第38話【セレン・ディルス】
メゾロクス、 王都前……
「では……イージス様、 行って参ります」
「ラム、 頼むぞ」
さて、 セレン・ディルスの破壊作戦だが……まずザヴァラムがセレン・ディルスの耐久力を出来る限り削る……そしてこっちから見えてきた瞬間、 アルゲルとガムールの指示で兵士と兵器と共に遠距離から攻撃を加える。 ロフィヌスは常にセレン・ディルスの状態を観察……レフィナスとフォルドゥナはもしもの時の為に街全体に守りの結界を張ってもらっている。
「気を付けろよラム、 竜滅要塞の名を持つなら君も無事では済まないかもしれない……くれぐれも……死なないようにな……」
「はっ! 」
そしてザヴァラムはセレン・ディルスのいる方向へ飛んでいった。
「よし……皆、 頼むぞ! 」
『はっ! 』
……………………
一方、 ザヴァラムは……
「……あれか……! 」
王都から離れて十数キロメートル離れた先に巨大な影が見えてきた。
その正体は……
「何……だ……あれ……は……! ? 」
数百もあろうと思わせる巨大な無数の脚、 その体は黒く煌めき、 無数の魔法兵器が散りばめられている。 胴体の先端には一際巨体な魔法砲台が搭載されている。
それは正に……
「……百足……! ? 」
何という大きさ……数キロはあるぞ! しかも……
ザヴァラムは目を凝らしてセレン・ディルスをよく見た。
……超防壁結界……そしてあのダイヤの1000倍硬いという黒龍石を使った機体……これは超位竜達も恐れる訳だ……だが……
「ここで引き下がる訳にはいかない! 」
そう言うとザヴァラムはドラゴンの姿になり、 黒い炎の塊をセレン・ディルスに撃ち込んだ。 着弾の瞬間、 轟音と共に大爆発が起きた。
やはり……これでは駄目か……
すると煙の中からセレン・ディルスの頭が出てきた。 次の瞬間、 セレン・ディルスの先端の砲台から青白い光が出始めた。
『フン……我の体に傷を付けられるものなら、 少し見てみたいものだな……』
そう言うとザヴァラムは何もせず身構えた。 そしてセレン・ディルスの砲台から青白い光線が放たれ、 ザヴァラムに直撃した。 着弾すると先程の爆発よりもより大きな大爆発が起きた。
『……ほう……中々の威力だ……何発も当たっていたら面倒だな……』
ザヴァラムの声と共に煙の中からザヴァラムが猛スピードでセレン・ディルスに向かって突進してきた。 しかしセレン・ディルスに当たる直前でバリアのような壁に阻まれた。
……やはり硬い……超位魔法級の結界となると破壊は簡単じゃないな……それに……
ザヴァラムは地面を見た。 セレン・ディルスはザヴァラムの突進を受けながらも前に進んでいた。
『こいつ……凄い馬力だ……! 超位竜の何百倍もあるぞ……! 』
メゾル・ポルテの技術も侮れんな……仕方ない……せめて結界だけでも破壊させてもらう!
するとザヴァラムの両手から赤黒い光が輝き始めた。
……超火炎魔法……デモンズ・エクソントシ……!
次の瞬間、 セレン・ディルスの全身に無数の赤黒い巨大な棘が突き刺さった。
これは絶対不可避の破壊魔法……この結界でも絶対に破壊する……
そしてセレン・ディルスが纏っていた結界が音を立ててガラスのように割れた。
『よし……後は外皮を削れば……』
そう言うとザヴァラムは空に飛び上がり、 セレン・ディルスの機体に何発もの火の弾を撃ち込み続けた。
……………………
その頃、 イージスの方は……
「……」
「イージス様……」
セレン・ディルスが見えるまで待っているイージスの前にロフィヌスが現れた。
「どうだ……ラムの方は? 」
「ザヴァラムさんは順調に攻撃を続けています……現在セレン・ディルスの結界は破壊され、 外皮も少しずつですが削っております」
おぉー、 流石ラムだ……さてと……それじゃ……
「アルゲル、 ガムール! 見えてきたか! ? 」
『はい! 前方にセレン・ディルスの影を確認、 攻撃用意! ! 』
すると街の外壁に取り付けられていた砲台がセレン・ディルスのいる方向に狙いを付けた。 同時にガムールの精鋭兵士達も弓を構えた。
そしてセレン・ディルスの姿がはっきり見えてきた瞬間……
『攻撃開始ぃーーー! ! ! 』
アルゲルとガムールの声と同時に魔法砲撃と矢が放たれた。
(ラム、 戻れ! ! )
イージスは通信魔法でザヴァラムに指示を出し、 ザヴァラムを街の方へ戻らせた。
次の瞬間、 セレン・ディルスに当たった魔法砲撃や矢は爆発を起こした。
(現在、 セレン・ディルスのダメージは0……外皮装甲は自動再生しています。 )
ジースがセレン・ディルスの状態を報告した。
ダメージ0って……どんだけ硬いんだよ! ドラゴンでも一撃の砲撃にびくともしないって……
「よし……アルゲル、 ガムール! 攻撃を止めていいぞ! 」
『は、 はっ! 攻撃止め! ! 』
するとイージスは背中の剣を抜き、 構えた。
