第33話【古の記憶】(前編)
イージス達は冒険者生活を一時終了し、 メゾロクスに戻ってきた。
『お帰りなさいませ、 イージス様! 』
「た、 ただいま……」
相変わらずだなぁ……
イージスが玉座に座るとレフィナスが今までの活動、 進行状況の報告をした。
「─以上が現時点での発展状況でごさいます」
また少し見ない間に随分発展してるな……俺がいなくてもこの国は大丈夫なんじゃないか?
(主様が現在のメゾロクスからいなくなった場合、 メゾロクスが滅亡する確率は約99%です。)
わざわざ計算しなくていいからジースさん……
「ではイージス様、 今後の方針を……」
跪きながらザヴァラムが聞いた。
「えぇっ! ? 方針って言われてもなぁ……」
考えてもいないし……とりあえず治安の維持とか施設の管理とか……?
「うーん……これと言って目標も無いなぁ……」
イージスが悩んでいるとアルゲルがある提案をしてきた。
「ではイージス様……この地にかつて栄えていた文明……メゾルポルテの技術を復元するというのはいかがでしょう……? 」
「それだぁーーー! ! 」
メゾルポルテの技術があれば更に発展が進むぞ! しかし……どうすれば復元ができるだろうか……建物や機械も今じゃほぼ地面に埋まってるだろうし……探知で探すにしても流石に……
すると再びアルゲルが話し出した。
「……伝説では文明の技術などは全て古の大図書館に保管されているかと……」
「えっ、 そんな所があるの? 」
「はい……しかし場所が……」
アルゲルが言葉を詰まらせる。
「場所が? 」
イージスが問いただすと……
「この……メゾロクスの地下……約20キロの場所で……それらしき空間を見つけたのです……」
……マジ……?
更にアルゲルは話す。
「そしてその空間には……大量の魔力反応が見つかりました……」
大量の魔力反応ってことは……魔物がいるってことか……これは苦労しそうだなぁ……
イージスが頭を抱えているとザヴァラムがあることを口にした。
「……そういえば……かつてガイン様が私にこんな話をしていました。『この城のどこかに地下へと続く秘密の通路がある。』と……」
「えっ、 それはどこにあるの! ? 」
早くも打開策が見つかったかと思われたが……
「それが……この城はメゾルポルテの時代からあったもので……ガイン様も詳しくは……」
そっかぁ……でも探す価値はある!
するとイージスは玉座から立ち上がり守護者達に言った。
「城内を隈無く探そう! 城の従者全員に召集を掛けてくれ! ! 」
『はっ! 』
そしてメゾロクス城にて地下への通路の大捜索が始まった。
数時間後……
一階部分を探したもののそれらしき隠し通路は見つからなかった。
「はぁ……一体どこにあるんだよぉ……」
「お城の従者全員と探しても見つからないなんて……」
「本当にあるのかよザヴァラムさん……」
数時間にも及ぶ大捜索にミーナもヒューゴも疲れきっていた。
これ以上やっても効率が下がるだけだ……一旦休憩にしよう。
「皆、 そろそろ休憩にしよう」
そしてイージス達は休憩に入った。イージスは一旦自分の部屋へ戻った。
「はぁ……ジースさん、 本当にあると思うか? 」
イージスはベッドに寝転びながらジースに聞いた。
(はい、 古の大図書館及び隠し通路が存在する確率は100%です。)
ジースさんがそう言うなら本当にあるんだろうけど……
しばらくイージスは自室を見渡した。
まさかな……ここは5階ビルと同じ高さだし……
しかしイージスのまさかは当たった。なんと部屋の扉の上に小さな宝石が埋め込まれていたのだ。
「マジか! 早く皆を呼ぼう! 」
そしてイージスは守護者達とミーナ、 ヒューゴを部屋に集めた。
「これは……! 」
「今の今まで気が付きませんでした! 」
ジースさん、 どう?
(はい、 宝石から特殊な魔力反応を確認しました。触れれば魔法が展開されるかと思われます。)
「よし……さっそく触れるぞ……」
そしてイージスは宝石に触れた。するとカーペットの下から魔方陣が浮かび上がり、 部屋全体が光に包まれた。
「……っ……どうなった? 」
イージス達が目を開けるとそこには……
「な……んだ……この空間……! 」
巨大な地下空間に見たこともない巨大な塔がイージス達の前にそびえ立っていた。塔の周りにはいくつもの謎の建造物が建てられており、 どこか不思議な雰囲気を放っている。
本当にあった……あの塔が古の大図書館か?
