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二つ

 遥か数万年以上過去に、存在し栄華を極めた種族がいた。


 地球で現在考えられる文明レベルは1にも満ちてはいない。


 このかつて存在していた文明と比較するならば──10を遥かに凌ぐ科学技術を有していた事が様々の宇宙統一歴からも明らかである。


 見た目も種族も人間。

 そう、現在の地球人と似たような分類だ。

 彼らは宇宙に飛び立つと瞬く間にその技術力が飛躍していき、様々なことを成し遂げていった。


 成した事は数え切れない。

 宇宙生物と接触したのも彼ら。

 様々な惑星を発見し分析したのも彼ら。


 現在の我々の技術力からすれば、理解できない様な世界の生物たちだ。


 遥か古代の文献には宇宙人として登場したとも知られ、その影響力は1つの宇宙だけにはとどまらず、複数の外宇宙にも手を伸ばしていった。


 彼らは自分たちでクリーンな資源と技術力を手にし、いわば無敵に最も近い種族にまで発展した。


 ──しかし。


 面白い事に、彼らの種族は内部で分裂を起こし、戦争で結局身を滅ぼしたのだ。


 生き残った彼らの技術力で、"変義体"という現在の我らでいう所の人間に最も近いような細胞、情報が入った体だが、繁殖などの行為は出来ない身体のことだ。

 それらを限られた資源を使って、記憶とデータを移行させた状態で生き続けた。


 当時彼らの資源に限りがあり、王族以外の者たちは肉体を捨てざるを得なかった。


 ──結果どんどんその数は減っていき、王族だけが最終的に生き残る事になったのだ。


 だが。結局のところ、生き残ったのはただ一人。

 皮肉な話だが、生き残ったのは⋯⋯人間の年齢で考えると末っ子の当時8歳の子供だったのだ。

 しかも、同族の中でもありえないと言われていたほどの生まれながらにして天才という遺伝学の学問を突出する程の才能を持つ子供が生まれたのだ。


 だが、王族の彼らはその子供の異常性を理解できぬまま⋯⋯資源をすり減らして死に至った。

 残した子供にメッセージだけを残して。


 たった一人残されたその孤独な天才は、現状を変えるべく動き出した。我々の想像とは違って、勉強、情報、未来、全てのデータは彼らにとっては朝飯前。


 ただ、王族の彼らは活かしきれず、酷く無能だった為、滅んだのだ。

 一人の子供は8歳にしてそれらの感情と理解を出来るほどの天才性を持っていたのだ。

 

 ──その能力はとてつもなく。


 たった数年で資源を回収し、遺伝学、歴史に基づいたパターンを把握して障害を回避。

 時間にして1000年で当時栄華を極めたと言われている時代の5割まで力を取り戻したのだ。


 しかし天才は、孤独だった。


 彼は宇宙生物を家族として迎え入れ彼らに役割を理解させて更に数千年の時を経て一人国家を築いたのだ。


 もし、この少年がもっと早くに産まれていたら。

 などと言うのは愚かだろう。


 一人国家だとは誰も思わない。

 現在でも彼らは存在すると様々な宇宙の人種たちは恐れ、常に構えている。


 だが、実質的な人間はただ一人。


 その天才の名は、


 ジェネシス・アークハイルレ・ドルブヌン(以下略)・スーウェンアイビス


 名はジェネシス。

 最後に彼の前で死んだ召使いの一人が名付けた。

 彼の身内で使われていた言語では天才という意味を持つ名を、その召使いは付けた。

 まさにこの者の為にあったのだと言わんばかりに。


 ⋯⋯本人がそれを理解する事は永遠にない。


 彼は自らの種族の歴史を把握しているため、これ以上同族を増やすのは避けたかった。

 しかしそうも言ってられないのも事実であり、ジェネシスは早速自分の遺伝子情報をベースにもう一つ作ったのだ。生命を。


 ──どうやら、それが、今の自分。


 記憶領域は自分たちの遥か昔に存在した過去の人間のデータであり、人格の一つだそうだ。


 半分がジェネシスという人格。

 もう半分が伊東俊平という、遥か昔に存在した自分の記憶。


 本物は生きる事に飽きたようで、現在も寝ているようだ。本人が残したビデオメッセージのようなもので、こう締めくくられていた。


 『伊東俊平さん。あなたの時代では考えられないことが起きているでしょう。是非楽しんでください。私はきっと起きたくはないのでしょうね。その為、きっと貴方と会うこともないと思います。だから部下たちにはある程度だけ伝えおきましたから、焦らなくても問題ありません』


 『理解していても、私は罪の意識を感じて今の自分から変われないと思います。増やすも増やさないも貴方の自由。ここまで来たので、滅んでも更に発展しても良いです。私は誰かに託したかったのだと思います⋯⋯きっと。では──私は永眠します。もし困ったら、起こしてもらっても構いません』


 きっと自分の時代に存在していたのなら、彼は人間国宝として大事にされていただろう。


 銀髪に合成かと思うほどに整えられた顔。

 全てにおいて完璧な男だった。


 そんな彼は、最後にそう言い残してその美貌に似合わぬ爽やかな笑みを浮かべ、眠りについた。

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