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死ぬ

今年最後の一話は、なんだか随分と締まりが悪い一話となってしまいましたが、来年もご愛読よろしくお願いします。

一年の最後ですので、ついでに評価やレビューも書いてくれると、来年も作者はがんばります。

、、、、――――――あぁ、死にそう。


ガンガンと頭が痛い。眠たい。

目の前が白んでいる。

起きているかも寝ているかも、意識はハッキリとしない。

今――意識をこの手を離したら、眠ってしまいそうだ。


(あぁ、、、、今何をしているのか?)

私を置いて、死にそうな位の苦痛の隣で、一体“何が”起きているのか。

そうは言ってみたが、んまぁ別にそんなに特別なものじゃない。生前の私には少し、遠かったものだが――酒盛りだ。天使連中共は楽しくおっぱじめてやがっているのだ。

くそう。ムカつく。


新人歓迎だか、なんだか知らないが、べフェルトに仕事を叩き込まれた当日で死ぬ程疲れているのに、この野郎共は私を引き摺って宴会場に呼んだ訳だ。ついでに、私が死んだ日の当日でもある。

無論疲れてそんな気分ではない私は、取り合えず一人横になっていると今日散々に聞いた阿呆の声が聞こえる。

「ん~ソラちゃん、気乗りしないね~やっぱり疲れた?」

あぁ、そうだよバカ野郎。

ジョッキ片手に、何をヌカすかと思えば、ちょっとでも私の内心を鑑みれば分かる事を聞きやがる。

「ソラちゃんって、アレだよね。地球の日本って場所の出身だよね?今日は店をソラちゃんの故郷と同じに合わせたよ。居酒屋って、言うんでしょ?こういう店」

実際行った事ないが、べフェルトが言う様に店内はカッコいい名前の日本酒が飾られていたり、提灯が吊るされていたり、現座進行形で寝ている座敷があったりと色々とそれっぽく見える

「そうですよ。べフェルトさんは、、、、北欧ですか?そんな名前アメリカのドラマや映画で聞いた事ありませんし、そのキレイな髪と白い肌も北国出身特有なものな気がしますし」

「ほくおーけー?何ソレ?まぁ、いいや。私アニメとか漫画とか見てるよ~、サムライ!ブシドー!ハラキリ!ドラ〇もん!釘〇たん!」

待って、前半は分かるけど、後半二つはなんだ。しかも偏ってやがる。


「それで、べフェルトさんはどこの国の出身ですか?」

「さぁ?」

「いや、さぁって流石にそれはないでしょ」

子供じゃあるまいし。

「あー、それなんだがね、アアマツグ?ソラさんだっけか。言い忘れてたが、彼女は“人間ではない”ぞ」

部長と呼ばれた、若干アジア系に似た顔つきの男は、何の気もない様な口振りでとんでもないソレを言う。

(――人間じゃ、ない、、、、?)

とっさに起き上って、べフェルトを見やる。

いや、確かに人間離れに綺麗だが、どっからどう見ても人間の筈だ。

「ついでに言うと、厳密に言えば“ソラさんも”人間ではない。無論、私もだが」

「ひゅ、ひへぇ。ほっぺイジらないでよ~ソラちゃん」

また述べた言葉に、今度は狂っているのかさえ疑った。あと、お肌モチモチで羨ましいな!


「私もね、本当に厳密には理解していないが、ある一部を除いて人間と呼ばれる種族というのは、存在しない。言うなれば、ソラさんも私も『人間(仮)』みたいなものだ。いや、一応は人間だよ、一応は」

「その一部ってのは、どういう事ですか?」

イマイチ分からない説明に、私は眉を寄せる。

「そうだな、その一部というのは私には分からない。あまりにも過去の遠き話しだから。だが、少なくとも言えるのは――私達と君は別の世界の『人間(仮)』だ」

「別の世界だって!?」

考えもしなかった言葉に、私は遂に身を乗り出して聞き入る。まぁ、周りの視線が恥ずかしくて直ぐに引くけど。

「落ち着いて、落ち着いて。言葉の通りだ。『世界』、私達が住んでた所をそう仮定して言うと、世界は一つではない。そして、天界はその様々ある世界の知的生命体が贖罪に来る。天界とはそういう場所なのだ。というか、今日は君の歓迎会なんだから、何か食べてよ」

