鋼鉄のパンサー(笑)
すみません。今回の話し、本当はもっと早くに投稿する予定でしたが、何故か満足行かず書き直してたら遅れてしまいました。
「ハァ――、、、、つまんね」
揺れる馬上で、今日何度目かの酔いで意識が朧気になりながら、私は気ダルく零した。
「いやぁ、確かにつまんないのは分かりますけど、これもお金の為だと思って、ホラ気を取り直して下さいよソラさん」
二人乗りする馬の前の方に跨るセレナさんは、酔った私と違い血の気よい顔ではにかみながら言う。
「すみません。でも、あまりにもこんなに退屈だと」
「まぁ、確かに、、、、」
「最初は野宿とか、移動とかも結構楽しかったんですけど、流石にここまで長く続くとですね~」
ふと、視線を動かして外を見る。
くるぶしを超す程度に伸びた青い草が視界一杯まで生え、その青の海には何本もの土色のあぜ道が走る。
木や岩は滅多になく、私を包み込むのは昼間の陽光と、草の匂いを含んだ風だけだ。
ジギルとハイドちゃん曰く、ここら辺の地理はこんな感じの平原が続いてるらしい。
続いているらしい――
「グルリ」
見渡した地平線の彼方には何もないが、きっともう少しその先に進めば何かは見えるだろう。
だが、私はそれを見る事なく、ただあぜ道を走る。
「景色はいいんですよ、景色は。ただ、もう二週間程ただただ道を進むだけって、こんなに精神的にくるとは。徒歩とか気が狂っちゃいますよ」
こう暫く二、三日景色が変わってないのは無視するとしてさ。
「えぇ、徒歩での移動は少し、シャレになりませんよ。乗り合い馬車とかなら3日とか掛かりそうにない距離を、自分の足で5日とか歩くと、なんかヤバイんですよ」
何か、見えてはいけない、凄く遠くにありそうなものを見詰める目で、セレナさんは続ける。
「特にヒドイのは水と食料ですよ。苦痛の1日をなんとか乗り越えても、待ってるのはマズイ粘土みたいなパンと、僅かな水だけですよ。本当に、水が尽きた時は私終わったかと思いましたよ」
「それって、いつ頃の話しですか?」
「まぁ、半年程前ですよ。流石にあっし、生を諦めかけましたよ」
ケラケラと、他愛のない昔話を思い出して私達は笑う。
「ん?なんですかね、アレは?」
「あっ、え――と、、、、アレ?マジでなんですかアレは?」
何かに気付いたセレナさんは、遠くの方に指を差して呟く。
「おっかしいですね、気が狂うんじゃないでしたっけ?」
「その筈なんですけど、いや、まさかそんなバカな」
「もしかして、ちょっとコンビニ行って来る、とかそういうアレだったりして」
「こんびに?なんですか?そんなもの」
「特に意味はないですよ。でも――」
あぜ道を、歩く一人の男を見詰めて私はセレナさんに少し馬の速度を上げるのを催促する。
(まさか、“歩いて帰ろうとするヤツ”なんていないよなぁ?)
