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歪み

ペンネームを変えました。

これからは『子子子子ねこのこ』です。よろしくお願いします。

ペンネームの元ネタのヒントは和歌です。

とあるアニメ影響で知っている人も多分多いと思います。筆者も、そのアニメで知った口ですし。

「結婚、おめでと――!!」


その一言と共に、拍手が嵐の様に鳴り響く。


一夜が明けて太陽が昇ると同時に準備が始まり、朝食を終える時には質素だがギルドを飾り付けて、そして陽が真上に昇った頃に小さく、ささやかながらも10代の若者二人の結婚式が開かれた。

二人の、人生の大きな節目となるこの日。

いざ中央に立った、緊張して強張った二人に、エールを送るが如く周りから言葉が贈られる。

「ヒュー、ヒューいいねー!似合っているよ、二人共!」

「羨ましいぜ!この色男!」

「おい、バカ旦那!嫁さんを泣かすんじゃねーぞ!絶対に幸せにしてやれよ」

向かい合う新郎と新婦は、周りの声援に一方は照れて、一方は涙を堪えながら皆からの祝福を受ける。


――結婚は人生の墓場と蔑む輩もいるようだが、少なくともこの場においては老若男女の全てが二人の幸せを純粋な気持ちで祝っている。まぁ、些か若と女が少ない気もするが。

私は彼等に会った事もないが、それでも周りと同じ様に拍手を以て祝福する。

特に先輩は初対面なのに拍手だけでは足らないといって、カナーのパーティーメンバーと組んでウェディングソングを泣きながら歌ってまで彼等を祝福する。

私セレクションのウェディングソングは、先輩の歌声も相まって式にまた別の雰囲気を与える。

その歌にしんみりとなる者、二人の門出を応援する者、そんな二人の為に涙する者。色んな想いが、ここにある。

外では大雨を降っているのに、まるでここだけは晴天の空みたいだった。

(皆に祝福されて、これだけ賑やかなら、羨ましいな――)

ふと、昨日を思い出して私は考えた。


「ふーん、ソラ。あんたこういうのが好きなの?なんか意外」

「、、、、お姉ちゃんは、こういうの、好きなの?」

と、ツカツカと歩み寄りながら不貞腐れた顔のカナーが私の横で聞いてくる。ついでに隣のハリィも。

「いや、そうじゃないぞ“ソロ”アイドル。別に好きとかそういうのじゃないよ。ただ、羨ましいって思っただけだよ。」

「ソっ、ソロじゃないし!ただ今わたしのバックバンドを貸してあげているだけだから!」

「はいはい知ってるよ。にしてもお前等歌は壊滅的なセンスのくせに楽器のセンスはいいな」

楽器には疎いので違うかもしれないが、三人はキドはフルート、ドクはライアーハープ、ニマがバイオリンらしきもので演奏しており、中々に良い音を出している。

携帯性の問題か、ピアノみたいな大型の楽器はない代わりに小型の楽器で纏めて、どこでも歌う為の努力が伺える。


「この楽器に先輩の歌え――ボーカル。合わない訳ないな」

「ちょっとちょっと!ヴォーカルはわたしだよ!」

「ボーカル名乗りたけりゃお前は少し歌を楽器に合わせる努力をだなぁ!?なぁ、ハリィ?」

「、、、、うん。お姉ちゃんの、言う通り。、、、、だと思う」

ホラな!返答には一切興味が感じられないけど。第一、エレキギターとかベースとかが必要な近代的な歌しやがってよ!

「、、、、むー、それは認める。あたしじゃ実力が足りないのも理解しているつもりだから」

「ん?認めるのか。意外だな」

カナーのその発言に、今度は私の方が驚いた。

「あんなにバカみたいに自分に自信があるみたいなくせして」

「そりゃあ、私は歌う時は120パーセントの自信で歌うよ。でも、わたしがわたしに対して全部自信を持っている訳じゃない。したい事も、出来ない事も、まだ沢山あるから」

初めて見る表情に、私は目を丸める。その表情は大きな壁に躓いて本気で悔しそうに挫折してる、その顔だ。


だが、一番に驚いたのは――

(この顔って――「あぁ、もう!本当にいい歌だよ!」

どっかりと椅子に座っては有無を言わせない口振りで捲し立てる。

「メロディーも、歌詞も、聞いた事ない位にキレイだし、おもしろい!」

愚痴だ。

間違いなく愚痴だが、次の言葉に今度は底冷えした。

「でも、そうじゃない。この歌の一番凄いのは、“体系化”だよ」

(――体系化?)

