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フレッシュ畜生毎朝直送

作者: M社畜

私は毎朝、当然のように電車に乗る。

電車に乗るとそこそこ長い距離を乗らないといけないため、座りたくなるものだ。


だが、今日は電車が動かないうちに席に座ろうと思ったら、唯一空いている席の隣の、シートの端っこでおっさんが幅を利かせていて……。


まあ座ったんだけど。


私にはわかるぞ。テメェの右側には十分な隙間がある。

その隙間を埋めるため、私は狂ったようにノートパソコンを叩いて自分の自尊心を発揮する矮小な器のおっさんを少しずつ右に追い詰めていく。


だが、電車がちょうど目的地までの半分ぐらいの距離を移動したあたりだ。この懐かしのゲームを思い出すような単調かつ根気の必要な作業に疲れ果ててしまっていたところで、ハッとしてしまう。

気付いてしまったのだ。自分がなんて小さな世界にこだわっているのか、という事に。


もう少し力を入れて詰めてやったほうがいいんだろうか、なんて思っていたのも、その事実に気付いてしまうと、なんとも、そもそもが頭の悪い話に思えてくる。


第一に、なんで私は接客業でも、工場でパッケージングをするパートのおばちゃんでもなく、ただのパソコン仕事なうえに、会議は全てリモート開催だというのに、在宅業務を許されずに毎朝毎日出勤を強いられなければならないのか。


なんで、理由の説明もろくにできないくせに、必要のないことを他人に強いるような頭の悪い人たちに合わせて、この人生の中の若いうちの貴重な限られた時間を無駄な移動時間に割り当てなければならないのか。

しかも、ひらがなのゆるい名前をした完全リモート操作の全自動貨物輸送列車に押し込められて。


学生時代からずっとそうだった。それを馬鹿っみたいに顧みず、禄に反省もせず、自覚することすらせずに、ずーっと続けているのだ。

ゲームだったらどうだ?どうしてアイテムがあるのに、それを取らずに基本操作だけで戦っているんだ?これはただの縛りプレイじゃない。みんなやってる。だが、アイテムを取ったら牢屋に行くようなルールも存在しない。私はマゾなのか?


隣のノートパソコンに付属している態度の悪い老害おじさんの見た目をした畜生をはじめ、電車を降りる頃には世界の景色が随分と違って見えた。

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