話を聞いてみた
次の犯行が予想されるのは2週間後。どうやら昨日発生したことを悔やんでの協力依頼だったようだ。ガーネット達黒騎士団は、これ以上犠牲者を増やさないために、森狩りをすることを決めたようだ。出発は1週間後らしい。俺は森狩りについて行けるほども体力に自信がないため、俺と同じく見習い冒険者のエマに同行依頼することにした。お互いを紹介した時に、二人とも何となく微妙な空気感を出していたが、おそらく緊張していたのだろう。
俺も何もしないわけにもいかないため、その間に出来ることをすることとした。まず、ガーネットに活動資金を借りる。そのために、ガーネットのご機嫌を取ることにも大分慣れた。
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まず最初に盗賊被害者の方へお悔やみを伝えると同時に、聞ける情報を収集した。こちらの世界では、目撃証言と自白が犯人捜しの手法のため、被害者へのフォローもあまりされていなかった(被害者への弔いは、敵【かたき】を取ることが最良とされていた)。かなり罵倒された場面もあったが、真摯に向き合ったことで最後には寄り添う気持ちが通じ、ある意味許された。
また、次は冒険者ギルドで第一発見者からいろいろ情報を聞いた。底辺冒険者である俺はかなり見下されていたが、大分下手に出た(チップを大分使った)ことで、何とかいろいろ聞けることが出来た。合わせてエマ以外に、信頼できそうな冒険者を何人か見繕うことが出来た。最終的には、臨場しないとわからないこともあるだろう。その時に同行して貰おうと思っている。
それと黒騎士団にも話を聞きに行ってみた。そこでわかったことは、ガーネットは実はかなり人気者らしい。たしかに見た目だけで言うとかなり美人であるし、スタイルもいい。(家事は一切できないが・・・。俺が来る前はどうしていたか疑問はつきない。)
そんな彼女と同棲していると思われていることから、ガーネットの同僚からは殺意に近い視線を感じたし、実際、模擬訓練という名のボコるための挑発もあった。そんな挑発にはのっていられないので、適当にスルーする。元世で得られた対人スキルはそれなりに役に立っている(教会でわかるスキルには知識や行動は反映されないのかもしれない)。
副長から、盗賊が強奪した品物をどうするかを聞いた。こちらの世界では、明らかに個人のものと特定できるようなものじゃない限り、普通に質屋に売られてしまってもわからないらしい。革で出来たものとかだとDNA鑑定スキルや指紋調査が使えるかもしれないが、この世界で全く知識がないもので証拠にしても意味がない。下手すると魔女裁判で吊し上げられるだろう。また、質屋も客商売のため、簡単に情報は出さないだろうとのこと。
あとは、盗賊が実際に起きた場所を教えて貰えた。やはりこちらの世界では捜査情報の漏洩に対して意識が低いようだ。ただ、副長曰く、もし俺が何かを隠して、魔法でどうとでも出来るとのこと。ある程度自信があるから門戸を広げている感じではあった。
副長と話した感じでは、ガーネットの所属する黒騎士団のなかでは唯一能筋ではなさそうだと感じた。
最後にエマに森狩りの時にしてほしいことをお願いした。エマには犬か狼を何匹かテイムして貰い、警察犬のように臭いをたどって、盗賊のアジトまで手繰って貰おうと思っている。
余談
警察犬の歴史も実は短く、1890年ごろからようやく広まったようだ(1890年以前は動物を狩るための犬は利用されていた)。
今までの情報は有意義だったが、やはり、臨場しないとわからないこともありそうだ。雨さえ降らなければ、物証が著しく消失することもないだろう。明日、エマと信頼できそうな冒険者と遠出してみよう。
情報収集の結果補足
盗賊の発生場所
・王都から隣国への街道筋。森付近。
→厳密に言うと街道から脇道に入った道らしい。隣国にいくのであれば、街道を進めばいいらしい。休憩する場合もわざわざ、道をそれることはないらしい。なぜ、その道に入ったかは不明。
・王都から森までは馬車で1日程度。
・森は魔物も多く、冒険者も多く出入りしているが目撃情報がない(いずれも犯行後の様子しか見られていない)。
→街道からそれた脇道のため、街道よりは人が少ない。それ故に目撃情報がない。
→冒険者は、盗賊に襲われた場所の近くで大きな爆発音?を聞いたらしい。馬車の警備についた冒険者が守るために何か魔法を使ったかも?
発生件数
・2週間に1回程度。現在、6回発生。
→6回は事実であるが、正確に2週間ではない。
他
・貴族の移動、商人の商品の搬送など、大量の物資もしくはお金を持っている馬車が狙われている。
→荷物を運ぶ馬車の往来はランダムで、決まった日に移動するわけではなかった。たまたまその馬車が狙われた?
・生存者はいない(と思われる)
護衛の冒険者も殺されている。
→爆発?の影響で人の痕跡がわからず、何人死んでいたのか正確な数が把握できていない。
→各被害者の構成はランダム。
共通点と言えば、子供を連れていたくらい。
・探査魔法のイメージは、森のなかであれば木の場所や本数、その場で動くものがあれば、それの大きさや数等が感覚的にわかるらしい。
また、痕跡魔法は、魔法を使った痕跡が感覚的にわかるらしい。ただし、使った場所でしかわからない。