24.アランは恋する
「ベルはもう起きた頃か」
朝起きてすぐ、彼女のことを思う。
自分がまさかこんなにも誰かのことを思い、すぐに会いたくなるとは思ってもみなかった。
最初は、申し訳ない気持ちと、とにかくベルと向き合おうという気持ちでいっぱいいっぱいだった。
しかし何度も同じ時を過ごし会話していくうちに、彼女と過ごす時間が心地よいと感じるようになっていった。
例えばアランは、貴族特有のオブラートに包んだ言い回しが苦手だ。
言いたい事をストレートに伝えると嫌な顔をされるし、相手の曖昧な言い方にピンとこなかったら呆れられる。匂わすだけの言い方は、性に合わないのだ。
ベルはその辺の使い分けが上手だが、アランに対してはストレートにものを言う。
その言葉は時々、カイルの心をサクッとえぐることもあるが、はっきり言ってくれる方が分かりやすくてありがたい。
それに彼女は、騙してやろうとか付け込もうとか一切せず、誠実に向き合ってくれる。
むしろ、そういう輩がいるとベルが率先して撃退してくれる。
明るくて前向きなところや、さりげなくサポートしてくれる優しさにも好感が持てた。
ベルのことを知れば知るほど、アランは彼女をどんどん好きになった。
「マリアベル嬢、その、もし良ければベルと呼んでもよいだろうか。僕のこともアランと呼んでもらえたら嬉しい」
そう言うと、仕方がないわねという顔をして彼女は頷いてくれた。
「まぁそもそも、自分の奥さんに向かって『マリアベル嬢』って呼んでいる時点でおかしいことなんだけどね」
そう言って、アハハと笑う。
いや、その通りなんだが…うん、ごめん。
呼び名が変わるだけで何となく2人の距離も近づいた気がする。
屋台のクレープを食べに行った時には、人の多さを理由に、手を繋ぐことにも成功した。
彼女は食べる事が好きなようで、何でも美味しそうにパクパク食べる。
その食べっぷりは見ていて気持ちがいいし、食べさせ甲斐がある。
(食べている時の顔も可愛いなぁ)
アランはベルを愛おしそうに見つめた。
「あの、そんな顔、やめてもらえます?」
「ん?どんな顔?」
自分の顔を触ったがよく分からない。
「はぁ…もう、いいです」
呆れたように言われ、心にダメージを受けた。
それでも彼女が笑っているので、まあいいのかなと思えた。




