炎竜の契約者が決まらない
思いついた話の断片です。
私が生まれて初めて目にした光景は、自身の欠伸で半分消し炭になった、人間が言うところの竜舎でした。
生まれたときから、属性がはっきりしている竜は珍しいらしく、私のお世話係の優しいお姉さんは「先祖返り」と言って、私をなでなでしてくれる。もっとして!
竜は生まれたときから、人間で言うところの大人並に、考えることができるってお姉さんが教えてくれた。
これは、竜族が感情を後世に伝える力を持っているからなんだとか。竜って凄いね!
食っちゃ寝生活をしばらく堪能していたら、ある日、仰々しい格好の人たちが、私を大きなキラキラした建物に連れ出した。
もうちょっと丁寧に、優しく運んでくれないかな? 籠の中でグラングラン、目がまわるから辞めて下さい。
煌びやかな服を着た人間たちが、一斉に私を見るものだから、なんだか鼻がムズムズしてポフリとくしゃみが出てしまった。
目の前に立っていた、人一倍輝く服装をしている人に炎の息を吹きかけてしまった私ですが、怒ってます? ほんとすみません。子どもなので力が制御できず。
襟元焦がしてごめんね?
その後私はまた仰々しい服装の人たちに、竜舎に連れ帰られましたとさ。
この一連の流れに何か意味はあったのだろうか? 分からないので、世話係の元気なお兄さんに聞いてみた。
なんか世話係の人たちは皆、私の言葉が分かるみたいなんだよね。神秘ー。
お兄さんは楽しげに色々と教えてくれた。
「炎竜ちゃんが連れて行かれた場所は王宮で、竜との契約をする儀式の間だったんだよ。
でも炎竜ちゃんが王子の服を駄目にしちゃったから、儀式は延期になったんだ」
他にも儀式のあれやこれや、人間の竜に対する憧憬、竜騎士について、沢山話してくれたけど、私の脳みそはそこまで高性能じゃ無かったみたい。覚えられなかったよね……。
契約の儀式は私の契約者が決まるまで続けられるらしく、王宮に連れて行かれては見世物になり、竜舎に戻されるを永遠と繰り返した。何度も行き過ぎて、王宮の煌びやかさに飽きるくらいに。
そしてとうとう今日は、王宮じゃない場所に連れて行かれるみたいです。
私の入った籠が、狭くて四角い入れ物に乗せられたからね。
ガタゴト四角い入れ物が動くたび、私の体は縦に横にフラフラ揺れる。グッと足に力を入れないと倒れちゃうんだけど! もう少しさ、固定するとか何とかならなかったのかな。竜の扱いが雑なのよ、あの仰々しい服の人たちめ。
ああ、早く私の契約者、決まらないかな。
大切にするからさあ!
END
お読みいただきありがとうございました。