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珈琲〜Coffee〜  作者: 餅月 響子


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第32話 再会と揺れ動く心

最近人気のカフェの『プードル』のお店に入ると、空翔(たかや)は、体が硬直する。エプロンに可愛い三角巾をかぶった会計をする女性が馴染のある女性だったからだ。


夏楓なつは……」

 思わず声が漏れた。言わざるを得ない。心の声が漏れたみたいだ。


「ありがとうございました!」

 夏楓は、ちょうど会計を終えたお客さんをお見送りするところだった。経営者にも関わらず、どうしてここにいるのだろうかと不思議に思う。


「いらっしゃいませ。あ、あれ。空翔。来てくれたんだね。どうぞ、ごゆっくり」

「あ、ああ」


 忙しいそうで空翔はその一言しか言えなかった。夏楓はそそくさとまた会計レジのところへ戻って行った。


「部長、お知り合いですか? 何だかお忙しそうですね」

 石澤はひょこっと横から声をかける。


「……まぁ。知り合い」

 ぼーっと空翔が夏楓の様子を見つめているのを見て、石澤は下唇を噛んでいた。自分には興味ないのに、どうしてあの人にはじっと長い間見ているのだろうかと気になった。


「え、なんですか? 部長の元カノ?」

 木下がずいずいと割って入って来た。その一言でくわっと鬼のような顔をする石澤だ。


「嘘だぁ」

「え? まんざらでもないみたいだけど……?」

木下は顔を真っ赤にする空翔を指さした。


「違うって。何を想像してるんですか!」

 空翔は顔を赤くしながらも木下に注意する。木下は逃げるようにホールスタッフに案内されて、奥の方へ行く。案内したのはパート勤務の有希菜だ。耳をダンボにして話をじっと聞いていた。


〈社長の元カレだって? ……それは初耳だ〉


「お席はこちらです。ご注文がお決まりになりましたら、ブザーでお知らせくださいませ」

「あ、ありがとうございます。ほら、石澤さん。決めますよ」

「ちょっと待って、亜由美ちゃん。私、今思考停止中」

「なんでですか」

 木下と石澤はやれそれコントのようにやり取りが始まった。空翔は2人を気にせず、頬杖をついて、会計の仕事を熱心に作業する夏楓を見ていた。次から次へとお客さんの出入りしている。たまたま空翔たちが入った瞬間に席が開いて、運がよかったなと感じた。


「部長が明後日の方向見てますけど、注文どうするんですか。ランチだからラテアートとセットでいいですよね。サンドイッチでいいかなぁ」

「うーん、私は、部長と一緒でいいです。部長、部長はどうするんですか?」

 ぼんやりしている空翔にポンポンと肩をたたいて石澤は声をかける。

「え? ああ。2人に合わせるよ」

「適当な返事っすね。やばいです。部長。適当さが仕事に出ないといいんですけど」

 亜由美は頬をぽりぽりとかいて、呆れている。

「本当、部長。おかしい! いいや、変なの頼んじゃお」

「え? 変なのって何ですか」

「これこれだよ。これ」

 石澤はメニュー表を見て、フライドポテトのレッドペッパー味も一緒に注文することに決めた。おしゃれなカフェかと思ったら、遊び心があるなとにやりとしていた。


「ブザーで押して!」

「はいはい」

 石澤と亜由美は、2人だけ会話してる状態だった。空翔はずっと頬杖ついてぼんやりしてる。仕事では見せない姿に2人は不思議に思う。まさかのそこへ、注文を取りに夏楓が来た。


「お待たせしました。ご注文どうぞ」

とびっきりの笑顔で注文を受けた。

「すいません、このセットを3つと追加でこれをお願いします」

 亜由美は、メニュー表をゆびさして、てきぱき注文した。空翔は何を注文したかなんて何も覚えてないし、聞いていない。ずっと夏楓を見ていた。


「今日、なんでホールに出てるの?」

 突然、空翔は、夏楓に話し出した。


「え。えっと、社員の人が熱出して休んでるから穴埋めしてたんですよぉ。ご注文承りました。少々お待ちくださいね」

 雑談も少しだけに空翔は素直にご不満顔だ。石澤は横でその様子を見て、ご立腹だ。亜由美は肩を撫でてどうどうとなだめた。

 夏楓が立ち去った後に思わず発言する。


「部長、あの人のどこが好きだったんですか?」

「え?」

「ちょっと、奈緒美。ストレートすぎるよ」

「だってぇ……」

「うーん。仕事熱心なところかな……」

 またぼんやりと見つめ始めた。本当はよりを戻す気なんかサラサラないのに遠くにいるこのフィールドで見つめる瞬間が心地良かった。今まで遠く離れて別々に暮らしていたせいか、どんな行動しているのかが気になってしまった。交際しているわけじゃない。ただただ気になった。そこから進展させるつもりはなくても無意識に目で追いかけている。首を横にぶんぶんと犬のように振って気持ちを切り替えた。


「あー、悪い悪い。んで、なんだっけ」

「何も話してませんよ。部長の視線の先が気になります」

「私も猛烈に同意します!」

「視線? カフェの作りとか見てる。コーヒーの種類とか?」


 空翔はメニュー表を見返して、どんなものがあるのか確認した。ごまかすのに必死だ。女子2人はじーと睨みつけてご不満だ。そのやり取りを込み具合のピークを越えた夏楓が空翔を見つめていた。女子との会話が盛り上がっているなんて成長したなと感心していた。


 店内BGMは空翔の好きなジャズが流れていた。女子社員2人の喋りに右から左へ聞き流すという技を身につけた。

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