「あり得ない。こんなのは!どの今の音楽クラシックよりも、オペラよりも遥かに高度に体系化して、その体系を下地に曲調の自由を与えなければ、こんな歌は作れない!絶対に!」


音楽の先生に聞いた。現代の音楽、ロックやポップスは決してポッと出てきた訳じゃない。

それまであったクラッシックやオペラの流れを汲んで、そこから派生していると。

例えばヒップホップにはジャズが先にあって、そのジャズの根底にはフランスクラシックがあるとか、授業で言ってた。

(つまり、音楽は繋がっているという事を、先生は言いたかったんだ)

その繋がりを、カナーは先輩の歌を聞いただけで理解し、更には現在よりも遥かに優れているとまで判断したのだ。

(だから、コイツの周りにはアイツ等がいるのか、、、、)

コイツのパーティーの結成理由が、なんとなく分かった。


「ねぇソラ。この歌、誰が創ったの?」

嘘を許さない声色で、カナーが問う。

だが、異世界から来ただなんて口が裂けても言えない。

「さぁ?どこでだろう?先輩には別の歌をリクエストした筈なんだけど」

あくまで、この歌は先輩の歌だとすっとぼけた私に、これ以上は追及出来ないと悟ってかカナー押し黙った。

「、、、、あー、もう!戻ったら作曲し直し!全然ダメだ!」

顔を埋めてう~と、呻き声を上げる。余程悔しいのだろう。ザマァ。


つい鼻で笑うと、服の裾がハリィに引っ張られる。

「ねぇ、お姉ちゃん。この歌、なんて、、、、名前なの?」

「――さぁ?」

でも。

(そうだなぁ、でも強いて言うなら、、、、)

ヒントは、結婚式かな?

そう思うと、私はカナーに聞こえない様に小さく、耳打ちをした。


「、、、ヒミツ」



――普通にうまかった。


カナリエの作った朝食は、正直言って想像の10倍おいしかった。

特別調理技術のいる料理はないが、とてもずぶの素人が作ったとは思えない味だ。多分だけど、私が作るよりもおいしく仕上がっていると思う。


「、、、、ごちそうさまでした。ねぇ、べフェルトさん。和食作るのこれで初めてですか?」

食べ終わった私は、つい気になり質問してしまう。

「べフェルトじゃなくて、先輩って呼んでいいよ。前から言われてみたかったんだよね~」

「それで、“べフェルト”さん。和食は初めてですか?」

「うーん、無視かぁ~。まぁ、料理は初めてじゃないよ。アニメで見たのが食べたくて、よく自分で作っているよ」

「あー、アニメの再現ですか。でも、昨日みたいに私の世界の料理亭があるんでしたら、別に食べれない訳じゃなくないですか?」

「むー、ソラちゃん。そこは自分で作るからの楽しさなんだよ。実際、こうやってソラちゃんにおいしく頂けるなら、私は嬉しいよ」

ニカッと、満面の笑みを浮かべてべフェルトは喜ぶ。

その気持ちは、私も非常に共感出来る。不器用な私の料理を、家族がおいしいと食べてくれるのは、嬉しい事だ。


(そういえば、私もアニメの料理の再現とか、お母さんにねだった事あったな~)

「――――――、、、、」

「――えいっ」

唐突に、べフェルトは私のペチと、額に指を当てる。

「ホラ、ご飯を食べ終わったらお仕事!さっさと終わらせて、『天国』に行くんだよ」


有無を言わせない勢いで喋ると、私の食器を持つ。

「あっ、食器は私が洗います」

「大丈夫、ここにポイと入れればオッケー!」

そう言ってべフェルトは、“亜空間”の様なものを空中に出現させ、そこに食器を突っ込んだ。

「べフェルトさん。それって、、、、」

「驚いた?これはね、『魔法』ってヤツだよ。名付けて、食洗の魔法!」

なんてピンポイントな魔法だが、ここには魔法なんてものがあるのかと感心する。

「それは、私も覚えれますか?」

「勿論だよ。でも、教えるのはお仕事が終わってからだよ」

イタズラっぽく微笑むべフェルトに、私は中々いい所突いて来やがると苦笑する。


「そんじゃ、行こっか」

「、、、、また、あれですか」

「絶対って訳じゃないけど、ソラちゃん出来ないよね?」

その答えに、私はげんなりするとべフェルトに身体を預ける。

「――優しく、してくださいよ」

べフェルトの両手に抱えられ、私はしおらしく小声で訴える。

「うん、大丈夫。優しく、してあげるよソラちゃん」

そう言って私を抱き上げると、べフェルトは窓を開けて――“飛び出した”。


「ヒュっ!」

一瞬浮遊感を感じて瞳を閉じたが、次に開けた時視界には私はべフェルトに抱えられて滑空していた。

「、、、、本っ当に、驚きの景色ですね。脳がバグりそうですよ」

ギリシャ式、ローマ式から始まるヨーロッパ系から、東洋系、アフリカ系の民族的な建築が多種多様な植物と共に空中にまばらに浮かぶ雲の上に建ち並び、その合間を縫う様に首都高ばりの複雑なスクランブルを描く道路と近代的なビルが目の前に聳え立つ。

さて、その光景を“上下”に鏡合わせたのが、どうやら天界の風景だ。

景色としては非常におもしろいが、改めてみると下に伸びるビルや建築物は実にシュールだ。

「うんうん、来たばっかりの子はよく言ってるよ。私はこれが普通な感じだけど」

と、べフェルトはパタパタと翼を羽ばたかせて飛んでいる。

その腕では私がお姫様抱っこで抱えられており、まだ飛べない私をこうやって居酒屋まで運んだ。くそう、死ぬ程恥ずかしいや。


(――そういや。思えば、これも魔法の一種なのだろう。こんな小さな羽で飛ぶのに必要な揚力を得れるとは考えれないし)

そもそも、天界に空気がるかも疑わしい。現に今も私は空気を吸っている感覚はないし、息をしなくとも苦しくはない。

この程度の羽で人間を飛ばす揚力を生むなら、地球の気圧の10倍以上が必要ではなかったか?

