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19.ベル、家を出る

部屋に来たアランは、ベルの元気そうな姿に、安堵の表情をみせた。

しかしララの提案を聞くにつれ、だんだんと顔色が悪くなっていく。


「マリアベル嬢、あなたもララ先生の提案に賛成なのか?」

「はい。ここをしばらく離れて、心身ともに元気を取り戻そうと思います」

その言葉に、アランは少し俯いたが、すぐに顔を上げた。

「マリアベル嬢。厚かましいお願いだとは思うが、僕にチャンスをくれないだろうか」

「チャンスですか?」

「ああ。僕は君ときちんと話をして、一から関係を築きたいと願っている。だから共に過ごす時間を作ってほしい。この通りだ」

そう言って、頭を下げた。


ああ、この人…聞いた通り、本当にまっすぐな人なんだなぁと思った。

自分が悪いと思ったら、公爵家のプライドなんか捨てて、なりふり構わず謝ってくれる。

そしてきちんと向き合いたいと言ってくれる。


「わかりました。私の話をきちんと聞いて下さるなら」

そう言うと、アランはほっと息を吐き、頭を下げた。

「ありがとう。本当にありがとう。できる限り時間を作って会いに行くよ。見せたい景色や、紹介したい場所がたくさんあるんだ。一緒に出掛けて、いっぱい話そう」

私はコクリと頷いた。


「あと一つ、確認したいんだが…」

アランは眉を下げ、不安げに私の顔を見た。

「その、もし今後、分かり合えないと思ったら、やはり離婚になるんだろうか」

「そうなりますね」


あっさりした答えに、アランはガクリと頭を垂れた。

それをみて、ララは大笑いする。

「何しみったれた顔しているんだよ!この先どうなるかなんて、誰も分からないんだ。今はとにかく、ベルさんに気持ちを向けてもらえるよう努力しな」


ララにどやされ、アランは顔を上げた。

「マリアベル嬢、僕はあなたが心を開いてくれるよう、最大限努力すると誓うよ。僕は誠心誠意、君と向き合うつもりだから、覚悟して欲しい」

「あ〜、重たいのはちょっと…」

引き気味の私の顔を見て、ララは「あきらめな」と言ってまた笑った。


それから1週間後、ベルはララと一緒にこっそりと家を出た。

使用人たちの目の前でこれ見よがしに出て行くのは、何だか気が引けた。

主人に忠実な彼らが、あのような態度を私に取ったことは、何となく理解できる。

じゃあ何事もなかったかのように彼らと過ごせるかと言われたら、今は自信がない。

恨んではいないけど、やはりあの時の辛い気持ちは消えないわけで…。


「その辺りのことも、少しずつ折り合いをつければいいさ。ここを離れて、外側から公爵家を見たら、また違う考えができるかもしれないからね」

ララの言葉に、私は頷いた。

今は無理でも、少し距離をあけて、心が元気になったらまた考えよう。


こうして私は公爵家を出た。

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