「だから、べフェルトさんは、私からの視点で厳密に言えば人間ではないと?それと、おなかも減ってないので遠慮しておきます」

「うっ、うん。そうなる。少し婉曲的な言い方だったな、、、、本当に大丈夫か?」


アレだ。私から見たら宇宙人は宇宙人だが、宇宙人から見た私も宇宙人、的な理論に似た様なものか。

「そうだな。君は人間という種族と仮定して、他の世界の者である我々はどれだけ似てたとしても人間という種族と完全に同一とされれない。そもそも、君と同じ人間でさえ、同一と断定出来ないだろ。何故なら君は他人ではない」

「哲学的な話しですね。それが物理的に飛び出した、みたいなものか、、、、」

ん?て事は宇宙人理論が成立するなら、もしかして皆実質宇宙人って事では?――何てバカな事考えているんだろう。

「いやでも、待って下さい。沢山の世界に人間だけが知的生命体って、おかしくないですか?人間に似るって事は確かに環境は地球にソックリなのは理解出来ますが、だとしてもピンポイントに人間だけが誕生するのはおかしいですよね?」

見た所ここの人達は全員人間(仮)に準ずるものだ。ここは死後の知的生命体が贖罪に来る場所であるのに、所謂恐竜人間みたいな、人間ではない知的生命体はいない。

もしも、どの世界でも人間が唯一の知的生命体であれば、それは誰かの見えざる手が存在する証左だ。

「その通り。ソラさん、君の言う通りだ。もしも世界が無数としてあり、その世界で人間(仮)に準ずる種族が幾つかあるのは、偶然で済ませれたとして――全部が同じな訳はない」

つまりは。

「他の知的生命体は“存在する”。だが、それは我々が逢うべき存在か、君はどう思う?」

続けた言葉に、私は言葉を失う。答えが、全く思い付かない。


「そうだなぁ~、えーと、うーん。べフェルトさん、なんかいい例出してやって」

「んな?なんて無茶振り!?ん~、そうだね、例えば『きゅーしはいしゃ』とか、『外なる神』がいたとして、ソラちゃんは会いたいかな?」

「あー、理解しました。それは嫌ですね」

なんぞクトゥルフ的なヤツと毎日仲良くお仕事、、、、うん、無理だ!

「なんとなく分かってくれてよかったよ。つまりはそういう事さ。それに、他の知的生命体というのは、お互い敵視をしている種族も少なくはない。そういう奴等を鉢合わせないそんな意図もある」

一応会おうと思えばお互い会えるよと、付け加えて部長は話しを切る様にジョッキを呷り、皿の料理を突っつきながら隣の人に語り掛ける。

話しを切られた私は、もう聞く事もないなと、また御座に横たわる。全く、疲れているのに変な話しをしたもんだ。


「全く、訳分かんねぇ、、、、」

愚痴を零すと、途端に眠たくなる。

料理も、飲み物も一口たりとも飲んでないが、不思議と空腹も乾きもない。もしかしたら、これも天界のせいなのか。

「あれれ?ソラちゃん、食べないの?」

「そんな気力がありません。それに、眠たいんです」

「おっ、お酒もあるよ。とりあえず一杯飲んだら?」

「未成年なんでパス」

天界に法律も何も関係はないが、この際は無視だ無視。

「ソラさーん、天界にはそんな法律とないから、気にしないで飲んでいいよ~」

さっきまでの話しを切りやがったくせに、こんな所で口突っ込むのかクソ上司。


「法律がどうこうじゃないですよ。倫理観とか、そういう問題ですよ」

いやね、気にはなるんだよ。そりゃあ私も親の飲み残しを舐めた事位あるし。

ただ、やってはいけない事という先入観が私の奥底にある。

(でも結局は眠たいだけだけどね。ファ~~)

