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I am Aegis 3  作者: アジフライ
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第33話【古の記憶】(後編)

前編からの続き……

『……立ち去りなさい……ここは……来てはいけない……』

「何故そんなに情報を渡したくないんだ? 」

塔の上に目指しながらイージスは謎の声と話した。

『それは……』

謎の声は言葉を詰まらせた。

やっぱり何か理由があるんだ……なら尚更話を聞かないと。

イージスは宙に浮かぶ本棚を踏み台にしながら上に飛び上がって行く。

しっかし何なんだこの塔、 上がっても上がっても上に着く気がしない!

すると上の方に光の壁らしきものが見えてきた。

「よし、 あそこが最上階だな! 」

イージスはそのまま光の壁に突っ込んだ。するとそこは……

「イ、 イージスさん! ? 」

「イージス様! ? 」

「皆! ? 」

守護者達がいる一階部分に出たのだ。

そういうギミックかよぉぉ~~!

「うーん……上から行ってもまた戻るだけ……だとすれば……」

イージスは床を見つめた。

ここしか無いよな……よし!

「皆、 離れてて」

『は、 はい! 』

するとイージスは拳を構え、 床に思い切りパンチを打ち込んだ。床には大きな穴が空き、 そこからは風が吹いていた。

やっぱり! 上から行っても駄目なら下に戻ってみればよかったんだ!

「イ、 イージスさん……」

ミーナが心配そうにイージスを見ている。

「大丈夫だ、 今度こそ行ってくる」

そう言うとイージスは穴の中へ入っていった。

穴の中はどこまでも暗闇が広がり、 目の前すらも見えない。

(スキル、 暗視が発動します。)

……駄目だ、 何も見えない……そもそもの明るさとか暗さとか存在しない空間なのかもな……

しばらくイージスは下へ降りていった。

数分後……

「おっ、 やっと足が着いたか? 」

相変わらず周りは何も見えなかったが足場らしき場所に降りることができた。

『……何故……立ち去らないのです……』

例の謎の声と共にイージスの前に一筋の光が照らされた。そこには一本の白い樹木が生えており、 その下に一人の少女が立っていた。

少女の周りに雪のような粉がはらはらと降り注いでいた。

「君が……」

「何度でも言います……ここの情報は持ち出すことは許されません……」

近くでよく見ると少女の瞳は銀色に輝いており、 身体全体は髪の先まで雪のように真っ白だった。

……服は一応着てるか……めっちゃ露出してるけど……でも何だか模様とかがいかにも古代って雰囲気だ……

「……こんな所に来てまで……情報が欲しいのですか……古の……記憶を……? 」

「何故君はここの情報を渡したくないんだ? そこまで断るなら何か理由があるんだろ? だから直接聞くためにここへ来たんだ」

すると少女はイージスの目の前から光の粉になって姿を消した。辺りを探すと少女は白い樹木の枝の上に座っていた。

そして少女は今までこの地で何が起きたのかを語りだした。

「……かつて……ここの文明は栄えていた……」

メゾルポルテのことか……

「……皆とても幸せそうにしていた……とても平和な国だった……でも……その幸せの時間は……永遠じゃなかった……」

「邪神が現れたからか……? 」

イージスが聞くと少女は静かに首を横に振った。

ガインのせいで滅んだんじゃなかったのか! ?

少女は話を続けた。

「私たちの文明は……とても進んでいた……それはどこの国も羨む程に……いつしかその技術や知識を巡って……大きな争いが始まってしまった……」

……なるほど……ガインが現れる前からメゾルポルテは滅ぶ運命にあったっていうことか……

「私たちメゾルポルテの民は……争いが嫌いだった……その優しさが故に……私たちの国は……滅ぶ寸前まで追い込まれてしまった……」

すると少女はイージスの前に降りてきた。そして少女はイージスの胸に手を当てた。

「…………その時……あの邪神と名乗る方が……この争いを終わらせてくれた……」

「……ガインが……まさか……なら何故この文明は滅んでしまったんだ? 」

イージスがそう言うと少女はイージスの顔を見上げて言った。

「私が……そう望んだから……あの方は……私たちの文明を終わらせると共に……争いを止めてくれた……」

「! ? じゃあまさか君は……! 」

すると少女の体は宙に浮き、 樹木の上に移動した。

「そう……私はかつてこの国を治めていた……王……メゾル……ポルテは……私たちの言葉で……愛……」

メゾルポルテ……つまり……メゾルの愛……

すると突然辺りが大きく揺れ始めた。それと共に白い樹木が枯れ始めた。

「さぁ……早く立ち去りなさい……理由は全て話した……でないとここと一緒に……埋まってしまう……」

「埋まる! ? 嘘だろ! 」

イージスは急いでザヴァラムに連絡した。

(イージス様、 突然地震が! )

(落ち着いて聞いてくれ、 今からここは埋まるらしい! ミーナとヒューゴを連れて皆は先に避難してくれ! )

(イージス様は! ? )

ザヴァラムの問いにイージスは口に出して答えた。

「……俺は……まだやらなきゃいけないことがある……先に行っててくれ……」

(……承知致しました……どうか、 ご無事で……)