幾ら出稼ぎで儲からなかったとしても、帰りの駄賃位はあるだろと、吐き出した苦笑と共に馬が駆け出した。
◆
初めて出会った時の、外で商売をしてた時の記憶が、頭の片隅に過りながら私は『パンサー』に問い質す。
「なんかタネでもあったりするの?お前が死んでない理由はさぁ」
というか、手が痛いな~。
「いってぇ!何叩きやがるんだよ!?って――アレ?そういえばゴブリンは?」
「お前が寝てる間に全部終わらせたよ」
「それって、、、、ゲッ!何だありゃあ!?」
首を横にたパンサーの瞳に、血色の道が映る。
迫るゴブリン総勢約五十匹を相手に斬った張ったした獣道は、骨に肉に臓物が辺りに飛散し、小さな体からは血が溢れて道を彩った。
「コイツ等、全員を、か?」
「そうなるな」
逃したゴブリンは、流石にいそうではあるが、私は首を抑えながら答えた。少し邪魔をされた鬱憤を込めて。
「まっ、そういう事だから、お前の出番はもうないの。ギルドには、スキール・パンサーはゴブリンの集団の前でバカ正直に堂々と名乗りあげてボコボコにされましたって報告しとくからさ。なっ」
「何が『なっ』だ!つーか、それ何の代案にもなってねぇし、俺は負けてねぇからな!」
「いや、負けたろ」
「いいや、俺は負けてねぇ「――普通にどっからどう考えても負けだろ、バカ」
おや、外野から最近よく聞く毒舌が。
「数に勝る相手に勝つならば、マトモに相手をしないか、あるいは奇襲等をかけて勝負するってのは常識の話しだろ。それを無視して突撃とは、、、、どんなバカな脳をしてるんだお前は」
雨水で汚れた体を拭きながら、ドクはそう言う。
「というか、アマツグ。その口ぶり、お前コイツとどこかであった事があるのか?」
「あっ、ソレわたしも気になる~」
近くに寄ったカナーも気になると声を上げる。
「あっ、その話しやめっ――」
「あー、そうだな。コイツは何故か乗合馬車に乗らず、食料も水も殆ど持たないで街と街を“歩いて渡る”、なんてトチ狂った事をして丁度死にかけの頃に出会ったんだよ」
あっ、でも出会ったと言うよりかは、発見したが近しい気もするけど。
「いや、待ってくれ!確かに歩いて街に渡ろうとしたのはそうだけど、この俺が死にかける?まっさか、そんな事ぁねぇよ。嘘つくんじゃねぇよ!」
「、、、、まぁ、確かに死にかけじゃなかったな」
「だろ?」
「正しくは、マジで半分死んでた、が正しいな」
「余計酷くなってんじゃねぇかよ!」
「仕方ないだろ、事実そうなんだから」
「まっ、まぁ、二人共。争いもそこまでにして下さいよ。それに、ソラさんもあまり人の上に乗っかり続けるんじゃありませんよ」
言い争う私達を見て、苦笑しながらセレナさんはもうやめろと引き離す。
が、引き離したら離したで、今度はドクが話しを持ちかけた。
「それで、お前は一体何者だ?」
「――――、、、、ハァ。俺はパンサー。スキール・パンサーだ。鋼鉄のパンサーと言えば、分かるか?。このクエストはナブルカ村の皆んながゴブリンに襲われないのと、この雨季を乗り越える蓄えとして金が欲しかったから受けた。クラスは一応剣士だ」
聞いた事なんてない自分の異名を叫ぶパンサーに、私はまだ言ってるよと目を泳がせたが、カナーが一人「あっ」と声を上げる。
「鋼鉄のパンサー、ねぇ今そう言ったよね?」
「おっ、おう、そうだ、、、、ッテあっ!あのクソ天使が二人!?」
シバいてやろうかこの野郎。
「違うよ、わたしはソラじゃなくて、カナー。アイドルだよ!」
「そっ、そうなのか。それで、もしかしてお前は俺の異名聞いた事あんのか?」
その質問に、カナーは少し目を見開いて一呼吸をおく。
「あっ、えーと、ニマ!鋼鉄のパンサーって覚えてるよね!?」
ん?ここでニマを?
「ホイホイ、呼ばれて見参ニマでござるよーっと。で、鋼鉄のパンサーでござるか?あ――そういえば聞いた事をあるでござるよ、あの金鉱に居た時に」
(ん?金鉱?あっ、そういえば)
確かパンサーもコイツ等パーティーも金鉱帰りだったと、今更ながら思い出した。
(その経由で知って、たった今思い出したのか)
「だよね!」
「うん、間違いなくあの金鉱にいた時に聞いたでござるよ。確か、命知らずの出稼ぎ冒険者で、金鉱山の最も危険な地帯に毎日突っ込んで行く様な人間だって」
え?マジで?
