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20.ベルのいない部屋

(あぁ、本当に出て行ってしまったんだな)


アランは、きれいに片付けられた客室を見回した。

そこは最初から誰も使っていなかったように、完璧に整えられていた。

使用人はまだ誰も入室していない。

ということは、マリアベル嬢本人がこのように片付けたのだろう。


物置部屋も掃除され、廃棄する物と修繕可能な物とがきちんと分けられていた。

彼女はこの部屋の物品リストを作成しており、修繕する場合の大まかな費用まで記してあった。


なぜ自分は、手紙のやり取りを通して知った彼女を信じず、噂を信じてしまったのだろう。

手紙では、誠実で温かい人柄だと感じていたのに。

たった1人で嫁いでくる彼女を信じて守ってやれるのは、自分しかいなかったのに。

考えれば考えるほど、後悔ばかりが押し寄せる。


しかしいつまでも、クヨクヨしていられない。

ララ先生が言ったように、マリアベル嬢の信頼を取り戻す努力から始めないと。


アランはまず、使用人たちを集めた。


「今日、マリアベル嬢が出て行った」

この言葉に、使用人たちの反応は様々だった。

「自分たちのせいで…」と落ち込む者もいれば、「やっぱり離縁か。そうなるよな」と納得する者、「出て行くほどの事か? 大げさだなぁ」と呆れる者等。


ざわつく人々を、アランは手で制した。

「ララ先生曰く、彼女には心と体の元気を取り戻す時間が必要なんだ。私としては今後、離婚ではなく、関係修復のため動く予定だ。協力してもらえるだろうか」


アランの言葉に真っ先に反応したのは、トーマスだった。

「もちろんです。協力は惜しみません。奥様が元気になりましたら、我々も信頼回復のため、努力したいと思います」

アランは頷くと、使用人たちを見まわした。

「トーマスはこう言ってくれているが、皆には、それぞれ思いもあるだろう。彼女が戻ってきてくれたら、使用人の雇用や働き方の見直しが必要になるし、彼女の意向もあるだろう。だから、これから先もここで働きたいのか、彼女との関係を築く努力ができるのかどうか考えて欲しい。もちろん、私は君たちを無碍に扱うつもりはないから、他所に移るなら紹介状も書く。そこは安心してくれ」


アランの言葉に、使用人たちはまたざわついた。

このまま屋敷で仕えるのか、他を探すか。マリアベル嬢に拒否される可能性だってあるのだ。彼女の信頼を取り戻せるのか否か。きっとしばらくは居心地の悪い思いをするだろう。なら早々に別の場所で働くべきか…。

使用人たちは各々、顔を見合わせた。

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