう少し我慢してね」

するとどうだろう。

アランは頬に添えられた手を取り、その指先にキスをすると、ギュッと抱きしめた。

「あぁ、もう無理だ。今すぐ連れ帰って、君の全てを愛したい。王女殿下、退出の許可を頂けないでしょうか」

周囲に目をやると、エリアーナを始め、みんな顔を真っ赤にしてフルフルしている。

いや、私もだよ。恥ずかしくて死ぬ!


「わ、わかったわよ。退出なさい」

エリアーナの許可が出た。


アランはベルの腰をしっかり抱いて出口に向かったが、途中でくるりと振り返った。

「そうだ。ベルに気を取られて言い忘れていました。私たちは、離婚しませんよ。彼女は私の唯一ですから。使用人の躾は終わっています。それから私は、自分の言いたいことを皆様に代弁してもらうような、弱い男ではありませんから。ではお嬢様方、お茶会を楽しんで下さい」


話、全部聞こえていたのね。

一体いつから、どうやって聞いていたのだろう。

いずれにせよ、あの場にいた令嬢たちは気まずい思いをするに違いない。

まぁ、どうでもいいか。

茶番劇はこうして幕を下ろした。



帰りは公爵家の馬車だった。

「アラン、いくら何でもやり過ぎです」

私は涙目で抗議したが、アランはニコニコ笑うばかり。

「顔から火が出るかと思いました。でも、ありがとうございます。今日のお茶会のこと、ララ先生に聞いたんですよね」

「ああ。前のお茶会では1人で行かせてしまったからね。もう僕は、ベルを1人で戦わせたりしない。これからは一緒に頑張ろう。嫌な事も楽しい事も全部一緒だ」


その言葉に涙が溢れそうになる。

「守りたい」ではなく「一緒に」という言葉が、私は何より嬉しい。


気持ちをごまかすため、赤くなった顔を手のひらでパタパタとあおいでいると、アランは何を思ったのか、私の髪や頬にキスをしてきた。

「ちょっ、ちょっと、もうお茶会は終わったんだから、やめてよ。普段のあなたは、そんな事しない人でしょう⁈」

「我慢していただけだよ。ベルだけが特別だし、本当はもっとしたい。あぁ、お茶会での君のあの言葉や仕草も、一生忘れられそうにないなぁ」

アランはそう言って、ニヤリと笑う。


ぐはっ。勘弁して。本当に血吐くから!

「もうやだ」

私が顔を覆うと、アランは楽しそうに声を立てて笑った。

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