第43話 予想外のメンバーで飲み会
「ねぇ、なんでここにいるの?」
空翔のアパートの半分開けたドアの前、孝俊が夏楓と目を見合わせる。
「な、な、なんで夏楓がここに来るんだよ」
「なんでって、別にいいでしょう」
「は?! まさか。元さやに戻るとかの話じゃないよなぁ。俺はやっぱり夫としてダメダメだから、空翔の方が良かったとか言わないよな!?」
「ちょっと、待ってよ。なんで孝俊が空翔のこと知ってるのよ。私一度も言ったことなかったのに……」
眉をしかめて、顎に手をつけながら、話す夏楓を見て、何だか自分自身に自信を無くす孝俊は膝を抱えて、いじいじと床をいじり始めた。
「おいおい、まだ治ってないんだから大きい声出さないでもらえるかな……って、夏楓?」
リビングの奥の方からまだ熱が下がってない状態の空翔が玄関にやってくると、何やら揉めている孝俊と夏楓を見た。
「え? 何? これ、夫婦喧嘩を俺の家でしてるの?」
「……違うよ!」
夏楓は完全否定した。空翔は体調不良も含めて、どっと疲れて、ため息をついた。
「勘弁してくれよ。痴話喧嘩はよそでやってくれない?」
孝俊の服の首根っこをつかんで玄関に出した。孝俊の涙が雫の状態で鈴のような音色がなりそうだ。夏楓は、孝俊におされて、通路の壁まで押し出された。
「え、あ、待って。空翔!」
「え?」
「あー……私のお弁当も入ってるから、袋もらえるといいんだけど、この間のお礼にスイーツ買って来たんだ。良ければこれ」
ビニール袋の中身はコンビニで買った果物パフェのシャインマスカット・桃・モンブランの3つあった。さらに、夏楓の夕食であろうから揚げ弁当があった。空翔は、数を数えて、人数を照らし合わせた。
「……なんで人数分あるんだ?」
「あ、ちょっと、美味しそうだったからおまけに買ってきてみた」
夏楓は、にこっと笑顔にしながら、お腹の音を出した。仕事が終わってからずっと食べておらず、お腹がすいていた。
「……腹減ってるの?」
「うん」
頬を赤くして下を向く。空翔は手に腰をあてて、仕方無いなとため息つきながら、顎で指示を出す。
「え?」
もう一度、空翔は顎を動かす。通路でいじけている孝俊は、気にしていない。
「中入れば?」
「いいの?」
「テーブル貸せばいいんでしょう」
「うん。ごめんね、本当はそんなつもりはなかったけど」
「……本当かな」
「えへへへ……」
空翔は、孝俊の背中を静かに押して、3人で夏楓が買って来たスイーツを一緒に食べることにした。テーブルの上、いつの間にかパーティのように食材が並べられた。冷蔵庫の中の飲み物を飲んでと空翔が言うと、孝俊は大きいビール缶を見せた。
「ああ、良いよ。飲んで」
「マジか。やった。これもいいか?」
チルド室に入ってたウィンナーを取り出す孝俊に睨みをきかせる。
「調子乗りすぎ……今、つまみ用意するから座って」
空翔はソファから立ち上がり、孝俊とバトンタッチで台所へ向かう。夏楓はお酒が飲めるとあってご機嫌になってきた。いつの間にか出来上がっている。アルコール度数の9パーセントのチューハイを飲んでいた。空翔は、夫婦も好きなお酒が入ると喧嘩もせずに自然と話すのかと安堵する。保護者目線で見るのも悪くないと感じ始めた。
窓の外、車が1台ヘッドライトを光らせて、走り抜けていった。
3人の笑い声が響いていた。




