東京ミッドナイトアフタヌーン
「遅刻~遅刻~」とパンをくわえて学校まで走っている途中で、
運命の人とぶつかり、恋が始まる・・・・。
なんてマンガやアニメではよくある話。
私にも起きちゃった。
今日から二学期なのすっかり忘れていた。夏休みがいつまでも続くと思ってすっかり寝坊した~。
というかお母さんも起こすの遅すぎ、テーブルにあったクロワッサンを加えて走って中学校まで。
中学校までは歩いて15分。走ると5分。でもやたらと曲がりがどの多い通学路。何個目の曲がり角だろうか、なんかふわっとしたものに当たって先に進めない。
「ん~。痛い何?」
顔を上げると、同じ学校の制服の人。
私より少し背が高い。
「あ、すいません、怪我無いですか?」
その人はぶっきらぼうに言う。
「こちらこそ、すいません。大丈夫です」
「そうですが、急ぐので・・・」
その人は走り去った。
私と同じ緑色のカバンを肩にかけていた。
うちは学年毎に鞄の色が違う。
一年は青、二年は緑。
でも、見たことのない人だ。
うちの学校は一学年一クラスしかないから、すぐにクラスメイトの顔が覚えられる。
どうにか間に合った。席に着くとすぐに担任が教室に入ってきた。担任の後ろに誰かいる。
「転入生を紹介する。自己紹介して」
「鈴木シノブです。よろしくお願いいたします」
私はその人を見た覚えがあるような気がした。そう
「さっきのぶつかった人」
私は思わず立ち上がり声を上げた。
転入生は、はっと気づいた顔をし、軽くうなずいた。
「お、いきなりなんだね、鈴木ナオ。同じ苗字だな・・・
じゃあ、シノブさん、君の席はナオさんの隣だ」
転入生はちょうど空いていた、私の隣の席に座った。
それからの展開は、よくある事。色々あってシノブとは親しくなった。お似合いとまでも言われて、文化祭ではベストカップル賞にノミネートされた。
付き合ってくださいと私もシノブも言ったことはない。でもなんとなく男女関係ない友達のようだった。
でもそんなある日、衝撃的な出来事が起きた。
「え、海外転勤?! シノブ行ってしまうの?」
シノブはまた転校することになった。もう会えなくなる・・・。
空港でクラスの有志と出発を見送る。シノブは3ヶ月しかいなかったから、別れもあっさりとしたものだ。
マンガやアニメではよくあるよね。海外転勤。でも何故かまた会える。
私はそんな気がした。
東京国際空港の午後、現地に着くのは夜中になるらしい。
俺は去り行く彼女の背中をいつまでも見送った。