ザヴァラムはそう言うと通信を切った。

「……あなたも早く立ち去りなさい……危険です……」

メゾルがそう言うとイージスはメゾルに向かって手を伸ばした。

「……君も来るんだ……」

古代の技術についての情報はきっとメゾルが全て知っている。でも……それ以上に……

するとメゾルは首を横に振った。

「駄目……私は……最後に残った……古の記憶……また世に知れ渡れば……争いが……」

「……だからってここで寂しく一人で終わるのか? 」

「……へ? 」

「その技術……確かに他の国が知れば欲しがるかもしれない……でもな、 生み出すのは争いだけじゃないだろ? 君は言ってたじゃないか……ここの皆は……とても幸せそうだったって……! 」

それを聞いたメゾルは無意識に涙を溢していた。

「争いが起きるって言うなら……今度は俺達メゾロクスの民が君を守る! 」

「ッ……でも……」

すると今まで何も見えなかった暗闇の空間にヒビが入り始めた。

……時間が無い! !

「俺の名前はイージスだ、 かつて俺が生きていた世界では……盾を意味する! だから、 俺は君の幸せだった頃の記憶を……守る盾となる! ! ! 」

イージスがそう叫ぶとメゾルは咄嗟にイージスの手を握った。

『お願い……今度こそ……守って……』

次の瞬間、 暗闇の空間の天井が崩れ、 イージスとメゾルの頭上に瓦礫が落ちてきた。

超時空操作魔法、 タイムフリーズ! !

イージスが上に向かって手を掲げるとイージスとメゾル以外の周りの時間が完全に停止した。

「……これって……! 」

「行くぞ! 」

そう言うとイージスはメゾルを抱きかかえ、 空中で停止している瓦礫を飛び越え、 塔の外に出た。そしてイージスの部屋へ繋がる魔方陣がある所まで駆け抜け、 イージスはメゾルと共に魔方陣の中へ飛び込んだ。

停止、 解除……

「イージス様! よくぞご無事で! 」

「イージスさん! 」

「もう駄目かと思ったよ……」

気が付くとイージスは元の部屋に戻っていた。

「ハッ……メゾルは! ? 」

イージスが横を見るとメゾルがイージスの手を握ったまま眠っていた。

「イージス様、 その者は? 」

「あぁ、 メゾルって言うんだ……元メゾルポルテの王だよ……」

「メゾルポルテの……! 」

「王……! 」

まぁそりゃ驚くよな……こんなに幼い子供が……いや……実際は何百歳とかだろうけど……

「詳しい話は後でするよ、 とりあえずメゾルを寝かせよう」

そしてイージスはメゾルを自分のベッドに寝かせ、 守護者達と共に玉座の間に移動した。メゾルの面倒はミーナとヒューゴに任せた。

「さて、 今回の計画は正直言って完全なる成功とは言えない……本命の書物が全て地の底……もうあの塔へ行くことはできない……」

『……』

「しかし落ち込むことはない、 古代の技術が無くたってアルゲルの発想力がある。そうだろ? 」

「イージス様……」

もはや計画は失敗かと思われた……しかしその時

「私が……力を貸す……! 」

『えっ! ? 』

玉座の間にメゾルが入ってきた。彼女は自ら力を貸すと言ったのだ。

「いいのか……? 」

「イージスなら……私の記憶を……皆の……幸せを……守れる……そんな気がしたから……だから……私の持つ古代の技術……このメゾロクスに託す……」

メゾル……会った時とは違う……信頼している目だ。

するとイージスは立ち上がり、 メゾルの側に歩み寄った。そしてイージスはメゾルの肩に手を置いた。

「……ありがとう……これからよろしく……」

「……うん」

その後、 メゾルはアルゲルと共に魔法道具の開発を担当することになった。

……アルゲルとメゾル上手くやれてるかなぁ……ちょっと心配なんだよなぁ……

心配になったイージスはメゾルの様子を見に、 アルゲルの魔法研究所に来た。

「アルゲルー……メゾルー……? 」

研究所の扉を開けると誰かがイージスに飛び付いてきた。

「イージス様ぁ! 」

「おぉ……メゾル、 何か雰囲気変わった? 」

メゾルはイージスの体をよじ登ってきた。

「おい……イージス様に失礼だぞ……」

「いいっていいって! 構わないよ」

イージスはメゾルを抱きかかえながら研究所の中へ入った。そこには見たこともないような新しいゴーレムや装置等が研究所内を埋め尽くしていた。

「うぉあぁぁぁ……! 何だこれ……! 」

開いた口が塞がらないとは正にこういうことか……凄いなメゾルポルテの技術は……しかもなんと言うか……この魔法道具一つ一つに……

「……愛を感じる……私も初めて目の当たりにした時……そう思いましたよ……」

横でアルゲルが静かに言った。

「あぁ……正に……」

『メゾルの……愛……』

「ふふん……♪」

こうしてイージスに新たな仲間ができたのだった。

……………………

その頃、 魔王城にて……

「やはりイージスは奴と会ったか……」

「はい……」

いつもの獣人族の娘が魔王に報告をしていた。

「……ガインの真実を知る日は……そう遠くないのかもしれぬな……」

玉座に座りながら魔王はそう呟いた。

続く……

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