そう言われれば、確かにコイツはゴブリンの群れを前に一人で突っ込んで行ったし、勇敢なのかな?
「でも、危険だからといって別に金はなくて、毎日成果なしで帰ってくるってのも聞いたでござるよ」
ダメじゃねーか。
「おい、最後の部分が余計じゃねぇか!」
「すっ、すまないでござる。でも、噂は他にも聞いたでござるよ。なんでも、大規模な落盤が起きた時、他の皆んなが絶望する中、一人満身創痍ながらも穴を掘って全員救助したとか、、、、」
おっ、それは凄い。頑丈なのは知ってたたけど、一人でそんな事を成し遂げてしまう程とは。
「でも、あまりにも疲れたのか、その事故の後ガッツリと寝てしまって、その間に金目の物を盗まれたとも」
ダメダメじゃねーか。
「おい、お前なんかわざとオチがヒデェ話し選んでねぇか!?」
「いっ、いや。そんな意図は」
「じゃあもう少しマシな話しを言ってくれよ」
泣くなよ、お前鋼鉄のパンサー(笑)だろ?
「えっ、えーと、そうでござるなぁ。確か、酔払いの迷惑な冒険者10人程を相手に喧嘩して勝ったとか、、、、」
「おっ、そういうのだよ。そういうのも知ってんじゃねぇか」
ほうほう。確かにそれだけの力があるならば、一人でゴブリンの群れに挑んでもおかしくないかもしれないな。
で――オチは?
「でも、実は鋼鉄のパンサーも酔っていて、喧嘩は喧嘩だけど、カッコいいのじゃなくて酔払い同士の喧嘩が実情でござったけ?」
オチじゃなくて、前の時点でアレだったのかよ。
「なぁんかお前さっきからズレたエピソード話してねぇか!?」
いやぁ~十中八九はお前のせいだとは思うけど。
「すっ、すまないでござる。でも、鋼鉄のパンサー殿の話しって、“こういうの”しかなくて、、、、」
「――――」
「――――――」
「――――――、、、、」
コレは、随分とヒドイオチだ。
このオチに、パンサーとニマを除いた全員が笑いを噛み殺しながら俯く。しかも、あの笑わないドクも、このオチばかりには腹すら抱えて笑いを噛み殺している。
「まっ、まぁ。いいんじゃないか?コイツが意外と凄いヤツだってのは理解しただろドク?」
「本当か?」
「あぁ、凄いヤツだとは思うぞ」
おいオーク、目が笑っているぞ。直せ直せ。
「それじゃ、そろそろ帰るか。いい加減もう帰りたいし。ニマも戦果記録ちゃんと記したよね?」
「そっ、そうでござるが、、、、」
「じゃあ帰ろうよ。おーい、先輩、ハリィ!そろそろ帰るよ~!」
ゴブリンの群れを6つ潰して、もうクエスト達成した私達は帰ってギルドに報告しようと先輩達を呼んだが――
「おい、何言ってるんだ?まだ、終わってないぞ」
ドクが、底冷えする様な、そんな一言を放った。
「え?まさか、まだ残っているとでも言いたいのか?」
冗談でもタチが悪いと、そう思って話すが。
「あぁ、残っている。もう一度俺達の仮想敵を思い出してみろ」
ギラリと光った目が、嘘等ないと語る。
「今まで倒した群れは、まずさっきの群れで3つだ」
「あっ、あぁ。それで、昨日倒したのが2つと、1つ、、、、あっ!?」
そうだ、一つ、全部倒してた気になってたのが、ある!
「お前の実力を測る為に捨て置いた一つ、今からソイツを倒しに行くぞ」
実は最近小説のサブタイとかを、変な名前を付けて保管しています