「いやいや。そうは言うけど、一度は飲んでみなって。酒はどの世界でも、古来よりも神聖視されている存在なんだ。だから決して悪いものじゃないぞ」

「ん?“どの世界でも”?」

「あ――そうだね。コホンコホン」

フッ、目を逸らしやがったなこの野郎。


「あーあー、眠たい。、、、、うん、寝るわ」

黙らせる気半分、興味半分で聞いた質問だが、見事に躱される。

おもしろい事が聞けなくて、イライラしながら私は瞳を閉じる。

グッと瞳を強く瞑ると、途端に周りの音が遠のき、意識が深くに沈む。

「――――ね、、、、ね。わた、、、、ど、い、、、、かな?」

「――――し、、、、れ。き、に、、、、よ」

何か声が微かに聞こえるが、どうでもいい。


(――――――、、、、家に、帰りたいよ)



――夢を見ている。

つい昨日までの事が、凄く懐かしくて、もう二度と行けない程遠い記憶だ。

朝起きて、両親に会って、学校に行く。

ただそれだけの、なんて事のない日常がただ遠くにある。

淡々とした日常を送る皆は笑顔で、笑って、生きている。

そんな中で、私だけが悲しくて、死んでいる。


どうしてかな。そう呟いた。

涙が溢れ出る。

そんな私を心配してか、母は私に近寄り手を握る。

しかし、その手は宙空を掴む。


――「かあ、さん」


離れる母に何か言おうとした、その時目が醒めた。


「っ、、、、ふぅ。夢か」

あぁ、夢だったらよかったよ。さっきの夢も、死んだって事実も、夢ならな。

ため息を吐いて寝がえりをうつ。その時、布団がハラリと落ちる。

御座なんかで寝てないって事は、どうやらあれから私を連れて帰った人がいるらしい。

(流石に、昨日は悪かったか)

幾ら精神的に辛く、余裕がなかったとしても、自分の歓迎会で何もしないでただ寝て、その上で連れて帰って貰うのは無礼が過ぎたと今更ながら思う。


次会った時は必ず謝ろうと決めると――私は夢を振り返る。

(あぁ、夢だったら、本当によかったなぁ、、、、)

もしも、あの時に戻れたらどれだけいいか。

もし、あの時死ぬのを知ってたら、何をすべきだったか。

どうして、あの時寝坊したのか。

(なぁ、どうしてかなぁ――)


「あー、どうしてあの時――「おはよ~ソラちゃん。朝ご飯作ったけど、食べる?」

ん?気のせいか、何か私非ざる声が聞こえたぞ。

というか、そもそもここどこだよ!?

そういえば、ここがどこだかさえ私は知らないぞ。

驚きの早さで飛び起きると、ここがどこだか改めて確認する。

清潔で、簡素な何もないアパートの一人部屋みたいだが、新きょ――新妻の様なエプロンを着たべフェルトがキッチンで料理を、、、、

「なっ、なんでべフェルトさんがここに!?」

ここが誰の部屋であるかは分からないが、私の部屋であろうとべフェルトの部屋であろうとも結局はどうしてこうなっている?


「ん?えーとね、説明は難しいけど、部長と相談してね。暫くは私つきっきりでソラちゃんにここでの生活を教える事になったの」

そう言って、べフェルトは鍋から何かを掬って味見をする。出来がいいのか、嬉しそうに目を輝かせる。

「一応聞きますけど、ここどこですかね?」

「ここ?ここはね、これからの家になる場所だよ。ちょっと狭く感じるかもだけど、十分に使える広さな筈だから」

ピッピーと、炊飯器の音が鳴る。

べフェルトはそれを合図に、先程まで作ってた物を盛り付け、最後にご飯をくむとテーブルに並べる。

「ふふん。はい、朝ご飯だよソラちゃん。今日はソラちゃんに食べれる様に日本と大体同じにしといたよ。味は、舌に合うといいなぁ~」

テーブルに並んだのはご飯に味噌汁と焼鮭、卵焼きにミニサラダとついて非常に理想的なものだった。

その上、どの料理も非常においしそうに仕上げっており、お腹は未だに減っていないがそれでも食欲が沸いた。


「はい、お水を一杯飲んでから顔を洗って食べようね。私はここで待っているよ」

嬉しい。

あぁ、ただただ嬉しい。

私の為にそれだけしてくれて、感謝しかない。

でも。


(、、、、――――――死ぬ)


なぁ、頼むから。

私を一人にさせてくれ。

ちょっと昔の少年漫画みたいにお正月スペシャルみたいなのをやってはみたいけど、この作品じゃ無理だと気付いた作者です。

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