16.アランの奔走
ララは街に治療院を持っているようで、そちらの仕事が終わると顔を出しに来てくれる。
彼女がいない間は、助手のミラーが来て世話を焼いてくれた。
使用人たちは「合わせる顔がない」と言って、部屋の向こうで手伝ってくれているそうだ。
体が少しずつ良くなるのと共に、私が倒れている間の様子も知ることができた。
要は、私に対する間違った情報が正されたということだ。
アランが帝国でカイル殿下と会い、マリアベルが2人いることを初めて知り、悪女と噂されるマリア嬢と私が、全くの別人だと理解したそうだ。
(ふ~ん、私の話は聞かないけど、カイル殿下の話には耳を貸すんだ)
全くもって、いい気がしない。
カイル殿下からも、長い長い手紙が届いた。
アランが海よりも深く反省していること、根は本当に真面目ないい奴で、まっすぐな性格だということ。そしてアランとの出会いから、共に過ごした時の数々のエピソード、別れた後の交流等々。
それはもう熱く語った文章だった。
(殿下とブライス卿は、恋人か何かなの⁈)
そう思うぐらい、ラブラブエピソード満載だった。
おそらく殿下なりに、アランの良さをアピールして挽回してやろうと思ったのだろうけど。
何だろう…「自分の方が彼をよく知っている」とマウントを取られた気分でモヤモヤする。
アランと側近のトーマスが何度も部屋を訪れ、謝罪の言葉を繰り返す。
すぐに許すべきだろうけど、今はまだ自分の身体で精一杯。
見かねたララは、
「あなたたちは、一刻も早く罪悪感から解放されたいだけだろう? 自分勝手にも程がある。この子はまだ療養中だ。しばらく来るな」
と追い出した。
その時のアランの顔ときたら…!
いや言うまい。とにかく落ち込み方がひどかった。
出入り禁止になったアランは、マリアベル嬢の情報を正そうと奔走した。
そう、彼は真面目でまっすぐな男なのだ。
嘘をついた親戚のハミルトン伯爵令嬢には、抗議の手紙を送り、交流を断つと宣言。
他の親戚たちの家を回り、マリアベル嬢の正しい情報を伝えた。
貴族たちが集まるサロンにも顔を出し、自分の勝手な思い込みで勘違いをしたことや、マリアベル・ローゼン侯爵令嬢がとても優秀な女性だということをアピールした。
今日はエリアーナ王女と謁見した。
「アラン、久しぶりね。帝国との国境警備の話し合いも無事に済んだと聞いたわ。ご苦労様。それで、私にどんな用事なのかしら?」
「妻マリアベルに対する誤解を解きたくて、今日は参りました」
アランが必死に説明するも、エリアーナは関心がないのか、退屈そうに聞いている。
「とにかく、妻となったマリアベルは、噂の女性とは違います。今後は誤解のないようお願い致したく」
「ねえアラン。何か勘違いしているようね。私たちはお茶会で、帝国にいる自由奔放なマリアベル嬢の噂話をしていただけよ。あなたの奥様の話ではないわ」
「しかし」
「それに、奥様がお茶会に来てくださっていたなんて、私知らなかったわ。アランは仕事で来られないってことだったから、彼女も欠席だと思ったの。来ていたのなら、声をかけてくれたら良かったのに。あら、もうこんな時間。じゃあまたね」
ここでエリアーナ王女との謁見は終了した。