超強化魔法、 身体能力、 腕力、 脚力、 速度、 魔法、 武器……
(スキル、 覇神の加護、 身体能力超越、 魔法超強化、 超級戦闘術、 破壊神が発動します。 )
そしてイージスは目にも止まらぬ速さでセレン・ディルスに向かって走り出した。
「……剣技……」
イージスが剣を振りかざすと剣は紅色の炎に包まれた。 そして……
「煉斬・硬……」
イージスはセレン・ディルスの下から剣を突き刺し、 そのまま突進した。 黒龍石の機体は赤く熱せられ、 溶けながら斬られていく。
「アチッ! アチッ! 」
この技あんまり使いたくなかったけどこの硬い石の外皮に再生能力だし……熱して溶かさないと再生を阻止できない……火炎魔法でも良かったけどそれじゃ灰になっちゃいそうだしな……ってかセレン・ディルスってめちゃくちゃ長いな! まぁいいか……
「うぉらぁぁあぁああぁぁぁ! ! ! 」
そしてイージスの剣はセレン・ディルスの尾の部分まで到達し、 切れ目から爆発が起こりセレン・ディルスは真っ二つになった。
二つになり制御が効かなくなったセレン・ディルスの機体は街へと突っ込んできた。
「レフィナス、 フォルドゥナ! ! 」
『はい! ! 』
レフィナスとフォルドゥナは街の外壁前に超防壁結界を展開した。 セレン・ディルスは結界にぶつかり、 そこで止まった。
「……俺達の勝ちだぁー! ! ! 」
『ワァァァァァァァァ! ! ! 』
結構危なかった……レフィナスとフォルドゥナがいなかったら止められなかった。 それにラムが結界を破壊してくれてなかったらあんな簡単には斬れてなかった……皆がいてくれて良かった……
「イージス様! 」
その場で座り込むイージスの前に人間の姿に戻ったザヴァラムが駆け寄ってきた。
「ラム」
「やりましたね! 」
「そうだな……ラムや皆がいなかったらヤバかったよ」
イージスはザヴァラムの頭を撫でた。
「ッ……! も、 勿体無きお言葉……です……///」
「……よし! 後片付けの後は宴だ! 」
その後、 アルゲルによってセレン・ディルスの部品は回収され、 王都で宴が始まった。
「いやぁやはりイージス様の剣は切れ味抜群ですなぁ! 」
「何を言いますか! 剣の切れ味はイージス様の力があってこそ! 」
「いやいや、 皆がいなかったら倒せなかったよ……」
イージスは守護者達と盛り上がりながら話していた。
……しかし……セレン・ディルス……何故いきなり封印が解けたんだ? しかもメゾロクスにピンポイントで襲ってきたし……これってもしかして……
そんなことを考えているとメゾルが話し掛けてきた。
「イージス様……少しいい……? 」
「ん? どうした? 」
「実はセレン・ディルスに残された魔力を検査してたんだけど……変な魔力が……」
変な魔力……?
「……雑じり気の無い闇の魔力があったの……」
それを聞いた守護者達は全員反応した。
「まさか! 完全なる闇の魔力だったのか! ? 」
ん? それって何を意味するんだ?
イージスが首を傾げているとザヴァラムが独り言のように呟いた。
「……魔王……」
魔王か……最近襲撃が無かったと思ってたけど……また来たか……一体何が目的なんだ?
魔王とガインは昔から敵対関係だったって聞いたけど……それ以外に敵がもう一人いるって……魔王とガインの目的はそいつを倒すことだったはず……なら何故結果的に目的を共にして共闘できそうな相手をわざわざ攻撃するんだ? 魔王にとってはデメリットしかないと思うんだが……ここの主が俺になったから気に入らないとか?
「……だぁーー! ごちゃごちゃ考えても仕方ない! あっちがその気ならこっちだってやってやるぞコラァ! 」
「おぉ……! では! 」
「……と思ったけど、 それはそれでこっちもデメリットになりそうだから今はやめておこう」
『ズコーー! ! ! 』
今こっちが魔王を倒してももう一人の敵がいる……どちらかの勢力が地上から消えた瞬間、 一気に襲撃が始まるかもしれないからな……
「もう一人の敵が何かも分からない状態で魔王を倒してしまうのは危険過ぎるからな。 今は様子を見よう」
『……』
……魔王……お前は一体誰で……何を考えているんだ……
……………………
その頃、 魔王の城では……
「魔王様……セレン・ディルスが破壊されました……」
「……そうか……もうそこまで……」
獣人族の少女の報告を聞いた魔王は玉座に座りながら呟いた。
「……魔王様……私は……」
「良い……死を恐れない者などいない……行くか行かないかはお前に任せよう……」
「……はい……」
獣人族の少女は涙を流しているように見えた。
「……もう行って良いぞ……報告ご苦労……」
「……はい……」
そう言うと獣人族の少女は玉座の間から出ていった。
「……イージスよ……お前こそが……この世界の救いだ……だから……」
魔王は窓の外を見ながら呟いた。
続く……




