次の依頼
黒騎士団とエマ、アイリーンがいろいろ調べたらしいが、子供を使った禁術使いの情報は何も得られなかったようだ。
盗賊を捕まえた後、俺は変わらずの日常に戻った。エマやアイリーンは、グレッグにえらく気に入られた様で、グレッグに時間がある時にしごかれている様だ。たまにエマが愚痴を言ってくる。おかげでランクは上がったようだが。
今回の件でこの世界の人の命の軽さを改めて感じたため、Fランクの見習いをしながら、積極的に薬草や毒草、鉱物などの知識を集めていた。薬屋や鍜治屋、道具屋ともより親しくなれた。もう少し素材が集まったらいろいろ作ってもらおう。
そんな中、グレッグから呼び出しがあり、ガーネットの補佐役として騎士団に入らないかというクソ迷惑な誘いを受けた。給料も出るらしい。また、ある程度、黒騎士団を動かせる様に3席の補佐ということだった。元世で言う防犯ブザーのような魔道具も貰えた。これが聞こえる範囲に黒騎士団がいたら、文字通り、跳んで(・・・)くるらしい。半径1kmくらいなら2分かからないレベルの様なので、オリンピック選手並だ。相変わらずの脳筋集団であることを再認識する。俺には損は少ないが、補佐でありながら、ガーネットと対等であることと、非常勤勤務を認めさせた(その分、給料は下がったが)。俺が生き残るためにはガーネットにすがるしかない。そのおかげで俺の肩書きが以下になった。
黒騎士団 街道防衛隊 3席非常勤心得
心得なんてまだ使っているのかと感心した。元世でも久しぶりに聞いた役職名だった。
合わせて早速依頼を受けた。街道沿いのいくつかの村で吸血鬼が出るらしい。本来、俺の武力であれば吸血鬼の相手など、全く期待出来ないので丁重にお断りするが、グレッグの勘が俺が必要と言ってるらしい。こちらの世界でも刑事の勘はあるらしい。あまりにしつこいので、仕方なくガーネットと調査に向かうことにした。
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その村に向かう馬車の中で、わかってる情報を聞く。こちらの世界での吸血鬼も、元世の吸血鬼と同じく、血を吸うらしい。吸血鬼社会にも序列があり、序列によって強さが異なる。今回出ている被害者は老若男女、男女問わず、家畜までも襲われていることと、血を吸われた人間がそのまま死体として発見されている(中級以上の吸血鬼であれば、吸血することで吸血された人間がその吸血鬼の眷属となる)ことから、低級の吸血鬼と予想されていた。低級吸血鬼は、半魚人の様な姿をしており、目が大きく、頭から背中にかけてヒレ(トゲ?)の様なものが生えているらしい。家畜も襲うのであれば、元世のチュパカブラに近いのかもしれないと思い、聞くとまさにそんな姿のようだ。中級吸血鬼以上になると人型に近づいていくらしい。低級であればD級冒険者レベルでも十分に対処可能らしいが、特級になると白騎士団(元の世界で言う軍隊)が殲滅するレベルらしい。
吸血鬼が発生しているのは、王都に次ぐ第二都市を管轄している貴族領の3つの村らしい。第二都市内であれば、そちらの黒騎士団の管轄になるが、村は街道沿いにあるため、ガーネット達の担当となったようだ(これも日本の警察組織と同じで中央(王都の黒騎士団)の力が大きい様に感じる)。吸血鬼騒動が起き始めたのは、第二都市を管轄する貴族が代替わりした時期と重なるらしいが、魔物の発生、魔物の活性は完全にランダムであり、代替わりの影響ではないとのことだった。
死体は、失血によって死んでいるが、出血した場所、切られたキズがないため、血を抜かれて死んでいると結論付けられたとのことだった。