15.ベルの困惑
ベルが目を覚ますと、年配の女性と目が合った。
「どうだい?調子は」
「…何とか」
ガラガラの声をどうにか出すも、すぐにせき込んでしまう。
女性はそっと頭を起こしてくれ、水を少しずつ飲ませてくれた。
「私の名前はララ。医者だよ。貴女は肺炎をおこして倒れた。それをアランが発見して、私が治療した。まあそういう訳よ」
「…はぁ。それは、どうもありがとうございます」
簡単すぎる報告に、いまひとつ状況がつかめず、ぼんやりとする。
辺りを見回すと、見慣れない部屋にいた。
きれいな壁紙やカーテン、ふかふかのベッド、高級なチェスト…元いた部屋とは違う。
「ここは…」
「公爵家の客室さ。貴女は病人だし、こうなった原因はアランにあるっていうし、まあ存分に使ってやりな。さて、あの子に知らせに行くか」
ララはそう言うと、部屋を出た。
やはりまだよく分からない。
急にこんな豪華な客室に移されたということは、自分が臥せっている間に、何か状況に変化があったのかもしれない。
そこへ、アランが部屋に飛び込んで来た。
彼は私の手を掴むと、安堵の息を吐いた。
「良かった。本当に良かった。このまま貴女に謝ることもできず、死んでしまったらどうしようかと、夜も眠れなかった。貴女を失わずに本当に良かった」
(えっ⁈ 誰、これ…)
豹変したアランにビックリして、思わず握られた手をバッと引っ込めてしまった。
その瞬間、アランは半泣きの表情になった。
「すまない。いきなり、こんなこと言われても困るよな。戸惑うのは当然だ。いや、わかっているんだ。でも…」
もごもごするアランの背を、ララはバシンと叩いた。
「はいはい、無事を確認したなら、とっとと出て行っておくれ。この子にはまだ安静が必要なんだ」
シッシッと追いやられ、アランは何度もこちらを振り返りながら部屋を退出した。
「えっと、先生と彼はどういう…」
「ん? ああ、赤ん坊のアランを取り上げたのは、この私さ」
あぁ、そういう間柄だからあの気軽さか。納得した。
いや、それよりも‼
さっきの何⁈
アランは一体どうしてしまったのだろう。
え?もしかして私は一度死んで、パラレルワールドにでも転生した?
それとも、私をまた別の誰かと勘違いしたとか⁈
混乱する私を見て、ララは笑った。
「起きたらいきなり状況が一変しているんだもんね。そりゃあ驚くさ。おいおい説明してあげるよ。さ、その前に」
ララは薬も飲ませてくれた。
久しぶりの固形物に、胃がキュッとなった。




