ムラムラムラ
俺は吸血鬼が出たという村々に来た。どの村も人口は300人程度。元の世界のRPG的な村(決められた空間に数十名だけが住んでいる)を想像していたのだが、思ったよりも広い。元世の市町村単位での村に近かった。家々の間隔も広く、村の面積における人口密度がとても小さいため、目撃証言等の情報を得ることは難しいだろう。村と村とは馬車で2時間程度しか離れていない。各村毎に特徴がある訳でもないため、村の説明は割愛する。
実際、各村の村長から聞けた話は、以下。
村1
・吸血鬼が現れたのは1ヵ月くらい前
・家畜が1頭襲われ、血がなくなった死体が発見された。
・すでに時間が経ちすぎていたため、現場には証拠らしいものはなかった。(土が耕されてしまっていた。)
・第二都市の黒騎士団に相談した結果、低級吸血鬼の仕業と判断され、冒険者に討伐依頼を出すが、吸血鬼は見つかっていない。
村2
・吸血鬼が現れたのは2週間程前
・村長の息子が襲われ、血を抜かれた死体が発見された。
・村長の息子は当日、息子の仲間達と村の酒場で飲んでいた(村長の他に酒場の主、息子の仲間から証言あり)。
帰る頃には大分酔っていた。道端で寝ていた時に襲われたらしい。
・死体は村長の家とは反対方向の人目がつきにくい所で発見されたが、酔っていたため、単純に間違えたと予想された。
・眷属化しなかったため、こちらも低級吸血鬼と判断された。
・村長の息子はろくでなしだったらしく、自分の息子が死んでも何とも思ってなかった。
村3
・吸血鬼が現れたのは1週間程前
・村外れに住んでいた家族が家の中で襲われた。
・家族は50代の農民夫婦と10代の娘1人。
夫婦は殺され、娘は拐われた。夫婦の死体には爪痕の様なキズがついていた。
・低級吸血鬼にも知能がある様で、人や家畜を拐うということもあり得るらしい。保存食か?
・また、低級吸血鬼は拠点を持たないことも多いらしく、馬車で移動できる距離なら移動も出来ることから、村1の吸血鬼と同じと推測されていた。
村3のみ、現場の保存は完璧ではないが、現場を見ることができた。
まず、襲われた家は、村長の言った通り、隣の家からもかなり離れていた。目撃者がいないことも理解できる。また、その家は村1で襲われた家と同じように家畜を買っていたが、そちらは全く襲われた形跡がなかった。
扉は激しく壊されていたが、家の中は荒れてない。家の中の間取りは、拐われた女の子は一番奥の部屋、殺された夫婦はその手前だった。また、農民夫婦はベッドの上で殺されていたようだ。DNA鑑定でも名前はわからないが、人間2人の反応があった。状況から人が寝静まった深夜に襲われた?様だった。
現場を見れたことで、村長から聞いた点で理解出来なかった所が理解できた。
なぜ、拠点を持たない低級吸血鬼が保存食を必要としたのか。歩きながら食べる?知能があるとはいえ、低級魔物はそんなに打算的ではない。
また、いくら寝入っていても扉が壊されたら目が覚めるはず。
村3は吸血鬼の手口を真似た人間が犯人だ。