少なくとも、それだけ気圧があればマトモに動けない。それなのに、私は地球と同じ感覚で動ける。

いずれにせよ、空気があるなら物理的に不可能だし、ないならないでもっとおかしい。

飛行は、確実に魔法の類だ。


ん?待てよ、魔法で飛んでるなさ。

「この翼って、飾りじゃ――「よーし、一気にトバすよソラちゃん!」

私の言葉を遮ると、べフェルトは一気に“上向きに”スピードを上げる。

うん。重力とか、力学とか、そういうのが全くどうもない。

やっぱり、これは完全に魔法の類だ。

流れる様に目まぐるしく変わる異常な光景に頭痛を覚え、今だ理解及ばない物理法則に涙する。

そして私は内心思う。

(天界って――センス悪いな)

前衛芸術が如くの天界が問題か、あるいは理解できない私が問題なのかは、もう些事な問題だった。



「つっ、、、、疲れた」

そう零して、私は椅子に背をもたれて天井を仰ぐ。

コロッと疲れた首を傾け、窓の方に視線を移す。

窓の向こうはまだ明るい。


一応もう日本のサラリーマン並みの勤務時間で働いてたが、それでも空は明るかった。

というか、昨日も居酒屋に運ばれた時も陽が沈んでいない。

何故だろうかと頭を回すが、ふと天界にはそもそも太陽らしき存在がなかったのを思い出す。

(そういえば、太陽ってあくまで天体だからなぁ、、、、。宇宙とか、そういう概念じゃない天界には太陽に相応する天体はないだろう)

第一私と違う世界の人間がここにいるのなら、生活時間はまばらになる筈だ。もっと言うなら、一日の活動可能時間が同一なのかも疑わしい。

それを昼夜で分けるのは、どうやっても無理な話しだろう。

故に天界には夜というのはなく、全て昼の様な明るさなのかもしれない。


そんな考察を膨らませながら、私は帰る準備をしようとする。

「おつかれ、ソラちゃん。明日もがんばろうね」

「ありがとうございます。今日は、すみません。明日からは、もう少し上手にしますから」

「仕方ないよ、まだ来て一日目なんだから」

今日も一日中べフェルトに仕事の手伝いと指導をされてた。

しかし、それでもミスを多発し、迷惑をかけ、何度もべフェルトに手間を取らせた。

私は、そんな自分が不甲斐なく答える。


「そんなに心配しなくてもいいよソラちゃん。それよりも、寝るまで何して遊ぶか考えようよ!」

「あぁ、、、、そうですね」

そう言ってべフェルトは私を励まそうとする。

だが、私はその言葉を興味なさそうに聞き流す。

決して、べフェルトを困らせようとか、迷惑をかけようとかではない。

今もこうやって私が天界に慣れる様にずっとそばにいてくれる事は感謝している。

私を楽しませようと、何をして遊ぼうかを考えてくれる事は本当に有難い。

(そうれでも、そうであっても、、、、私は、そんなのを求めてはない)

べフェルトの言葉一つ一つが、何も耳に留まらずに流れるのが、悲しい。


実にわがままなクソ野郎っぷりだ。

自分でも分かるさ。

だが。

ただ、ただ。私は、少し一人になりたいのだ。

一人になって、静かになりたい。

今、誰かといると、疲れて仕方がない。

ほんの少し、少しだけ一人になる事。それだけが、今の私の望みだ。


(――――“オマエ”、ウザいよ)


なぁ、頼むよ。

私を、一人にさせてくれ。

読者の皆様へ。

近々、YouTubeとニコニコにチャンネルを開設します。

趣味のゆっくり実況や動画を投稿する予定ですが、またそれとは別に本作の読者に向けての世界観解説や、作品に対する返信コーナー等を設けたいと考えています。

また、本作に関する事で動画としてやって欲しい事があれば、是非意見を下さい。


開設が出来たら、また後書きで報告致します。


それと、歌についての注釈。

音楽の体系に関しては筆者は多くは知りませんので、間違えているかもしれませんが、筆者の友人の話しを無学な者なりに考察した結果を書きました。間違ってたら指摘お願いします。

特に、ヒップホップの下りはまんま友人の受け売りです。

他にも、ラップ等はまだ生まれて日が浅く、アフリカ民族の発音とリズムをアルファベットで無理矢理発音しているから、所謂正しく歌っていない的な感覚が存在するとも言われました。

ちなみに、先輩が歌っていた歌のヒントは“贈り物”です。

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