臨場
アイリーンはD級冒険者、いわゆる中堅冒険者だった。昔から剣と魔法が得意でガムシャラに戦ってきたが、ここに来て自分の限界を感じていた。これから更に上に行くために、どうするか悩んでいた所にいかにも軟弱な男が声をかけてきたのだった。男は盗賊に襲われた人の話を聞きたいらしく、昼飯を奢ってくれ、その場でいろいろ話をする内に自分の今の想いを相談してしまった。彼は私に共感し、私の想いを真剣に聞いた上でアドバイスをしてくれた。彼のいた世界では、ガムシャラに動く次の段階は考えることらしい。目標や問題点を考えることで、それに対する次の行動が見えてくるらしい。それが正しいかはわからない。けど、何となく彼の言うことを信じて行動してみようと思った。
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俺はアイリーンとエマを誘い、盗賊が出た森に来ていた。ガーネットは王都で別の(さすがに俺の権限では調べられない)ことを調べて貰っている。少しでも早く犯行現場を見たかったため、かなりの早さで飛ばしてもらった。特急料金も加わったため、馬車代が少し高かったが仕方ないだろう。馬車代はガーネットにツケて貰った。それを返すためにも一刻も早く就職しないといけない。養って貰っているが、借金を良しとはできない。俺の中での一線だった。
犯行現場は、たしかに、街道から外れた道沿いだった。何か理由がないとこんな脇道には入らないだろう。また、現場は片付け中だったが、ある程度わかることはあった。天気が良かったことも幸いだった。
現場では何人かの血痕と大破した(爆発したような)馬車があった。馬車が爆発したような被害だったこともあり、馬車の中に何人乗っていたかもわからなかったらしい。馬車の外で見つかった死体は2体。1体は馬車の近く、もう1体はすこし離れたところにあったらしい。少し離れた所を見ると血痕と嘔吐物らしい跡があった。
「誰かが馬車で酔って吐いたのかも?」
それであれば脇道にそれたのも説明できるか。
俺達は現場確認した後、馬車の破片と吹き飛ばされた馬車の中の死体を片付ける。片付けをしていた男からの情報だと、護衛の冒険者は一太刀で殺されてしまっていたようだ。
死体は少し離れた所で火葬される。何日も放っておくと死体に魔物が寄ってくるらしい。念のため、現場でアイリーンに痕跡魔法を使って貰い、魔法の使った跡を見て貰うが、前情報通り何も見えない。また、アイリーンに爆発魔法の情報を聞く。通常の爆発魔法は近距離魔法のため、少なくとも何かしらの痕跡は見えるはずとのことだった。平行してエマがテイムした狼を使って襲われた方以外の臭いを追って貰う。先日遺族に挨拶に行った時に、襲われた方の臭いを覚えて貰ったのだ。
俺はあくまで情報収集のため(証拠にならないため)にDNA鑑定スキルを使う。DNAが違う死体は5体。事前に確認した馬車に乗ってる人数(護衛のC級冒険者2名、馬車の御者1名、商人1名とその子供1名、商人の従者1名)は6人。追加で嘔吐物のDNA鑑定をした結果、嘔吐をした人が今回死体がない人物であり、商人の子供のDNAだった。
また、エマも戻ってくるが、盗賊と思われる臭いは王都に戻る道に続いていた様だった。
あとはガーネットの情報次第だが、目撃証言か自白をうまく得れるかがカギだ。
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一方ガーネットは、王都での情報収集をしていた。彼から言われたことは王都の質屋に売られた盗品の情報調査と、◯魔法のスキルを持った人のリストアップ。個人情報があるとはいえ、黒騎士団はこちらの世界の警察部隊。それなりに情報は集められたが、ガーネットは不安だった。彼からの追加情報でヒントがあればいいのだが。
追加でわかったこと
・盗賊は森にいないかも?
・盗賊は子供を拐っている(非公式情報)。
・C級冒険者一瞬で殺される程の腕前