するとアルゲルが歓喜した。
「おぉ……これは……正しく古の大図書館……! 何と美しい……! 」
相当見たかったんだな……
「とりあえずあの塔に入ろう」
そしてイージス達は塔へと向かった。
道中、 イージスは周りに建てられている謎の建造物が気になった。
ジースさん、 あれって何か分かる?
(はい、 あの建造物から魔力反応を確認、 恐らくこの地下空間を維持する為の結界発生装置でしょう。)
なるほどねぇ……凄いな、 何百年と経っているはずなのに今も動いてるなんて……魔力の正体はもしかしたらこれだったのかもな……魔物の気配が微塵もしないし……
しばらくしてイージス達は塔の前に着いた。そこには扉は無く、 壁に謎の紋章が刻まれていた。
「……アルゲル、 これの開け方は分かるか? 」
「調べてみます……」
アルゲルはしばらく壁を調べた。しかし……
「……申し訳ありません……どう見てもこの壁の開け方が分かりません……破壊をしようにもすぐに復元される結界が張られていまして……」
アルゲルでも無理なのか……じゃあどうすれば……
するとと突然イージスの指にはめていた指輪の一つが輝き始めたのだ。
「うぇ! ? な、 何で! ? 」
「イージス様! 」
この指輪は……確か……
その指輪は伝説の六つの指輪の中でも唯一効果が謎とされていた指輪だった。
「……まさか! 」
イージスは壁に描かれた紋章に指輪を近付けた。すると壁に描かれた紋章が輝きだし、 紋章の部分の壁が消えた。
「開いた! ! 」
「やりましたねイージスさん! 」
「流石です! 」
この指輪は鍵だったのか……ということはこの指輪を手に入れてなかったらここでお手上げだったってことか……運がいいな……
「……よし、 中に入ろう……」
そしてイージス達は塔の中へと入っていった。
イージス達が中へ入ると周りに光の玉が出現し、 辺りを照らした。
「……注意して進もう、 何がいるか分からない……」
ここだと何故か超探知でも探知が利かない……本当に不思議な場所だ……
そして更に奥へ進むと段々明るくなってきた。明かりの方へ出るとそこには……
「うぉぉ~~~! ! 」
「これが……古の……大図書館……! 」
「スッゲェ……! 」
大量の本がぎっしり敷き詰められた本棚がいくつも宙に浮いていた。それは塔の上まで続いている。上からは優しい光が差し込み、 雪のような光の粉がちらほらと降り注いでいる。
これに全部古代の技術が記されているんだな……早速持ち帰ろう。
「よし、 早速城に本を移そう! 」
『はっ! 』
すると突然声が聞こえた。
『……誰……? 』
「えっ? 」
女の子の声……上からだ……
守護者達はイージスの前に立ち、 守備態勢に入った。
「ちょちょちょちょっ! ちょっと待ってよ! 」
「しかしイージス様……この声……」
「何も企んじゃいないさ、 向こうは誰なのかを聞いてるだけだ」
イージスがそう言うと守護者達は大人しく再びイージスの後ろへ回った。
「さて、 君は一体誰なんだい? 」
『あなたたちは……誰なの……? 』
「俺はイージスだ。君は? 」
『私は……古……かつての……記憶を司る者……』
名前が無いのか? 古の記憶を司る者って……
「俺達はこの図書館の本に記された古代の技術を知りたいんだ。持っていっても─」
イージスがそう言いかけた次の瞬間、 イージスの足元に光線を撃たれた。
……まぁ……駄目だよな……こういうのって……
「イージス様! 大丈夫ですか! ? 」
「あぁ、 それより……」
「……どうやらここの主は……情報を持ち出すことを許さないようですな……」
……これはもう直接話を付けに行くしかないな……
(塔の上から膨大な魔力反応を確認しました。本体は塔の最上階にいます。)
オーケー、 ジースさん……
「……俺はこの塔の上に行ってくる、 守護者の皆はミーナとヒューゴを頼む。何かあったら連絡してくれ」
『はっ! お気をつけて! 』
そしてイージスは塔の上を目指した。
後編へ続く……




